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7章
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しおりを挟む「ユリシス様!もっと深くフードを被って下さい!!銀の髪が丸見えです!!」
「わかってるけど走ると出るんだよ長いから!!」
いそいそと髪をしまいながら思い出す。
マリーに初めて会ったあの日からだ、髪を伸ばすようになったのは。
彼女の療養院から帰ってきて、着替えながら鏡に映る自分の髪を見て思ったんだ。あの美しい白金の髪色に、少しだけ似ていると。それからはただの付属品だと思っていたこの髪が、何だかいつもと違う特別なものに見えた。
この髪を見るたびに会えない間も毎日君を思い出した。
この戦いが終わったら髪を切ろう。その時にはもう君がずっと私の側にいる。長い髪はきっと生まれてくる子供に掴まれて、引っ張ったりして遊ばれてしまうだろうからちょうどいい。
日暮れ前に森を抜けられればと思っていたら、何とか間に合ったようだ。
「街道に出たな。だがまだ街や集落らしきものは見えないな。」
「そうですね…馬を調達できれば最高なんですが…」
その時だ。アランが何か異変を察知したかのように周囲に耳を澄ます。
「…どうしたアラン。」
「まずい…ユリシス様、かなりの数が来ます。どこか隠れないと。」
隠れようにも既に開けた場所に出てしまっている。戻ろうにもそれはアランが危険を察知した方向だ。
「城からの追手かもしれないな。」
「とにかくこの道から離れましょう!」
アランと二人薄暗い中を走る。相手は馬で来ているようだ。蹄の音が少しずつ近付いて来る。
「ユリシス様!ひとまずあの茂みに隠れましょう!!」
枯れ草の生い茂る中へ身体を小さく屈めて隠れる。間一髪、馬に乗った軍勢が今向かおうとしている方角へ向けて走り過ぎて行く。
先頭を走るのは黒髪の見事な体躯の男。
(…………ん???)
ユリシスは数日前のリンシア王女との会話が突如として頭に浮かんだ。
『カイデン将軍とはどのような男なのだ?志の方は良くわかったが、見た目は?一応知っておかないと困る。』
『見た目……この辺では珍しい黒髪ですわね。ゆらめく海草が乗ってるような頭ですわ。でも…』
『でも?』
『とにかく顔が………』
『顔が?』
『顔が濃いんですわ。父の顔も相当濃くて鬱陶しいのですけれど……戦場にいるとああいう顔になっちゃうのかしら。少し離れて見た方がちょうどいいくらいの顔です。あの二人と比べたら世の中の大抵の殿方は薄い顔に分類されますわね。間違いありません。殿下ならきっとすぐにわかりますわよ。』
「アラン!!!」
「いっ!?ユリシス様!!黙って下さい気は確かですか!?俺だってあの数はホント無理ですって!!」
「カイデン将軍だ!!」
「えぇっ!?」
「間違いない!あれはカイデン将軍の兵だ!!」
ユリシスは言い終わる前に茂みから飛び出した。フードを外し、登り始めた月の光を銀の髪に浴びさせるように。
「何者だ!!」
後方を走っていた兵士がユリシスを見つけ素早く手綱を引いた。それは前方にいた集団にも伝わり、周りはあの黒髪の男とその後ろの数名の者のために道を開けた。
「……なんと……!!」
男はユリシスを一目見た瞬間すぐさま馬から降り跪く。周りの者も只事ではない主の様子に同じように馬を降りた。
「お捜ししました……!!銀色の髪はガーランドの王族の証。ユリシス殿下、よくぞご無事で……!!」
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