この幸せがあなたに届きますように 〜『空の子』様は年齢不詳〜

ちくわぶ(まるどらむぎ)

文字の大きさ
57 / 197
998年目

27 近衛隊長 ※チヒロ

しおりを挟む



 ※※※ チヒロ ※※※



「また熊がいた」

思わずうんざりした声が出た。

南の宮の、庭の一部に作ってもらった花畑。

後ろに国王様の暮らす北の宮が見える位置にあるこの花畑は、
貴族の皆さんが、私に《好意で》持ってきてくれた珍しい植物を植えてある。

死病の特効薬には使えないけど、枯らすのは可哀想なので育てているものだ。
まだ王宮近郊の植物だけの為か、土壌に合う・合わないを気にしなくていい植物だと言われたからできているんだけどね。

前世で趣味だった土いじりはやっぱり楽しい。

専属の庭師さんがお世話してくれているけど、ついつい毎日のようにこうして見に来てしまう。
といっても、時間まで決めて来ているわけじゃない。

なのに。

遠目で見ても熊のように大きくてがっしりした人――近衛隊長は必ずと言っていい確率で現れる。

北の宮の前にいて、いつも遠くから私に軽く挨拶をする。それだけ。だけど。

―――暇なの? そんな訳ないよね?

近衛隊長が暇なわけないのだ。
だいたい、今はまだ国王様は《中央》で執務中じゃないの?

王家が暮らす《宮殿》の各宮にもそれぞれ執務室はあるけど、それは臨時用。
特に執務が多く来客も多い国王様は《中央》のみにいらっしゃるはずなのだ。

むしろ南の宮の執務室を使うレオンの方が特別らしい。
まだ成人してないからかな。

まあそれはおいといて。

ともかく、国王様の護衛であるはずの近衛隊長は今、ここにいる。
私の前にいつも現れてはずっとこちらを見ている。

―――落ち着かない。

なんだかなあ。
これはもう……国王様の命令で私を観察してるって事だよね?

国王様は、まだ私のことを得体の知れない宇宙人だと警戒してるのかな。
……なんだかものすごくショック。
国王様にそんなふうに思われているなんて。

でも……私はレオンと同じ宮にいるのだ。
レオンのお父様である国王様が心配するのも当然といえば当然だよね。

……それでも近衛隊長のこの態度は何?
何とか言えばいいのに。
国王様を放っておいて。こんな状態、続くべきじゃないでしょう。

よし、と意を決して、私は熊隊長のところまで行くと決める。
エリサも私の覚悟を察してか、何も言わずついて来てくれた。

「これは『空の子』様」

正面まで行くとにこやかな挨拶がきた。

「国王様のご命令ですか?」

いきなり声が尖ってしまうのには訳がある。
第一印象が全く良くなかったせいだ。

この近衛隊長は前に、東の宮へ向かう私を護衛していたシンを脅かしたのだ。

護衛中の騎士をだよ?
上司のくせに。
悪戯にしたってタチが悪いでしょう。

思い出したら腹が立ってきた。

もっと声が尖る。

「貴方は国王様の護衛ですよね。
そんな方がどうしていつも私を見ているんですか?
国王様のご命令だとしか思えません」

「はは、いやあ。まいったな。確かに私は国王陛下付きですが。
別に何も命令は……」

「――心配しなくても。
大切な御子息に危害を加えたりしませんよ、とお伝えください」


ズバッと言ってやって、花畑に戻ることにした。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話

yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。 知らない生物、知らない植物、知らない言語。 何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。 臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。 いや、変わらなければならない。 ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。 彼女は後にこう呼ばれることになる。 「ドラゴンの魔女」と。 ※この物語はフィクションです。 実在の人物・団体とは一切関係ありません。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

親友面した女の巻き添えで死に、転生先は親友?が希望した乙女ゲーム世界!?転生してまでヒロイン(お前)の親友なんかやってられるかっ!!

音無砂月
ファンタジー
親友面してくる金持ちの令嬢マヤに巻き込まれて死んだミキ 生まれ変わった世界はマヤがはまっていた乙女ゲーム『王女アイルはヤンデレ男に溺愛される』の世界 ミキはそこで親友である王女の親友ポジション、レイファ・ミラノ公爵令嬢に転生 一緒に死んだマヤは王女アイルに転生 「また一緒だねミキちゃん♡」 ふざけるなーと絶叫したいミキだけど立ちはだかる身分の差 アイルに転生したマヤに振り回せながら自分の幸せを掴む為にレイファ。極力、乙女ゲームに関わりたくないが、なぜか攻略対象者たちはヒロインであるアイルではなくレイファに好意を寄せてくる。

どんなあなたでも愛してる。

piyo
恋愛
遠征から戻った夫の姿が変わっていたーー 騎士である夫ディーノが、半年以上の遠征を終えて帰宅した。心躍らせて迎えたシエラだったが、そのあまりの外見の変わりように失神してしまう。 どうやら魔女の呪いでこうなったらしく、努力しなければ元には戻らないらしい。果たして、シエラはそんな夫を再び愛することができるのか? ※全四話+後日談一話。 ※毎日夜9時頃更新(予約投稿済)&日曜日完結です。 ※なろうにも投稿しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...