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3章 寂しがり屋のかみさま
11 完璧なお城
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「シャルロット?」
「――ソフィア」
我に返った瞬間、シャルロットは転移の力を行使した。焦っていたせいもあり、具体的な座標は特に指定しなかった。頭の中は自分を突き飛ばしたレガリア――レイのことで溢れかえっている。だからこそ、レイと一番近い存在だったソフィアの元へ転移したのだろう。
ソフィアの周りには誰もいない。
ちら、と周囲を見渡して気がつく異変。
目の前に聳え立つ青い壁。
「これは……」
「さっき現れたのよ。良く分からないけれど、嫌な予感だけはするわね。――ねぇ、レガリアとはどうなったの? その様子だと負けたわけではないようだけど」
「うん。上手くいきそうだったんだけど……突然、水……なのかな? 変な物体が襲いかかってきてね。彼は私を庇って、多分連れ去られた」
「連れ去られた? じゃあ」
「ここにいると思う。あの水と同じ気配がするから」
そう、とソフィアは呟く。
「ひとまず、貴女が無事で良かったわ」
「ありがとう。でも、これからだね」
「そうね」
そこへふと風が吹く。優しくもどこか張り詰めた雰囲気のある、緑の風。
振り返れば風の主である大精霊と、彼と壮大な約束を果たしたこの国の若き王がいる。
「来たわね。ミセリアは?」
「彼女は城に帰らせた。万が一に備えて」
「……怒ったんじゃない?」
「次に帰ったらまた刺されるかも」
向けられた心配に対してけろっと笑っているフェリクスだが、言っていることは物騒である。
はは、と苦笑をしてから気持ちを切り替えて水の結界を見上げた。
「最初に言っておくが、この現象はアクアが引き起こしたものだ」
「アクアって……あの大精霊の? テラに消されたと聞いたけど」
「それがどうやらこいつを利用して生きていたみたいでな。一年隠れ続けて、何故か今動き出したというわけ。流石の俺も非活性状態になられると感知出来ねぇ、それで完全に頭から抜けてたわ」
「じゃあアクアがレガリアを……レイを連れ去ったんだ」
気付けなくてごめん、とフェリクスが肩を落とす。それを止めさせて、シャルロットは簡単に経緯を説明した。
「そうか。――ただ、生きていたとは言っても俺やテラが死んだと勘違いするくらいには力を削がれているはずだ。それに、レガリアに手を出したなら同盟を組んでいたテラも黙ってはいないはず。あいつと手を組めればアクアをやり込めるはずだ」
「だと良いけど。でもなんでレガリアを……」
「それは知らん。ただ、アクアは昔から『完璧』を求めていた女だ。こんな大事を起こすくらいだ、ずっと前から計画していたんだろうさ」
そこでフェリクスはふと思い出す。
以前、アクアがテラに消される直前の話。セラフィと対話していた彼女が言っていた気がする。「この世界をより美しく、理想的にしたい」と。
それこそが彼女の求める『完璧』なのだろうが、その形がどんなものであるかは定かではない。
「気を付けろ、シャルロット。あいつは俺たちの中で唯一、女神様の統治に意見したことのある女だ。姿の似通ったお前に対して何をするか分からないぞ」
ビエントからの忠告にシャルロットはしっかりと頷く。
薄く、しかして力強い微笑みを湛えて。
「大丈夫。私、負けないよ」
***
水で作られた結界の中は、まるでおとぎ話に登場する美しさがあった。しかし、生き物が何一つ居ない寂しさもまた、同時に存在していた。
シャルロットが立つ道は微かにキラキラと輝くタイルが敷き詰められ、脇に青白い木々を並ばせて城の門へと続いている。一歩踏み出せば涼やかな足音が耳に響いた。
