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1000年目
72 始まり 空の独白1 ※空
しおりを挟む※※※ 空 ※※※
私たちの世界が滅んだ。
《空》にいて生き残ったみんなで、何も無くなった地上を《作る》ことにした。
100年かけ地上を再生させて。
それから微生物、植物、そして動物を《種》から育て地上に降ろした。
古代の《種》は無かったから、新しい物になった。
特に《植物の種》は改良に改良を重ねた最新のものになったが、それも良しとした。
それが落ち着くと、今度は人間を降ろすことにした。
人間を降ろすのは難しかった。
《種》はある。
人間は作れる。
しかし今の何もない地上で生きていく《知識》を与えてはやれない。
自分たちには高度な文明の知識しかないのだ。
精密な《カラクリ》を使って生きる知識しかない。
精密な《カラクリ》を《作る》知識もない。
ましてや自然しかない地上で生きる遥か太古の知識。
そんなもの誰も持っていなかった。誰も何も知らないのだ。
この世界で眠っている魂も同じだった。
眠る前の、現世の記憶も精密な《カラクリ》のある世界。
生き残った《空》の私たちにも、眠っている魂にも、精密な《カラクリ》なしで生きた記憶はもうないのだ。
考えた私たちは《別の世界》から帰ってきた魂に頼ることにした。
どういうわけか、ここではない《別の世界》。
まだ《カラクリ》のない世界で生きて、死んで。
再びこの世界に《戻ってきた》魂。
その魂が持つ《記憶》こそ、今の地上で生きる人間に必要なのだ。
私たちは《別の世界》から戻った魂を地上に降ろすことにした。
《種》から育てた人間には勝手に魂が宿る。
だから私たちは『ヒトガタ』を作った。
身体の構造は《基本的に》人間と同じにして。
《選んだ魂》を入れることができる《器》を――『ヒトガタ』を作った。
ひと目で『ヒトガタ』だとわかるようにようにした。
『ヒトガタ』の髪と瞳を、この世界ではありえない《漆黒》にしたのだ。
遺伝も《させない》。
喋れない赤ん坊でも、寿命がすぐきてしまう歳でも困る。
10歳程度の『ヒトガタ』を作って、前世の《別の世界で生きた記憶》を持つ魂を入れた。
人工的に《入れる》からだろうか。
都合の良いことに、『ヒトガタ』に入れた魂は《種》から育てた人間に宿る魂と違って、前世の記憶を忘れはしなかった。
地上に《種》から育てた人間と、《前世の知識》のある『ヒトガタ』を降ろす。
『ヒトガタ』の先導のもと、《種》の人間と『ヒトガタ』は、共に工夫を凝らしながら地上に馴染んで生きていった。
それを見るのは楽しかった。
『ヒトガタ』が、《カラクリ》もないのに火をおこした時には感動した。
《種》の人間が、すぐにそれを真似て火をおこした時には驚いた。
《種》の人間が、《カラクリ》から作られたものでなく、はえていた木や草の実を食べた時も驚いた。
『ヒトガタ』が、食べられる草の実の種を綺麗に並べて土に入れ、畑を作ったのには驚愕した。
地上はくるくる変わる。
《空》の皆で飽きもせず地上を眺めた。
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