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前編
彼は言った。「私と結婚してくれないか」
私は答えた。「はい、了解いたしました」
こうして私たちの結婚は決まった。
「エスファニア!お前、隊長と結婚するって本当か?」
訓練場に入ろうとしていた私を見つけると同時にウェイドが叫んだ。
同時に近くにいた同僚数人がこちらを振り返る。
どこから聞いたんだ、という疑問と
やってくれたな、という気持ちが入り混ざる。
が、ウェイドは何も気にせず私に詰め寄った。
「お前、隊長と付き合ってたのか?そんな素振り全くなかったのに」
ああ、もう。うるさい。私はうんざりした。
どうしてコイツはこういう話が大好きなのだ。
「いつから隊長と付き合ってたんだよ」
嬉々として近寄ってきたウェイドに《せめて声を落とせ》と言いたかったが、どうせコイツは言ってもきかない。
それに既にウェイドの声を聞いた数人がこちらへ耳を傾けている。
私は諦めて説明することにした。
「付き合ってないよ」
「嘘つくなよ。じゃあなんで結婚、なんて話になったんだよ」
「隊長に言われたから」
「は?」
「隊長に結婚してくれと言われたから受けた。ただそれだけ」
「はあっ?!任務じゃないんだぞ!なんだそれ!」
「うるさいな。とにかくそういうこと。ーーあ」
「なんだ?」
「ひとつ訂正しとく。《結婚する》んじゃなくて《結婚した》。もう届けは出して受理されたから。一緒に暮らしてはないけどね」
「―――――」
口をあけたままになったウェイドはほっといて、私は訓練を開始した。
私は近衛騎士だ。王族を守るのが仕事。
この国でただ一人の女騎士だからといって甘やかされはしない。
むしろ逆だ。
他の騎士ーー男性に劣ると判断されればすぐに降格されてしまう。
今日のように非番であろうと訓練は欠かせないのだ。
しばらくしてウェイドが模造剣を二本持って戻ってきた。
一本を私に渡す。
そして手合わせをしろというように模造剣を構えてみせた。
同じ騎士の中には私が女だからと相手をしない者もいる。
そんな中、この同僚はいつも私の相手を買って出てくれた。いい奴なのだ。
友というより兄でもあり弟でもあるような存在。
これで恋の噂好きでなければもっといい奴なんだがな、と独りごちてから
私は息を整え模造剣を構えた。
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