元の『神のゆりかご』も巨大ながら見た目だけは美しい城だった。しかし、今シャルロットの目の前にある城はまるで別物だ。
氷の城、と表現しても差し支えない蒼の威容。どこにも太陽はないというのに光を反射して輝いている。少し後ろでうげぇ、とビエントが表情を引きつらせる気配。どうやら趣味ではないらしい。
迷わず歩みを進めれば、透明感のある門がひとりでに開く。耳障りな音はなく、無音といっても差し支えないほど静かにそうなる様は神秘的でもあり不気味そのものだ。
その奥に広がる空間は、城と言うよりはまるで温室とでも表現するべき姿であった。蒼で構成された植物がそれはそれは見事な花を咲かせ、広い空間を飾っている。何よりも眼を惹くのは最奥に位置する蔓薔薇の壁か。
棘にまみれた蔓に絡みつかれた一人の神様。刺さった棘が白磁の肌を傷つけ、蒼の世界に赤を生み出している。その髪が白金であることから、彼がレガリアであるらしいことが窺える。ただ、その血赤の瞳は瞼に閉ざされて見えない。
「レガリア……」
今すぐ駆け寄って解放してやりたいところだが、それは叶わない。
真上から黒色が降ってきたのだ。
青い花を散らして地に激突した彼は、うめき声を上げつつ体を起こす。
「大精霊テラ」
シャルロットが彼の名を呼べば、黒髪の彼はハッとした表情を浮かべ振り返る。その際、一瞬だけ髪の隙間から見えた右目の傷になんだか苦い思いがこみ上げた。
テラはシャルロットたちの姿を認めると、自嘲するように口の端を歪ませた。そのまま無言で上へ顔を向けた彼に倣えば、そこにはやはりと言うべきか――。
青白い肌に豪奢なドレス。胸元に埋まった青いコアと長い耳。流れる水の如き髪を誇るのは、どこからどう見ても大精霊アクアだ。
青い口紅が艶やかな弧を描く。
「あら、新しいお客様。少々お待ちくださいね、今は最初のお客様をおもてなししている最中ですから」
「おもてなしなんて要らない。早く彼を解放して」
丁寧な言葉をばっさりと切り捨て、シャルロットはアクアを睨みあげる。
その瞬間、アクアの肩がぴくりと震え、鋭い瞳に感情が宿る。それは憎悪のようであり、同時に嫉妬のようでもあった。
テラへのものではない。ビエントへのものでもない。ましてやフェリクスやソフィアへ向けられたものではない。
ただ一人、シャルロットだけに向けられた、真っ直ぐ過ぎる負の感情。
「あぁ、あぁ、予想はしていたことですが腹立たしい。今すぐその手足をちぎり取ってその眼にわたくしの世界を見せつけてやりたいくらいですわ」
「……ねぇ、貴女ってもしかしなくともそうでしょう。私が声をかけただけでその反応」
一瞬にして豹変したアクアに向けて疑問符が浮かぶ。
聞いていた話によると彼女の態度は常に変わらず、テラに消される寸前以外は傲慢かつ優美であることを保っていたという。それが何故今になって表情を崩し、たった一人に激情を向けられるのか。
自分が女神シュミネの縁者であり、その力と想いを受け継いだからだろうか。なんとなく、分かってしまう。
「女神様のこと、苦手なんだ」
そう言えば、と思い出す。
フェリクスやソフィアと違い、シャルロットがこうしてアクアと対峙するのは初めてだった。一度だけ干渉されたことはあるものの、直接相対することはなかったのだ。
それも彼女がシュミネと瓜二つであるこの顔を見たくなかったからなのだとふと思う。女神シュミネが姿を消す前も、きっと嫌われていることを自覚していたのかもしれない。
だとしても母は愛する我が子を愛していた。しかし、シャルロットは女神ではない。
いくら受け継いだからといって、思想まで完璧にリンクするわけではない。
「でもそんなの関係ない。私は私の大切な人を取り戻すだけ。たとえ貴女がどれだけ拒もうと、そんなの聞いてあげないんだから」
