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しおりを挟む思いの外楽しい新婚初日の朝食だったが、食後のお茶を飲み終わる頃になっても、アルウェンは肝心なことを聞けずにいた。
その『肝心なこと』とは、昨夜自分たちの間に身体の交わりはあったのか否か。
アルウェンは、再び書類に目を通し始めたサリオンを、紅茶を飲むフリをしながらこっそり観察する。
彼がどんな人なのかはまだよくわからないが、寝ている婦女子に手を出すような不埒者には見えない。
それに、アルウェンを家族としては認めてくれたようだが、元から妻として扱う気はなかったはず。
その結果アルウェンは『多分なにもなかった』と自身の中で結論づけた。
きっと昨夜寝室を共にしたのは、初夜の契りを終えたという事実を周りに知らしめるためであり、彼は紳士らしくベッドをアルウェンに譲り、部屋に置いてあるソファで寝たのだろう。
「じゃあな」
茶を飲み終えたサリオンは、執務室へ行くという。
「あの、私になにかお手伝いできることはありますか?」
「焦るな。まずはここでの暮らしに慣れることからだ」
もちろん『慣れる』の言葉を額面通り受け取るアルウェンではない。
おそらく皇太子妃として、まずはこの宮の掌握から始めろということなのだろう。
扉へ向かうサリオンを追いかけ、一緒に部屋を出たアルウェンは、宮殿の出口で彼を見送った。
「行ってらっしゃいませ」
サリオンは驚いた顔でアルウェンの方を振り返る。
「あの、なにか?」
「いや……行って、くる」
アルウェンは、サリオンの姿が見えなくなったのを確認し、部屋へ戻った。
それから一時間後。
ようやく落ちつけたと思った矢先、扉の向こう側が騒がしいことに気づいたアルウェンは、すぐさま控えていた侍女を呼んだ。
「なにかあったの?」
「それが、サウラ妃殿下が突然いらして」
侍女によると、サリオンと対立するサウラ妃が、アルウェンに直接祝いの言葉を述べたいと、大勢の侍女を引き連れてやってきたのだという。
いくら同じ皇宮内とはいえ、訪問には前もって相手方の許可がいる。
しかも侍女を大勢引き連れてきたというあたり、それもアルウェンに断らせないための策略だろう。
皇妃の侍女となれば、ほぼ全員、名のある家門の出身で間違いない。
彼女らと揉めれば、その後ろに控えるそれぞれの生家とも面倒なことになる。
サリオンは、自身の不在中はいかなる者も宮殿に入れぬよう言いつけていったそうで、現在アルマがサウラ妃の対応に追われているという。
「このことをすぐにサリオン殿下へ報告するよう侍従に伝えて。それと、サウラ妃殿下を中に」
「妃殿下、ですが……!」
「大丈夫。あなたはすぐにお茶の用意をお願い」
どの道これ以上の足止めは難しいだろう。
遅かれ早かれ通る道だ。
アルウェンは気を引き締めた。
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