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1000年目
50 来訪者 ※空
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「二人で《王家の盾》の当主となることになった」
「――は?」
控えの間だ。
サージアズ卿を呼びに来たシンは、義兄がいきなり発した言葉が理解できなかったらしい。
「我ら兄弟二人が《王家の盾》の当主となるのだ」
サージアズ卿は言い、簡潔に説いた。
「公には、お前が当主として《シン・ソーマ》を名乗る。
私は名乗らず裏で仕事をする。
名と実、表と裏を分ける。
お前はすでに当主だと認識されているから、当主を降りたと言う手間がない。
私は、お前という目眩しがあるから動きやすい。
良い方法だろう?
親父殿は乗り気で、すでに陛下からも許可はいただいた。――いいな」
シンは面白そうに微笑んでいるサージアズ卿の顔を見つめたまま言った。
「……義兄上。その方法はどこから?
そういう突拍子もないことを思いつきそうな方を一人知っているのですが……」
サージアズ卿は苦笑した。
「早いな」
「では、やはり……」
「――実はお前を当主にし、私は完全に裏に徹するつもりだったのだが。
親父殿が国王陛下に許可をもらいに行ったら、何故か笑われたそうだ」
「……笑われた?」
「ああ。《誰から仕入れたのかは知らないが面白い方法だ》と。
《だが不便が出るかもしれないからこの際、二人とも正式な当主にしてしまえ》と、助言をいただいて。
それで《王家の盾》の当主は、お前と私。表と裏の二人になった」
「……陛下が……」
「多分、陛下だけじゃあないだろうな。手続きが済めば正式なご挨拶に伺うが。
第3王子殿下、王太子妃様は、まず同じ反応をされるだろう」
「では、やはり『あの方』の……。
いつ。一体どんな話を『あの方』とされたのですか?」
「さて。なんの話かな」
「……義兄上。他にもひとつ、お聞きしたいことがあります。
……セバスから……もしや、という報告も受けてますが……まさか、それも?」
「―――ああ。やはりセバスは気がついたのか。
よくあんな《古い儀式》を知っていたな。さすがセバスだ」
思わずだろうか。
シンは手を握った。
「……では。本当なのですね……?」
「もちろんだ。第3王子殿下にもこれからお話しする。
その為に今日は来たのだ。一応、殿下には許可をいただかなくてはな」
「……義兄上。何故です。何故、急にそんな。何があったのですか?
教えてください。
『あの方』と、いつのまにそんな――」
「――シン。何故そんなに混乱している。私が《我が主人》を得たからか?
それとも《儀式の最後》が気に入らなかったのか?
――セバスにそこまで聞いたのだろう?」
「――義兄上!!」
「冗談だ。セバスの位置からなら《そう》見えただろうから、お前をからかった」
サージアズ卿はくすくすと笑い出した。
シンはそんな義兄から顔を背ける。
「人が悪い。くだらない冗談はやめてください」
「くだらない冗談、か」
「そうでしょう、そんな。……まさか。わざとセバスに《そう見せた》のですか?
一体、何のために――」
「――面白かった。長く一緒にいるが、お前のそんな顔は初めて見たな。
お前も自分が今、どんな顔をしているか見た方がいいぞ」
「………………は?」
「さて、では第3王子殿下のところへ伺おうか」
サージアズ卿は呼びに来たシンの前に立って歩き出した。
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