目には目を。
歯には歯を。
傲慢には傲慢を。
「――ソフィア」
我に返った瞬間、シャルロットは転移の力を行使した。焦っていたせいもあり、具体的な座標は特に指定しなかった。頭の中は自分を突き飛ばしたレガリア――レイのことで溢れかえっている。だからこそ、レイと一番近い存在だったソフィアの元へ転移したのだろう。
ソフィアの周りには誰もいない。
ちら、と周囲を見渡して気がつく異変。
目の前に聳え立つ青い壁。
「これは……」
「さっき現れたのよ。良く分からないけれど、嫌な予感だけはするわね。――ねぇ、レガリアとはどうなったの? その様子だと負けたわけではないようだけど」
「うん。上手くいきそうだったんだけど……突然、水……なのかな? 変な物体が襲いかかってきてね。彼は私を庇って、多分連れ去られた」
「連れ去られた? じゃあ」
「ここにいると思う。あの水と同じ気配がするから」
そう、とソフィアは呟く。
「ひとまず、貴女が無事で良かったわ」
「ありがとう。でも、これからだね」
「そうね」
そこへふと風が吹く。優しくもどこか張り詰めた雰囲気のある、緑の風。
振り返れば風の主である大精霊と、彼と壮大な約束を果たしたこの国の若き王がいる。
「来たわね。ミセリアは?」
「彼女は城に帰らせた。万が一に備えて」
「……怒ったんじゃない?」
「次に帰ったらまた刺されるかも」
向けられた心配に対してけろっと笑っているフェリクスだが、言っていることは物騒である。
はは、と苦笑をしてから気持ちを切り替えて水の結界を見上げた。
「最初に言っておくが、この現象はアクアが引き起こしたものだ」
「アクアって……あの大精霊の? テラに消されたと聞いたけど」
「それがどうやらこいつを利用して生きていたみたいでな。一年隠れ続けて、何故か今動き出したというわけ。流石の俺も非活性状態になられると感知出来ねぇ、それで完全に頭から抜けてたわ」
「じゃあアクアがレガリアを……レイを連れ去ったんだ」
気付けなくてごめん、とフェリクスが肩を落とす。それを止めさせて、シャルロットは簡単に経緯を説明した。
「そうか。――ただ、生きていたとは言っても俺やテラが死んだと勘違いするくらいには力を削がれているはずだ。それに、レガリアに手を出したなら同盟を組んでいたテラも黙ってはいないはず。あいつと手を組めればアクアをやり込めるはずだ」
「だと良いけど。でもなんでレガリアを……」
「それは知らん。ただ、アクアは昔から『完璧』を求めていた女だ。こんな大事を起こすくらいだ、ずっと前から計画していたんだろうさ」
そこでフェリクスはふと思い出す。
以前、アクアがテラに消される直前の話。セラフィと対話していた彼女が言っていた気がする。「この世界をより美しく、理想的にしたい」と。
それこそが彼女の求める『完璧』なのだろうが、その形がどんなものであるかは定かではない。
「気を付けろ、シャルロット。あいつは俺たちの中で唯一、女神様の統治に意見したことのある女だ。姿の似通ったお前に対して何をするか分からないぞ」
ビエントからの忠告にシャルロットはしっかりと頷く。
薄く、しかして力強い微笑みを湛えて。
「大丈夫。私、負けないよ」
***
水で作られた結界の中は、まるでおとぎ話に登場する美しさがあった。しかし、生き物が何一つ居ない寂しさもまた、同時に存在していた。
シャルロットが立つ道は微かにキラキラと輝くタイルが敷き詰められ、脇に青白い木々を並ばせて城の門へと続いている。一歩踏み出せば涼やかな足音が耳に響いた。
元の『神のゆりかご』も巨大ながら見た目だけは美しい城だった。しかし、今シャルロットの目の前にある城はまるで別物だ。
