157 / 197
1000年目
49 疑問 ※空
しおりを挟む※※※ 空 ※※※
「じゃあチヒロは空に帰りたいと思っているわけではない、と言うんだね?」
朝一番にシンの報告を受けたレオンはもう一度念を押すように聞いた。
二人きりの執務室。
シンは頷くと答える。
「はい。《ここでやりたいことがたくさんある》と言われていました。
誰にも言わず考えている、というのですから本心でしょう。
エリサが聞いた通り『空』には《会いたい》と思われているだけかと」
ほっとしたように小さく息を吐いたレオンだったが、表情に憂いを残したままだった。
「そう……。でも『空』に会ってどうしたいんだろう。気にはなるけど。
《『空』への報告》をエリサが盗み聞きしていたと明かしてチヒロに詰め寄るわけにはいかない。
気づいていないフリをして様子を見ているしかないな」
「はい」とシンも同意する。
レオンは一度上を見て、それから執務机に置いてあった手紙に目を向けた。
宛先はレオン。差出人はサージアズ卿だ。
「今日だね。シンの義兄上――サージアズ卿が来るのは」
「はい。……やはり私には連絡がないままですが」
「用事がなくともシンには必ず会いにくるサージアズ卿が。不思議だね。
……何だろう。
ダザル卿のことならすでに報告を受けている。
それなのに、わざわざ僕に《自ら正式に》会いにくるという。
なら用件はチヒロのこと以外にないと思うんだけど」
「……」
レオンがしていたのと同じように、シンも執務机の上の手紙を見た。
その顔を見てレオンが言う。
「シン。何か心当たりがあるの?」
シンは瞬きもせず手紙を見つめ言った。
「……いえ。あり得ないことだと思いますので」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
108
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる