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曖昧な告白じゃ気づかない
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全国で一番カップルが成立する確率が高く、かつ破局率が一番低いと謳っているここ――仙日高校。
私がここに入学したのは、恋をするためだ。
中学では、友情、部活、学業と、恋愛をしている暇なんてなかった。けど、ここに来たからには皆、恋をしたいと思っているはず! きっと私も、運命的な恋ができるはずなんだ!
入学式を終えた私は、新しくできた友達二人と共に教室へと向かっていた。実は、入学前から気になっていた、皆の恋愛事情を聞いてみることにする。
「そういえば、皆は彼氏いるの?」
「いるよー」
「私もー」
「え!?」
嘘!? もういるの!? え、入学前ってことなのかな。それなら、ここに来る意味って……。
「破局率が低いから、彼氏とここに来たの」
「私も同じ!」
なるほど、そういう理由もあるのね。確かに、私も同じ状況だったらそうしたかもしれない。
「陽南美はまだいないの?」
「そうなの、ここに来て運命の出会いを探そうと思って」
ガッツポーズをして、友達に私の意志の強さを見せる。一瞬ぽかんとしてから、二人は顔を見合わせて、呆れたようにこちらを見た。
「運命的な出会いって、もう足代くんしかいないじゃん」
「な!? 何でそこで洸大が出てくるの!?」
足代洸大――私の幼馴染で、偶然同じクラスになった男だ。
確かに、幼馴染で高校も同じで、しかも同じクラス。運命的とも言えるかもしれない。でも、それは相手が洸大であるだけで、一瞬で無効になる。
「幼馴染で高校最初に同じクラスって、運命じゃん。今日だって、一緒に登校してきてたでしょ」
受験の合格発表の時に仲良くなった二人は、洸大の顔を知っている。今日の朝も、見られていたようだ。
「私が家を出たらたまたま出てきたから、成り行きだよ! 一緒に登校したくてしたわけじゃないから!」
「ふーん、まあ、相手もそうとは限らないけどね」
「洸大も、私のことそういう目で見てないから」
そういうと、ちょうど着いた教室に入って、私たちは自分の席に座った。
「友達と何話してたん?」
そして、運命的と言われる理由はもう一つ。洸大が、隣の席なことに原因がある。
「別に、何でもいいでしょ」
友達にからかわれた、というか、運命的と言われたことで、反発心から冷たい態度になる。
「え、何でそんなに怒ってんの?」
聞かれるがスルーした。これ以上、変な噂を立てられたり、運命的だとか言われても困るし。
洸大は中学の時と変わらない、黒髪のツーブロックの髪の毛をしていた。高校でもサッカー部に入るつもりだと今朝言っていて、恋愛には興味がなさそうだと思った記憶がある。
「ねえ、洸大は何でこの高校に来たの?」
入学式の片づけがごたついているのか、それとも何か話し合いをしているのか、先生はまだ教室にやってこない。教室は全体的に、ざわざわしていた。
「え、そ、それは……」
何か迷っているようだったけれど、意を決したようにこちらを見て洸大は言った。
「この高校の特徴に惹かれたからだよ」
「ってことは、洸大も恋がしたいってこと?」
「”も”って、陽南美もそうなのか?」
「うん、私はここで、運命的な出会いをするの!」
それを聞いた瞬間、洸大の目が盛大に泳いだ。何に狼狽えているのだろう。
「どうしたの?」
「い、いや、別に?」
よく分からない態度に眉を顰めながら、先生が教室に入ってきたので前を向いた。
入学式の日だったため、今日は先生の話と色々なプリントを配り終えたら、下校となった。こういうところは、普通の学校と変わらないっぽい。
「なあ」
帰り支度をしていたら、洸大に声をかけられた。運命的な出会いをして恋をしたい私としては、一応男なわけだから洸大に声をかけられすぎるのは困る。彼氏と勘違いされて、人が寄ってこなくなるかもしれない。
「何?」
そんな気持ちを抱きながら、渋面を作った。
「一緒に帰らね?」
「はぁ……何で?」
「……俺が、陽南美に本気だからだよ」
「何言ってるの?」
言葉の意味が分からなくて問い返すと、洸大は静かに語り出した。
「俺たちが同じクラスになったのは、偶然じゃなくて学校側が俺の気持ちを考慮してくれたんだと思うんだ。それが出来るから、カップル誕生率が高くて、破局率が低いんだと思う。陽南美は、そう思わないか?」
「ちょっと、全体的に言ってることが理解できないんだけど。つまり、学校は洸大が一人ぼっちにならないように、私っていう幼馴染を一緒にしたの? 私からしたら、ただの恋愛妨害じゃん!」
「何でそうなる!?」
洸大は急に頭を抱えて、私の目を真っすぐに見据えた。私、何か変なこと言ったかな。
「少しくらい、俺のこと見ろよ……」
「見てるじゃん、今」
そう言って目を合わせると、洸大は頬を赤らめた。熱でもあるのかと、心配になるほどに。
「く、くそーーーーー!!!」
かと思えば、大声で叫んで教室を出て行った。
「いやあ、可哀そうに。今のはああなるよ」
「足代くん、ファイトだね」
一部始終を見ていたのか、友達二人がやってくる。
「え、何で二人とも洸大の味方みたいになってるの?」
「味方っていうか、ねえ?」
「ねえ~?」
ねえ、と言っている二人の考えていることは分からない。
けれど、今日の洸大は今までとは違う気がした。私を見る瞳に、熱がこもっているような……。
だから何だって、話なんだけど。
私がここに入学したのは、恋をするためだ。
中学では、友情、部活、学業と、恋愛をしている暇なんてなかった。けど、ここに来たからには皆、恋をしたいと思っているはず! きっと私も、運命的な恋ができるはずなんだ!
