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999年目
12 紐解き ※エリサ
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注意:少しですが悲しい出産の話題があります。嫌な方は飛ばして下さい。
「前世の千尋は子を亡くし養子を迎え幸せに暮らしました」
それだけおさえておいてもらえば大丈夫です。
※※※ エリサ ※※※
「……さて。すぐに遊んでも良いのだけれど。
――先ずは話をしましょうか。
座ってくれる?チヒロ。エリサ。そして貴方もよ、セバス」
王太子妃様は笑顔のままだ。
だが私は身構えてしまった。
私たちが席につくと、王太子妃様はチヒロ様に言われた。
「ねえチヒロ。貴女、先日国王陛下にお会いしたんですってね」
「はい、お会いしました」
さすが王太子妃様だ。
チヒロ様は今日のお茶会の欠席を伝えるお手紙を出されただけ。
しかし王太子妃様は欠席の《理由》をご存知なのだ。
いや、理由だけではない。
王太子妃様も、国王陛下と同じくチヒロ様が王妃様の生まれ変わりだと確信されていた。
「貴女は国王陛下のことをどう思う?」
チヒロ様への質問がそう告げていた。
王太子妃様は続ける。
「国王陛下に関する噂は知っていたでしょう?
国王陛下が成人を迎えたばかりの王妃様を強引に妻としたと。
そして《北の宮》の奥深くに囲ったと。
貴女はそんな噂のある国王陛下と実際にお会いして、どう思って?」
「え、私がですか?」
「ええ。ごめんなさい、変な質問をして。でも、それでも聞いてみたかったの。
貴女の目に国王陛下はどう映っているのかを」
固唾をのんでチヒロ様を見守る。
私の隣にいるセバス様も何も言われない。
私はそんなセバス様を見て、はじめてセバス様もチヒロ様が王妃様の生まれ変わりであると確信されていることを知った。
そういえばセバス様は前世のチヒロ様の《姓》が王妃様の《ご愛称》と同じだと知った時も、様子がおかしかった。
セバス様は元、近衛隊長で国王ご夫妻付き。王妃様の間近にいた方だ。
国王陛下と王太子妃様。王妃様をよく知る方々が揃って《生まれ変わり》だと確信するほどチヒロ様が王妃様に似ているのなら、セバス様が気付かれないはずはなかった。
王太子妃様は尚も問う。
「ねえチヒロ。誰にも言わないわ。だから正直に答えて欲しいの。
貴女の目には国王陛下がどう映っているのか。噂通りの方に見えて?」
チヒロ様はきっぱりと、迷いなく言われた。
「――いいえ。国王様は良い方です。噂は全部、嘘。そんなはずありません」
「……どうして?」
「だって。あの国王様が強引に……なんて。私には想像できません。
国王ご夫妻は仲が良かったと聞きましたし。
お年が離れていたから王妃様を《強引に妻にした》なんて噂が出ただけだと思います」
「……そう。じゃあ、国王陛下が王妃様を囲っていた、というのは?
そう噂されるほど、本当に王妃様は姿をお見せにならなかったのよ」
「何か理由があったんだと思います。
例えば……王妃様は身体が弱かった、とか。どこかお怪我をなさっていたとか」
「王妃様は健康そのものでしたよ。ごくたまにでしたけれど、国王陛下となら
散歩に出られたりもしておいででした」
チヒロ様は言葉に詰まった。
そしてきゅっと手を握ると決意したように言った。
「……あの。本当に。誰にも言わないでもらえますか?」
「ええ。もちろんよ。なにか。思い当たることがあるのね?」
「私の想像でしかありませんけど。
………お腹に赤ちゃんが……いたからじゃないかと思うんです」
「―――――え?」
王太子妃様は目を見開いた。
「――確かに。王妃様はレオン様を妊娠中でいらしたけれど。それが?」
「王太子妃様は問題なく順調でいらっしゃるようですけど。
みんながそうではありません。妊娠中は普段とは身体が変わるんです。
この国ではどの程度なのかわかりませんが、普段の生活が出来なくなる人もいます。
それまで健康かどうかは関係ありません。
悪阻ひとつ取っても。ない人もいれば、何も食べられなくなる人。お腹が大きくなればおさまる人、出産まで続く人がいるように、妊娠は個人差があります。
動けなくなる人もいるんです。
……私の《昔》の知り合いは殆どベッドの上で、ずっと医師の助けが必要でした。だから……」
「……王妃様が。そうだったのではないか、と言うのね?」
「はい。想像でしかないですけど」
「いいえ。だいたい当たっているんじゃないかしら。
それなら国王陛下や。王妃様の周りにいた人が皆、無言を貫くのもわかるわね。
――《自分がお腹にいたせいだ》と気に病みそうな方がいるもの。ねえセバス」
セバス様は無言で俯いた。
それが何よりチヒロ様の推測が正しいのだと、物語っていた。
だが私はそれよりも―――。
私は何故か怖くてチヒロ様のお顔が見れなかった。
やはり気づかれたのだろう。王太子妃様が静かにチヒロ様に聞かれた。
「チヒロ。……聞いてもいい?
