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7章
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しおりを挟む爆発騒ぎの翌日、マリーを除いた面々が沈痛な面持ちで向き合っていた。
レーブン公爵はヘルマン元侯爵領へ赴かせた多くの部下を失った上に、腹心であるヴィクトルまでも殺された。全幅の信頼を置いていたヴィクトルの遺体は、致命傷に至る傷以外ほとんど無傷だった。レーブンは悔しそうに口を開く。
「これは素人の犯行ではありません。そしてこの残忍さは軍人とも違う。殺人を生業とする者の仕業でしょう。しかもかなりの腕の……。」
「遺体はどれも温かかった。とすれば爆発が起きて私が宮へ駆け付けるまでのほんの僅かの間にやってのけたと言う事だ。どこの手の者か調べる術はあるかレーブン?」
そう言った類いの人間が表社会に姿を現す機会はほとんど無い。レーブンは再び押し黙る。
「クリストフ。マリーを拐った奴らの足取りはまだ掴めないか?」
「はい………皆爆発騒ぎに気を取られていたせいか怪しい人間の目撃情報がありません。それに王都に馬車は溢れている。よほど目立った事をしない限り誰も気に留める事は無いでしょう。」
八方塞がりだ。どこからともなく現れた殺人者。目撃情報の無い誘拐。怪しいと思って目を付けていた男もずっと城内にいた。
あの日、ジョエルは夜遅くまで城内に避難した民のために奔走していた。別段怪しい点は見受けられなかったが………。
その時ある疑問が頭を掠める。
……だがもしあの爆発が奴の仕業だとしたら?まさか……刺客を城門へと押し寄せた民衆の中に紛れさせ入城させていた……?
【殿下!爆発で火の手も上がっているようです!!レーブン殿の隊を向かわせて下さい!】
私がレーブンの所へ行く事もわかっていた?そしてその間にマリーを………?
身体中に震えが走る。
「クリストフ!ジョエルを探せ!奴の所在を確認するんだ!!」
何て事……!!何て事だ!!私の判断で多くの者が命を落としマリーをこんな目に………!! なぜあの時あの男の事を疑わなかったのか、自分の馬鹿さ加減に腹が立つ。間違いない。マリーはあいつの元にいるはずだ。ならばこの先あいつがやることは国外への脱出!
「レーブン!今すぐ国境をすべて封鎖しろ!各所へ合図を送るんだ!!そして国中に王子妃が拐われたと触れ回れ!!」
緊急時の国境封鎖の場合、大きな松明に火を灯し各所へリレーのように伝達して行く。これなら時間はそうかからない。
頼む!!間に合ってくれ!!
マリーさえ無事なら何もいらない…!
ずっとこの命は国のもの、民のものだと思って生きてきた。けれど……マリーのためならこの命を差し出したって構わない。だがお前には、お前にだけは………!!
「ジョエル……絶対にお前には渡さない!!」
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