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しおりを挟むシルヴィオを諦められないカーラは、彼から鬱陶しがられないようつかず離れずの距離を保ちつつ、少しずつ情報を引き出しながら、その日を待っていたのだ。
第二王子妃となる女が権力を振りかざし、アラベッラからドレスを取り上げたという醜聞が流れるように。
あくまでルクレツィアの推測だが、おそらく間違いないだろう。
「そもそも婚約式にこんな黒のレースのドレスなんて、ぜんぜんアラベッラ様らしくありませんわ!」
「え……?」
ルクレツィアの言葉にアラベッラは驚いた様子で口を開けた。
「アラベッラ様はいつも淡い色のものを好まれます。そしてレースだったら袖口とスカートの裾に白いレースを少し添えるくらい。余計な装飾は好まれないから小花の刺繍を入れるくらいですわ!」
「ル、ルクレツィア様、どうしてそれを……」
どうしてと言われても、シルヴィオと共に夜会に出席するようになってからはたくさんの人と会った。だがどんなに頑張っても一度ですべて覚えきることはとてもできない。
だからたくさん観察して、顔と名前だけでなく、全体で覚えるようにしていただけだ。
ただ必死だった。シルヴィオに恥をかかせてはいけないと。
「アラベッラ様がカーラ様の振る舞いを黙って見過ごしていたのも、ひとえにご婚約者様への想いからでしょう?……好きな人に嫌われるのは、誰だって嫌ですものね……それは臆病になりますわ……」
「ルクレツィア様……」
カーラは少し顎を上げ、高圧的な態度で聞いていた。なにも言わないということは、やはりすべてルクレツィアの言うとおりなのだろう。
「……私とこの件について話すつもりがないと仰るのなら、これ以上なにも言うことはありませんわ。けれどアラベッラ様には謝罪を……自分のために他人の幸せを利用するなんて……今回のことは少なからずアラベッラ様の心に傷を残します。ですから……」
「うるさいわね!!」
突然態度を豹変させたカーラに、ルクレツィアもアラベッラも肩を震わせた。
「あなたに指図される筋合いはないわ!この泥棒猫!!シルヴィオ様は私と婚約するはずだったのよ!!だからあの日だってエスコートを……!!」
あの日とは、ルクレツィアが初めて社交界に顔を出し、シルヴィオに心を奪われた日のことだろう。
悪いことをした。ルクレツィアだって人の幸せを邪魔した一人だ。
「……本当に申し訳ありませんでしたカーラ様」
ルクレツィアはカーラに向かって深く深く頭を下げた。
「ですがシルヴィオ様の気持ちは私にはありませんでした。私はシルヴィオ様との婚約を解消し、誰か他の方と婚姻を結ぼうと思います」
「どうせ二人の殿下のどちらかでしょう?美しい女は得ね」
「いえ……今のところ、カリスト殿下の近習オリンド卿に打診してみようかと思っております」
「は!?あなた、私のこと馬鹿にしてるの!?」
はて。なぜ今の発言がカーラを馬鹿にしたことになるのだろう。
「だ、だってあのオリンド卿とあなたが!?そんなこと、あるわけないじゃない!!」
「それは失礼ですわカーラ様。人は髪型ではありません。中身ですわ。その点オリンド卿はなかなかどうして素敵なところがたくさんあるのです」
「まさかあなた本気でオリンド卿を好きになったっていうの!?」
隣で聞いていたアラベッラも思わず前のめりで、カーラとルクレツィアの会話を見守っている。
「好きとか嫌いとかではなくその……まあ、人生色々ですわね」
「……ちょっと、その色々とやらを聞かせてみなさいよ」
「え……?」
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