氷の城、と表現しても差し支えない蒼の威容。どこにも太陽はないというのに光を反射して輝いている。少し後ろでうげぇ、とビエントが表情を引きつらせる気配。どうやら趣味ではないらしい。
迷わず歩みを進めれば、透明感のある門がひとりでに開く。耳障りな音はなく、無音といっても差し支えないほど静かにそうなる様は神秘的でもあり不気味そのものだ。
その奥に広がる空間は、城と言うよりはまるで温室とでも表現するべき姿であった。蒼で構成された植物がそれはそれは見事な花を咲かせ、広い空間を飾っている。何よりも眼を惹くのは最奥に位置する蔓薔薇の壁か。
棘にまみれた蔓に絡みつかれた一人の神様。刺さった棘が白磁の肌を傷つけ、蒼の世界に赤を生み出している。その髪が白金であることから、彼がレガリアであるらしいことが窺える。ただ、その血赤の瞳は瞼に閉ざされて見えない。
「レガリア……」
今すぐ駆け寄って解放してやりたいところだが、それは叶わない。
真上から黒色が降ってきたのだ。
青い花を散らして地に激突した彼は、うめき声を上げつつ体を起こす。
「大精霊テラ」
シャルロットが彼の名を呼べば、黒髪の彼はハッとした表情を浮かべ振り返る。その際、一瞬だけ髪の隙間から見えた右目の傷になんだか苦い思いがこみ上げた。
テラはシャルロットたちの姿を認めると、自嘲するように口の端を歪ませた。そのまま無言で上へ顔を向けた彼に倣えば、そこにはやはりと言うべきか――。
青白い肌に豪奢なドレス。胸元に埋まった青いコアと長い耳。流れる水の如き髪を誇るのは、どこからどう見ても大精霊アクアだ。
青い口紅が艶やかな弧を描く。
「あら、新しいお客様。少々お待ちくださいね、今は最初のお客様をおもてなししている最中ですから」
「おもてなしなんて要らない。早く彼を解放して」
丁寧な言葉をばっさりと切り捨て、シャルロットはアクアを睨みあげる。
その瞬間、アクアの肩がぴくりと震え、鋭い瞳に感情が宿る。それは憎悪のようであり、同時に嫉妬のようでもあった。
テラへのものではない。ビエントへのものでもない。ましてやフェリクスやソフィアへ向けられたものではない。
ただ一人、シャルロットだけに向けられた、真っ直ぐ過ぎる負の感情。
「あぁ、あぁ、予想はしていたことですが腹立たしい。今すぐその手足をちぎり取ってその眼にわたくしの世界を見せつけてやりたいくらいですわ」
「……ねぇ、貴女ってもしかしなくともそうでしょう。私が声をかけただけでその反応」
一瞬にして豹変したアクアに向けて疑問符が浮かぶ。
聞いていた話によると彼女の態度は常に変わらず、テラに消される寸前以外は傲慢かつ優美であることを保っていたという。それが何故今になって表情を崩し、たった一人に激情を向けられるのか。
自分が女神シュミネの縁者であり、その力と想いを受け継いだからだろうか。なんとなく、分かってしまう。
「女神様のこと、苦手なんだ」
そう言えば、と思い出す。
フェリクスやソフィアと違い、シャルロットがこうしてアクアと対峙するのは初めてだった。一度だけ干渉されたことはあるものの、直接相対することはなかったのだ。
それも彼女がシュミネと瓜二つであるこの顔を見たくなかったからなのだとふと思う。女神シュミネが姿を消す前も、きっと嫌われていることを自覚していたのかもしれない。
だとしても母は愛する我が子を愛していた。しかし、シャルロットは女神ではない。
いくら受け継いだからといって、思想まで完璧にリンクするわけではない。
「でもそんなの関係ない。私は私の大切な人を取り戻すだけ。たとえ貴女がどれだけ拒もうと、そんなの聞いてあげないんだから」
目には目を。
歯には歯を。
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