入学式を終えた私は、新しくできた友達二人と共に教室へと向かっていた。実は、入学前から気になっていた、皆の恋愛事情を聞いてみることにする。
「そういえば、皆は彼氏いるの?」
「いるよー」
「私もー」
「え!?」
嘘!? もういるの!? え、入学前ってことなのかな。それなら、ここに来る意味って……。
「破局率が低いから、彼氏とここに来たの」
「私も同じ!」
なるほど、そういう理由もあるのね。確かに、私も同じ状況だったらそうしたかもしれない。
「陽南美はまだいないの?」
「そうなの、ここに来て運命の出会いを探そうと思って」
ガッツポーズをして、友達に私の意志の強さを見せる。一瞬ぽかんとしてから、二人は顔を見合わせて、呆れたようにこちらを見た。
「運命的な出会いって、もう足代くんしかいないじゃん」
「な!? 何でそこで洸大が出てくるの!?」
足代洸大――私の幼馴染で、偶然同じクラスになった男だ。
確かに、幼馴染で高校も同じで、しかも同じクラス。運命的とも言えるかもしれない。でも、それは相手が洸大であるだけで、一瞬で無効になる。
「幼馴染で高校最初に同じクラスって、運命じゃん。今日だって、一緒に登校してきてたでしょ」
受験の合格発表の時に仲良くなった二人は、洸大の顔を知っている。今日の朝も、見られていたようだ。
「私が家を出たらたまたま出てきたから、成り行きだよ! 一緒に登校したくてしたわけじゃないから!」
「ふーん、まあ、相手もそうとは限らないけどね」
「洸大も、私のことそういう目で見てないから」
そういうと、ちょうど着いた教室に入って、私たちは自分の席に座った。
「友達と何話してたん?」
そして、運命的と言われる理由はもう一つ。洸大が、隣の席なことに原因がある。
「別に、何でもいいでしょ」
友達にからかわれた、というか、運命的と言われたことで、反発心から冷たい態度になる。
「え、何でそんなに怒ってんの?」
聞かれるがスルーした。これ以上、変な噂を立てられたり、運命的だとか言われても困るし。
洸大は中学の時と変わらない、黒髪のツーブロックの髪の毛をしていた。高校でもサッカー部に入るつもりだと今朝言っていて、恋愛には興味がなさそうだと思った記憶がある。
「ねえ、洸大は何でこの高校に来たの?」
入学式の片づけがごたついているのか、それとも何か話し合いをしているのか、先生はまだ教室にやってこない。教室は全体的に、ざわざわしていた。
「え、そ、それは……」
何か迷っているようだったけれど、意を決したようにこちらを見て洸大は言った。
「この高校の特徴に惹かれたからだよ」
「ってことは、洸大も恋がしたいってこと?」
「”も”って、陽南美もそうなのか?」
「うん、私はここで、運命的な出会いをするの!」
それを聞いた瞬間、洸大の目が盛大に泳いだ。何に狼狽えているのだろう。
「どうしたの?」
「い、いや、別に?」
よく分からない態度に眉を顰めながら、先生が教室に入ってきたので前を向いた。
入学式の日だったため、今日は先生の話と色々なプリントを配り終えたら、下校となった。こういうところは、普通の学校と変わらないっぽい。
「なあ」
帰り支度をしていたら、洸大に声をかけられた。運命的な出会いをして恋をしたい私としては、一応男なわけだから洸大に声をかけられすぎるのは困る。彼氏と勘違いされて、人が寄ってこなくなるかもしれない。
「何?」
そんな気持ちを抱きながら、渋面を作った。
「一緒に帰らね?」
「はぁ……何で?」
「……俺が、陽南美に本気だからだよ」
「何言ってるの?」
言葉の意味が分からなくて問い返すと、洸大は静かに語り出した。
「俺たちが同じクラスになったのは、偶然じゃなくて学校側が俺の気持ちを考慮してくれたんだと思うんだ。それが出来るから、カップル誕生率が高くて、破局率が低いんだと思う。陽南美は、そう思わないか?」
「ちょっと、全体的に言ってることが理解できないんだけど。つまり、学校は洸大が一人ぼっちにならないように、私っていう幼馴染を一緒にしたの? 私からしたら、ただの恋愛妨害じゃん!」
「何でそうなる!?」
洸大は急に頭を抱えて、私の目を真っすぐに見据えた。私、何か変なこと言ったかな。
「少しくらい、俺のこと見ろよ……」
「見てるじゃん、今」
そう言って目を合わせると、洸大は頬を赤らめた。熱でもあるのかと、心配になるほどに。
「く、くそーーーーー!!!」
かと思えば、大声で叫んで教室を出て行った。
「いやあ、可哀そうに。今のはああなるよ」
「足代くん、ファイトだね」
一部始終を見ていたのか、友達二人がやってくる。
「え、何で二人とも洸大の味方みたいになってるの?」
「味方っていうか、ねえ?」
「ねえ~?」
ねえ、と言っている二人の考えていることは分からない。
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だから何だって、話なんだけど。
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