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しおりを挟む「なるほどね……要はどれを選んだところでシルヴィオ様との付き合いは一生ついてくるし、悲しいかな同じ血が流れてるから同じことするかもしれないしと」
「その点男性がお好きで、しかもカリスト殿下に叶わぬ恋をしているオリンド卿なら浮気する心配もないし、いいお友達として一生付き合えそうだということですね!なんて素敵なのでしょう!」
ふんぞり返るように腕を組んで話を聞くカーラと、まだ見ぬ世界を覗いて興奮気味のアラベッラを前に、ルクレツィアはいったいどうしてこんなことになっているのだろうと考えるのを放棄した。
「先のことはわからないんだから、そんなに両殿下に想われているのなら、どっちかで決めればいいじゃないの。オリンド卿だってあんたから結婚の打診なんてきた日には、カリスト殿下に睨まれていじめられてショックで死んじゃうかもしれないわよ」
「はあ……」
カリストは職務に私情を挟むようなタイプには見えないが、確かに近習と想い人が結婚なんて面白くはないだろう。そのせいでカリストの近習の任を解かれでもしたら、カリストのそばにいられない悲しみでオリンドが死んでしまうかもしれない。
「それとあんた、一番大事なところが間違ってるわ。オリンド卿は男色家じゃないからね」
「ええっ!?」
「そうなのですか!?」
ルクレツィアは純粋に驚いただけだったが、同時に声を上げたアラベッラのそれが心なし残念そうに聞こえたのは気のせいだろうか。
「私、てっきりオリンド卿はカリスト殿下を愛してるのだとばかり……」
「まあ誤解しても仕方ないわよね。あの忠誠心は髪型と同じくらい異常だもの。だから清い仲の友だち夫婦ってのは彼とは無理よ。それにあんた、オリンド卿とできるの?」
「で、で、できるってそんな!!……無理ですわ……」
男女としてではなく、人としてなら尊敬し、尊重し合えると思っただけだ。
「ならもうカリスト殿下かアンジェロ殿下で決めなさい。それが一番誰にも迷惑かけずに幸せになれるわよ」
「そうですわ!あんなに美しいお二人に想われるなんて、どんなに願っても叶わないことですもの!ちなみにわたくしはアンジェロ殿下を推しますわ、うふふ」
未来の義姉の前で言うべきことではなかったかと、アラベッラは恐る恐るカーラの顔色をうかがうが、彼女は別段気にしていないようだ。
それにしてもアンジェロ推しとはなるほど。可愛らしいものが大好きなアラベッラらしい選択だ。彼女のようなタイプの女性なら、アンジェロもそのあざとさを遺憾なく発揮できることだろう。
「二択なら断然カリスト殿下ね。あの色気といい身体つきといい……夜の方もきちんとやることやってくれそうだし、プライドも高そうだから、ちょっとつつけば負けず嫌い発揮して、期待以上に満足させてくれそうじゃない?」
「や、やることやってってそんな……!」
「あら、それって大事なことよ?大概の夫婦はそれで揉めるんだから。その中でもやることやらずに浮気するってのは最悪のパターンよね」
カーラとはこれまで会話らしい会話をしたことがなかったが、こんなに物言いのはっきりした女性だとは思わなかった。
もしかしたら、シルヴィオが彼女を選ばなかったのはそこも関係があるのかもしれない。彼は自分の言うことを黙って聞いてくれる従順な女性を好む傾向があるから。
「あの……カーラ様はどうしてそんなにシルヴィオ様のことがお好きなんですか……?」
ルクレツィアは気になっていたことを思いきって聞いてみた。カーラのような強い女性がどうしてシルヴィオのような男を一途に想い続けるのだろうか。
「顔よ」
「か、顔!?」
「そう、あの顔は私の好みのど真ん中どころか秘孔をビシバシ突いてくるのよ。私にとって人間てのは顔面が十割!!顔が好きならあとのことはもうどうだっていいの!例え侍女に手を出しまくってそのうちの一人を孕ませたってね!あれを手に入れずして死ねないわ!だって姿を見つけるたびに未練がましくじーっと見ちゃうじゃない。何年経ってもやっぱり好きな顔なのよ。そしたら貴族でいる限りずーっとあの顔を見なきゃいけないし、そのたびに悔しい思いをするじゃない!そんなのとても耐えられないわ!」
「ご、ご存知だったのですか、ビビアナの妊娠のこと……」
「当たり前よ。あの侍女どもときたら、私がシルヴィオ殿下に相手にされないのをいいことに、ざまあみろと言わんばかりの態度で接してくるのよ。私を誰だと思ってるの!?ランベルディ公爵令嬢カーラ様よ!?」
拳を握り、わなわなと怒りに震えるカーラ。アラベッラに目をやると、“いつものことなのです”というような視線が返ってきた。
「どんなにクズで浮気したって、私のものになるのならそれでいいの。誰と婚約しようが叩き潰すつもりだったわ。でもね、あんたの父親ときたら何度叩き潰そうとしても倍返しにしてくるのよ……憎たらしいったらありゃしないわ!だからこうなったらもう汚い手を使うしかないと思って……!」
ということは、今までにも大なり小なりカーラからの嫌がらせは受けていた?それを父がすべて撃退していたの?
「ガルヴァーニ侯爵はあんたがシルヴィオ殿下と婚約なんて死ぬほど嫌だったのよ。それなのにここまで見守ってくれてたんだから感謝しておきなさいよ!」
「……はい」
嫌がらせをした張本人から親の有り難さを説かれるとはなんともいえない気分だが、ここは素直に返事をしておいた。
「じゃああんた、本当にシルヴィオ殿下とは婚約解消するのね?」
「はい、それはもう私の中では決定事項です。それとカーラ様……」
「なによ」
「どんな手を使ってでもシルヴィオ様を手に入れるおつもりなのですね?」
「当たり前じゃない。あんたがどいたのなら、これから追い込みかけるわよ」
「実はカーラ様にお渡ししたいものがあるのです。明日、我が家の従者をそちらのお屋敷に行かせますので、どうか受け取っていただけないでしょうか」
カーラは意味がわからないという顔をした。
「大丈夫です。それはシルヴィオ様の大好物に変身できる秘密のお品なのです。多分カーラ様といえど開けた瞬間は若干怯まれるかもしれませんが、私は大丈夫だと信じています。詳しいことはまた後日説明させていただきます。それからアラベッラ様、よろしければ便箋と封筒、それにペンを貸していただけないかしら」
「便箋と封筒とペン?どこかに急なお手紙ですか?」
「ええ。それとできればお屋敷に勤める方にもお願いしたいことがあります。リエト卿に、誰にも知られずにこの手紙を届けてもらいたいのです」
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