出産を迎えるまで医師の助けが必要だったという貴女の《昔》の《知り合い》は無事に出産されたのかしら」
「……その人は無事でしたけど。子は……」
「そう……。お気の毒に。お辛かったでしょうね」
「そうですね。
でもその後、身寄りのない子を養子に迎えてずっと幸せに暮らしてみえました」
王太子妃様がそっと言う。
「チヒロ。ありがとう。話してくれて。私、貴女が大好きよ」
私は拳を握り、唇を噛んで涙をこらえた。
チヒロ様の言う《昔の知り合い》が《誰か》など。
考えなくてもわかってしまったから。
チヒロ様には前世の記憶があるのだ。
何故、気付かなかったんだろう。
チヒロ様も抱えてみえたのだ。
胸の中に。先に逝ってしまった人たちを。
生まれることなく逝った愛しくてたまらないだろう子を―――――。
「さあ。じゃあお話はお終いにして、次は遊びましょうか!」
王太子妃様がぱん、と手を合わせておっしゃった。
その音ではっと意識が今に戻った。
状況を理解する。
貴族カードはどっかり机の上に居座っている。
チヒロ様は頬をこわばらせ言った。
「お、王太子妃様?本当にやるんですか?」
「もちろんよ!さあ、チヒロ。今日は何からして遊ぶ?
シンケイスイジャク?カルタ?それともボーズメクリ?」
素晴らしい笑顔だ。
さすが王太子妃様。強い!
今日はボーズメクリからに決まった。
「前世の千尋は子を亡くし養子を迎え幸せに暮らしました」
それだけおさえておいてもらえば大丈夫です。
※※※ エリサ ※※※
「……さて。すぐに遊んでも良いのだけれど。
――先ずは話をしましょうか。
座ってくれる?チヒロ。エリサ。そして貴方もよ、セバス」
王太子妃様は笑顔のままだ。
だが私は身構えてしまった。
私たちが席につくと、王太子妃様はチヒロ様に言われた。
「ねえチヒロ。貴女、先日国王陛下にお会いしたんですってね」
「はい、お会いしました」
さすが王太子妃様だ。
チヒロ様は今日のお茶会の欠席を伝えるお手紙を出されただけ。
しかし王太子妃様は欠席の《理由》をご存知なのだ。
いや、理由だけではない。
王太子妃様も、国王陛下と同じくチヒロ様が王妃様の生まれ変わりだと確信されていた。
「貴女は国王陛下のことをどう思う?」
チヒロ様への質問がそう告げていた。
王太子妃様は続ける。
「国王陛下に関する噂は知っていたでしょう?
国王陛下が成人を迎えたばかりの王妃様を強引に妻としたと。
そして《北の宮》の奥深くに囲ったと。
貴女はそんな噂のある国王陛下と実際にお会いして、どう思って?」
「え、私がですか?」
「ええ。ごめんなさい、変な質問をして。でも、それでも聞いてみたかったの。
貴女の目に国王陛下はどう映っているのかを」
固唾をのんでチヒロ様を見守る。
私の隣にいるセバス様も何も言われない。
私はそんなセバス様を見て、はじめてセバス様もチヒロ様が王妃様の生まれ変わりであると確信されていることを知った。
そういえばセバス様は前世のチヒロ様の《姓》が王妃様の《ご愛称》と同じだと知った時も、様子がおかしかった。
セバス様は元、近衛隊長で国王ご夫妻付き。王妃様の間近にいた方だ。
国王陛下と王太子妃様。王妃様をよく知る方々が揃って《生まれ変わり》だと確信するほどチヒロ様が王妃様に似ているのなら、セバス様が気付かれないはずはなかった。
王太子妃様は尚も問う。
「ねえチヒロ。誰にも言わないわ。だから正直に答えて欲しいの。
貴女の目には国王陛下がどう映っているのか。噂通りの方に見えて?」
チヒロ様はきっぱりと、迷いなく言われた。
「――いいえ。国王様は良い方です。噂は全部、嘘。そんなはずありません」
「……どうして?」
「だって。あの国王様が強引に……なんて。私には想像できません。
国王ご夫妻は仲が良かったと聞きましたし。
お年が離れていたから王妃様を《強引に妻にした》なんて噂が出ただけだと思います」
「……そう。じゃあ、国王陛下が王妃様を囲っていた、というのは?
