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雪の日は寒いけど、距離が近くて好き
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年が明けてしばらく経った、一月十一日。
朝起きて、ベッドの上から外を見ると雪が積もっていた。
「初雪だー!」
高校生だけど、年甲斐もなくはしゃいで、ベッドから飛び降りた。
そのまま着替えて、私は高校に向かう。
その途中にある公園で、彼と合流してから。
少し歩くと、いつもの公園が見えてきた。ブランコにも滑り台にも雪が積もっていて、いつもはカラフルな公園が、今日は白一色だ。何だか新鮮で、歩いているだけで楽しい。
「おまたせー!」
白色の手袋をはめた手を振りながら、マフラーに顔を埋めて彼に近づいていく。彼はいつもと同じ木の下で、本を片手に待ってくれていた。黒色の手袋に紺のレッグウォーマーをしていて、彼も寒そうだ。
「瑠莉、ここに来るまでに転ばなかったか?」
「全然大丈夫だよ。颯こそ、二回くらい転んだんじゃない?」
「ばーか、一回も転んでないよ」
付き合って一か月の私の彼氏――颯は、いつも私をばかにする。
確かに、日ごろからつまずくことは多いし、どこかに頭をぶつけることもある。それでも、テストの成績はいいんだけどなあ。
「じゃあ、学校行くか」
そう言って歩き出した颯のあとを、私は追っていく。
颯は人前で恋人らしいことをするのを嫌がるから、手も繋いでくれない。好きだから尊重するけど、実はたまには繋ぎたかったりする。言ってもしてくれないから、言わないけど。
歩いて雪を踏むたびにザクザクと音が鳴って、靴越しにも冷たさが伝わってくる気がした。颯も私も、滑らないようにいつもよりゆっくり慎重に歩いていく。
しかし、このままでは先に歩き出した颯の横に並べない。追いつけない。
それは嫌だから、私は車輪の跡が付いていて雪が少ない道を行くことにした。そうすれば、雪に足を取られずに、颯の隣に並べる。
すぐ前にいる颯に並ぶために、私は勢いよく車輪の跡がついているところに飛び出した。
「わっ!」
と、同時に、足を滑らせて前に体が傾く。
あ、あれ、そんなに凍ってないと思ったんだけど、こんなに滑るっけ!?
私が無知だった……。そう思って、地面とのハグを受け入れることにした時――。
「あっ……ぶねえなあ」
私が滑ったことに気づいた颯が、間一髪受け止めてくれた。普段は本を読んで博識な感じを出しているのに、こういう時にそういうことするのは何と言うか……好きだ。
「あ、ありがとう」
滑った恥ずかしさと受け止めてくれた嬉しさで、変な顔になっていそうだ。私は俯いて、また歩き出そうとした。しかし、颯は歩き出さない。
「颯……?」
彼の名前を呼ぶと、少しの間を空けてため息が聞こえてきた。
え、まさか、呆れられた!? うそうそ、最悪、どうしよう。
「ほら、手」
悩む私にかけられた言葉は、予想とは違ったものだった。もっと、いつもみたいに、ばかにされるかと思っていたのに。
むしろ、いつもは嫌がることをしてまで、私が滑るのを防ごうとしてくれている。
「い、いいの?」
「いいのって、また転んだら危ないだろ?」
颯の言葉を聞いて、おずおずと彼の手を取った。そして、ゆっくりと彼の隣まで行くと、そのまま並んで歩き出す。手袋越しでも彼の手の強さや大きさが分かって、いつもよりドキドキしてしまった。
この手で、私を助けてくれたんだ。そして今も、守ってくれているんだ。
そう思うと、自然と顔に熱が集まってしまっている気がして、慌てて頭を振る。
「瑠莉、さっきより耳赤くない? 寒い?」
私が頭を振ったことで、颯がこちらを向いて気づいてしまったようだ。
まずい、何か言わないと。
私は俯いて答えた。
「颯が助けてくれて、それで男らしさを感じて、かっこよくて……」
気がつけば本音が口から出ていた。
こんなこと言ったら、いつもみたいにからかわれる!
