王女は魔道師団長の愛に溺れる

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 「きゃっ!!」

 しばらく石のように固まっていたユーインが、突如リーリアを抱きかかえ、身体を反転させた。
 そして今度は自分がソファに座り、リーリアを膝の上に乗せる。

 「……リーリア……」

 そっと優しく頬を包み、真っ直ぐに瞳を見つめながら、ユーインはリーリアの名前を紡いだ。
 たった一言。
 ただ自分の名前を呼ばれただけなのに、リーリアの胸はこれ以上ないほど喜びに震えた。
 藍色の瞳と視線を絡ませたまま、頬を包む手にそっと自分の手を重ねると、「リーリア」ともう一度呼ばれた。

 「ユーイン様……大好き……」

 大きな手に頬を擦り寄せると、優しく胸に抱き込まれた。
 布越しに感じる広くて固い胸に、心臓がまたうるさく騒ぎ出す。

 「リーリア。陛下に、私たちの将来についてお話をしてもよろしいでしょうか……」

 「私たちの将来を父上に……?」

 「リーリアとの結婚のお許しをいただきたいと……駄目でしょうか」

 「け、結婚!?あ、あの……ユーイン様、ですが……」

 ──想いが通じ合えたばかりなのに、もう結婚の話!?

 もちろん嬉しくないはずがない。
 夢のような言葉だったが、いざ結婚となると夢だの何だの言ってる場合ではない。
 アカデミーに入る時点で生家とはほぼ縁を切る形になる魔道師。そしてそのほとんどが平民だと聞く。 
 首席魔道師、そして宮廷魔道師団長として名を馳せるユーインといえど、王族の結婚相手となると、周りの反応はどうなのだろう。

 ──父上は、ユーイン様の出自がどうであれ、認めてくれるかしら……

 これまでも、そして人生で一番大切なこんな瞬間にも【王女】いう地位が足枷になる。

 「……私の出自を気にされているのでしたら、それはおそらく大丈夫かと」

 「えっ!?」

 「ふふ。リーリアは考えている事がすぐ顔に出ますね。分かりやすいです」

 そういえばクレイグも、リーリアが何を考えているのかすべてお見通しだった。
 
 ──そんなに分かりやすい顔をしてるかしら……?

 ペタペタと顔を触って確認するリーリアに、ユーインが声を漏らして笑った。
 
 「あの……ユーイン様……大丈夫って?」

 「……アカデミーでは各々の出自については秘匿されます。ここでは身分など通用せず、必要なのは実力のみですから。なので、魔道師同士の結婚なら何の問題もないのでしょうが、そうでないとなると話はまた別です。リーリアは私たちの結婚に際し、陛下のお許しが貰えるかどうか心配なのでしょう?」

 「はい……その、どうか誤解しないで聞いていただきたいのですが、私はこれまでユーイン様の出自を気にした事は一度もありません。ですが、王族と魔道師の婚姻は未だかつて前例がないので……」

 「……大切な王女殿下を託す男に相応の身分を求めるのは当たり前の事です。師団長という地位がこの国の中でどれほどのものであるのか私にはよくわかりませんが……おそらく生家の事も考慮していただけるでしょうから……大丈夫だと思います」

 「生家……ユーイン様のご生家って──」

 リーリアはそこまで言うと、言葉を詰まらせた。
 なぜならユーインの顔色が明らかに変わったから。
 
 「私の生家についてはまたおいおい……まずは陛下に謁見を申し込まなければ。ね?」

 「……はい」

 心の中に疑問を抱きつつ、リーリアは再び温かい腕の中へ身体を委ねた。




 

 

 
 
 

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