そう噂されるほど、本当に王妃様は姿をお見せにならなかったのよ」
「何か理由があったんだと思います。
例えば……王妃様は身体が弱かった、とか。どこかお怪我をなさっていたとか」
「王妃様は健康そのものでしたよ。ごくたまにでしたけれど、国王陛下となら
散歩に出られたりもしておいででした」
チヒロ様は言葉に詰まった。
そしてきゅっと手を握ると決意したように言った。
「……あの。本当に。誰にも言わないでもらえますか?」
「ええ。もちろんよ。なにか。思い当たることがあるのね?」
「私の想像でしかありませんけど。
………お腹に赤ちゃんが……いたからじゃないかと思うんです」
「―――――え?」
王太子妃様は目を見開いた。
「――確かに。王妃様はレオン様を妊娠中でいらしたけれど。それが?」
「王太子妃様は問題なく順調でいらっしゃるようですけど。
みんながそうではありません。妊娠中は普段とは身体が変わるんです。
この国ではどの程度なのかわかりませんが、普段の生活が出来なくなる人もいます。
それまで健康かどうかは関係ありません。
悪阻ひとつ取っても。ない人もいれば、何も食べられなくなる人。お腹が大きくなればおさまる人、出産まで続く人がいるように、妊娠は個人差があります。
動けなくなる人もいるんです。
……私の《昔》の知り合いは殆どベッドの上で、ずっと医師の助けが必要でした。だから……」
「……王妃様が。そうだったのではないか、と言うのね?」
「はい。想像でしかないですけど」
「いいえ。だいたい当たっているんじゃないかしら。
それなら国王陛下や。王妃様の周りにいた人が皆、無言を貫くのもわかるわね。
――《自分がお腹にいたせいだ》と気に病みそうな方がいるもの。ねえセバス」
セバス様は無言で俯いた。
それが何よりチヒロ様の推測が正しいのだと、物語っていた。
だが私はそれよりも―――。
私は何故か怖くてチヒロ様のお顔が見れなかった。
やはり気づかれたのだろう。王太子妃様が静かにチヒロ様に聞かれた。
「チヒロ。……聞いてもいい?
出産を迎えるまで医師の助けが必要だったという貴女の《昔》の《知り合い》は無事に出産されたのかしら」
「……その人は無事でしたけど。子は……」
「そう……。お気の毒に。お辛かったでしょうね」
「そうですね。
でもその後、身寄りのない子を養子に迎えてずっと幸せに暮らしてみえました」
王太子妃様がそっと言う。
「チヒロ。ありがとう。話してくれて。私、貴女が大好きよ」
私は拳を握り、唇を噛んで涙をこらえた。
チヒロ様の言う《昔の知り合い》が《誰か》など。
考えなくてもわかってしまったから。
チヒロ様には前世の記憶があるのだ。
何故、気付かなかったんだろう。
チヒロ様も抱えてみえたのだ。
胸の中に。先に逝ってしまった人たちを。
生まれることなく逝った愛しくてたまらないだろう子を―――――。
「さあ。じゃあお話はお終いにして、次は遊びましょうか!」
王太子妃様がぱん、と手を合わせておっしゃった。
その音ではっと意識が今に戻った。
状況を理解する。
貴族カードはどっかり机の上に居座っている。
チヒロ様は頬をこわばらせ言った。
「お、王太子妃様?本当にやるんですか?」
「もちろんよ!さあ、チヒロ。今日は何からして遊ぶ?
シンケイスイジャク?カルタ?それともボーズメクリ?」
素晴らしい笑顔だ。
さすが王太子妃様。強い!
今日はボーズメクリからに決まった。
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