そう思っていたのに、いつまで経っても何も言わない。不思議に思って顔を見ると、りんごのように赤くなった颯がいた。私と目が合うと、瞬時に視線を逸らす。
「え!? 照れてる? 照れてるの!?」
「照れてるわけないだろ! さ、寒いだけだよ!」
必死に言っているが、その必死ささえいつもと違って、肯定しているとしか思えない。
いつも冷静な颯が照れるなんて珍しくて、嬉しくなって私は調子に乗った。
「かっこいいって言われたの、嬉しかったの? それとも男らしいの方?」
たくさん質問した結果、颯は拗ねた子どもみたいになった。
「もういい、行くよ!」
それでも、繋いだ手は離さないでいてくれた。
照れを隠す為なのか、さっきよりも僅かに肩も近くて胸が高鳴る。
この距離でいられるなら、毎日雪でもいいかな、なんて。
朝起きて、ベッドの上から外を見ると雪が積もっていた。
「初雪だー!」
高校生だけど、年甲斐もなくはしゃいで、ベッドから飛び降りた。
そのまま着替えて、私は高校に向かう。
その途中にある公園で、彼と合流してから。
少し歩くと、いつもの公園が見えてきた。ブランコにも滑り台にも雪が積もっていて、いつもはカラフルな公園が、今日は白一色だ。何だか新鮮で、歩いているだけで楽しい。
「おまたせー!」
白色の手袋をはめた手を振りながら、マフラーに顔を埋めて彼に近づいていく。彼はいつもと同じ木の下で、本を片手に待ってくれていた。黒色の手袋に紺のレッグウォーマーをしていて、彼も寒そうだ。
「瑠莉、ここに来るまでに転ばなかったか?」
「全然大丈夫だよ。颯こそ、二回くらい転んだんじゃない?」
「ばーか、一回も転んでないよ」
付き合って一か月の私の彼氏――颯は、いつも私をばかにする。
確かに、日ごろからつまずくことは多いし、どこかに頭をぶつけることもある。それでも、テストの成績はいいんだけどなあ。
「じゃあ、学校行くか」
そう言って歩き出した颯のあとを、私は追っていく。
颯は人前で恋人らしいことをするのを嫌がるから、手も繋いでくれない。好きだから尊重するけど、実はたまには繋ぎたかったりする。言ってもしてくれないから、言わないけど。
歩いて雪を踏むたびにザクザクと音が鳴って、靴越しにも冷たさが伝わってくる気がした。颯も私も、滑らないようにいつもよりゆっくり慎重に歩いていく。
しかし、このままでは先に歩き出した颯の横に並べない。追いつけない。
それは嫌だから、私は車輪の跡が付いていて雪が少ない道を行くことにした。そうすれば、雪に足を取られずに、颯の隣に並べる。
すぐ前にいる颯に並ぶために、私は勢いよく車輪の跡がついているところに飛び出した。
「わっ!」
と、同時に、足を滑らせて前に体が傾く。
あ、あれ、そんなに凍ってないと思ったんだけど、こんなに滑るっけ!?
私が無知だった……。そう思って、地面とのハグを受け入れることにした時――。
「あっ……ぶねえなあ」
私が滑ったことに気づいた颯が、間一髪受け止めてくれた。普段は本を読んで博識な感じを出しているのに、こういう時にそういうことするのは何と言うか……好きだ。
「あ、ありがとう」
滑った恥ずかしさと受け止めてくれた嬉しさで、変な顔になっていそうだ。私は俯いて、また歩き出そうとした。しかし、颯は歩き出さない。
「颯……?」
彼の名前を呼ぶと、少しの間を空けてため息が聞こえてきた。
え、まさか、呆れられた!? うそうそ、最悪、どうしよう。
「ほら、手」
悩む私にかけられた言葉は、予想とは違ったものだった。もっと、いつもみたいに、ばかにされるかと思っていたのに。
むしろ、いつもは嫌がることをしてまで、私が滑るのを防ごうとしてくれている。
「い、いいの?」
「いいのって、また転んだら危ないだろ?」
颯の言葉を聞いて、おずおずと彼の手を取った。そして、ゆっくりと彼の隣まで行くと、そのまま並んで歩き出す。手袋越しでも彼の手の強さや大きさが分かって、いつもよりドキドキしてしまった。
この手で、私を助けてくれたんだ。そして今も、守ってくれているんだ。
そう思うと、自然と顔に熱が集まってしまっている気がして、慌てて頭を振る。
「瑠莉、さっきより耳赤くない? 寒い?」
私が頭を振ったことで、颯がこちらを向いて気づいてしまったようだ。
まずい、何か言わないと。
私は俯いて答えた。
「颯が助けてくれて、それで男らしさを感じて、かっこよくて……」
気がつけば本音が口から出ていた。
こんなこと言ったら、いつもみたいにからかわれる!
そう思っていたのに、いつまで経っても何も言わない。不思議に思って顔を見ると、りんごのように赤くなった颯がいた。私と目が合うと、瞬時に視線を逸らす。
「え!? 照れてる? 照れてるの!?」
「照れてるわけないだろ! さ、寒いだけだよ!」
必死に言っているが、その必死ささえいつもと違って、肯定しているとしか思えない。
いつも冷静な颯が照れるなんて珍しくて、嬉しくなって私は調子に乗った。
「かっこいいって言われたの、嬉しかったの? それとも男らしいの方?」
たくさん質問した結果、颯は拗ねた子どもみたいになった。
「もういい、行くよ!」
それでも、繋いだ手は離さないでいてくれた。
照れを隠す為なのか、さっきよりも僅かに肩も近くて胸が高鳴る。
この距離でいられるなら、毎日雪でもいいかな、なんて。
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