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追加小話 〜 真実まであと少し 〜 ※ ウェイド視点
※※※ ウェイド視点 ※※※
俺には苦手な奴が二人いる。
一人はエスファニアの兄貴。
妹エスファニアが近衛騎士になり王宮に上がったと同時にご挨拶を、とやってきた彼女の兄貴はその日、たまたま非番で応対した俺に聞いた。
「身長はどのくらいですか?」
何を聞くんだと不思議に思い首を傾げたら奴は笑って言ったのだ。
「墓穴を掘る時に必要なので」
鳥肌がたった。
……近衛騎士を脅すか?普通。
そりゃあ猛者なのは見ただけでわかっていた。
服を着ていてもわかる鍛えられた身体。姿勢。手にあった剣だこ。雰囲気。
借金だらけで金策に走り回らなければならない次期領主という立場でなければ、間違いなく騎士になっていただろうエスファニアの兄貴は、顔は人の良さそうな笑顔で。だが溢れる殺気を隠そうともせず俺に言ったのだ。
「私の妹エスファニアを《くれぐれも》お願いしますね」と。
今、思い出しても鳥肌がたつ。
だが兄貴の気持ちはわからないではない。
妹がこの国初の女性近衛騎士になったのだ。
つまり近衛騎士――強者の男ばかりの中に紅一点、飛び込む事になった。
おまけにエスファニアは《特別扱いは不要》だと自ら男ばかりの近衛騎士の宿舎に入った。王が《何かと問題があるだろうから》と侍女の宿舎に入れるよう手配されていたというのに。
身内としては気が気ではなかったのだろう。
エスファニアの良い兄貴ではある。
初対面で墓穴の話をされ殺意を向けられた俺にとっては苦手でしかない奴だが。
もう一人は隊長だ。
言わずと知れた近衛騎士隊の長。
自分で言うのも何だが、俺は昔から自分を上にいける奴だと思っていた。
今でも思う。
入隊して三年。今の俺は近衛騎士の中でも五本の指に入る。出世頭だ。
数年で副隊長を抜ける自信がある。
だが――どんなに励んでも《隊長》にはなれない。
俺よりたった3歳年上なだけ。
しかし国一番と言われるに相応しい圧倒的な剣の腕とその風格。
隊長を抜けはしないのだ。何年あっても。誰であっても。
隊長が隊長として居る限り、俺が――他の奴が《隊長》になれることはない。
敵わない、と認めるしかない隊長だが、俺が苦手だと思うのには他に訳がある。
―――どうも上手く意思が伝わらないのだ。
エスファニアの兄貴と会った後。
隊長までが俺に「エスファニアを任せるから頼んだ」と言った。
俺の顔を見て、俺がエスファニアの兄貴に言われたことを察したのだと思う。
騎士は姓を名乗ることを禁じられているが隊長は貴族だ。多分高位。
騎士の宿舎で暮らしてはいない。
だから紅一点の女性騎士に宿舎で野郎どもが《悪さ》をしないよう《見張り》が欲しかったのだろう。俺はちょうど良かったわけだ。しかし、丸投げかよ。
勘弁してくれ―――
正直、気が進まなかった。
女の子の見張り?しかも絶対に《そういう目》で見てはいけない女の子の?
何で俺が。面倒くさい。そう思った。
だがすぐにそんな考えは変わった。
エスファニアは俺が付き合っていた女の子たちとは全く違った。
彼女は騎士だったのだ。
エスファニアの訓練相手をしない同僚たちは多い。
彼女はそれを《自分が女で弱いから》だと思っているようだが酷い勘違いだ。
彼女は強い。だから負けるとわかっている同僚は決して彼女の相手をしない。
俺でも三本に一本は取られる。ちなみに彼女は兄貴から一本も取ったことがないそうだ。……だから《自分は弱い》と思い込んでいるわけだな。
それを知った俺は大嫌いだった訓練を非番の日でも欠かさずするようになった。
俺だけじゃない。彼女が近衛隊に入ってから訓練を真面目にやる奴が増えた。
田舎の領地を守るために剣を覚え馬を駆り盗賊とやりあっていた彼女なのだ。
エスファニアは隊の中でも俺の中でも性別など超越した存在になった。
友であり、かけがえのない家族のような存在。
異性として見て想いを抱いていたのはジャンくらいのものだ。あとは―――
……本人に自覚があるのかどうかは知らないが。
いつからか隊長の視線は彼女を追っていた。
だから二人が「結婚する」という話を聞いても、俺は隊長が求婚したことはああそうかと思っただけだった。エスファニアが受けたことには驚いたが。
それまで愛情深かった母親が、借金を抱えた途端に家族を見限り家令と逃げたせいなのか。エスファニアは人の情を否定する。
恋だの愛だのなど幻だと。人の気持ちはすぐに変わるのだと。
俺はそんな彼女に《夫》となった者として言ってやって欲しかった。
「結婚相手にお前を選んだのはお前を好きになったからだ」とか。
「お前を好きになり、これかも愛していきたいから結婚したのだ」とか。
そう言って欲しかったんだよ、隊長。
なのに。
――「当然だろう。ーー私は女性といえば彼女しか知らないのだ」――
だあ? はああああああああああーーーーーーーーー?!
誰がそんな台詞言うと想像できたよ!!
どんだけ斜め上の答えなんだよ!!
なに盛大にとんでもないこと暴露してくれてんの?
――ってか何だそれ!!
俺にアイツを任せるって言ったよね?
俺にアイツを野郎どもの魔の手から守れって言ったんだよね?
なのに何でアンタがアイツに手ェ出しちゃってんの?
なんでアンタが食べちゃってんの?
何してくれてんだ!!
あああああああーーーーーーーーー?!
――――― 詰 ん だ ―――――
だめだ……終わった…………
だからアンタ苦手なんだよ……隊長…………
エスファニアの兄貴の溢れる殺気を思い出す。
今頃、俺の墓穴は出来上がってる頃かな……
エスファニア。
俺は見届けられないだろうけれど……どうか……
幸せになってくれ……
空を仰いで
俺は意識を手放した。
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おこ 様
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おこ 様
お読みいただき、感想まで。ありがとうございます。
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