この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)

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997年目

04 はじまり ※チヒロ

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 ※※※ チヒロ ※※※



もう一度、絵本を開く。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


この国には『空の子』様がやってきます。

100年に一度、王宮の森に現れる不思議な祭壇で、
時の王女様が祈りを捧げます。

その祈りが『空』に届いた時、祭壇に『空の子』様が現れるのです。

『空の子』様はひとめでわかります。
この世界の人間にはない、
黒い髪と瞳を持った男の子だからです。

そして、高い知識を持っています。

農耕・酪農・治水
鍛治・窯造・酒造
医療・学問・印刷
建築・商法・造船など

何人もの『空の子』様がその知識で、この国を豊かにしてくれました。

――『空の子』様はこの国にとって、とても大切な、特別な方なのです――


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


私たちが『空の子』として、何故この国にくるのか、理由はわからない。

でもひとつわかった。

私以前の『空の子』は全員が男の子。

絵本にある『空の子』の高い知識は

農耕・酪農・治水
鍛治・窯造・酒造
医療・学問・印刷
建築・商法・造船など

―――昔は全部、男性の仕事だ。


前世でしていた仕事の記憶があるなら、この世界ではさぞ歓迎される高い知識になっただろう。

すごいな『空の子』の先輩たち。

なんだか戦友みたいに思えてきた。
あながち間違いじゃないよね。

でも、だとしても、だよ?


「……なんで今回は私?」

絵本を信じるなら、私は初めての女性の『空の子』ということになる。


それに。

そりゃ《私》も働いてはいた。多分。じゃなきゃ生活できてないし。

でも何してたっけ?

色々やってた記憶はある。でも、何かを専門にやってた記憶はない。
専門知識なんて何ひとつ、ない。

歴代の『空の子』の先輩たちと私、なんで違うんだろう?

もう一度、絵本をめくる。

えーっと。

【王女が祈る。祈りが『空』に届くと『空の子』がやってくる】

「……それが全員、男の子でしかも全員、高い知識持ち」

では今回は?

―――待って。

今回、祈ったのは王女じゃなくて王子だ。

「  ま さ か 」

頭の中に矢印が浮かんだ!

王女が祈る → 高い知識を持った、男の『空の子』がやってくる

王子が祈る → ろくな知識なしの、女の『空の子』がやってきちゃう

―――ってこと?なにそれ!

私は床に突っ伏した。


なんなの、今世………。

いったい過去の私がなにをした………。


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