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3章 寂しがり屋のかみさま
13 女神
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まるで時が止まったかのようだ。
青色の世界に赤い血が飛び散り、鏡のように磨き抜かれた床に花を咲かせる。
その様子を見てしまったシャルロットは目を見開き、ビエントの腕から飛び降りる。後ろから制止する声が聞こえたが、なりふり構っていられない。
服に血が付くのも厭わず青年の体を抱き起こす。右半身のほとんどを食われて悲惨な有様だったが、淡い光と共に少しずつ再生していた。それを見て察する。レガリアは永久の花の力で死なないことを分かっていて自ら食われたのだと。
いったい、なんのために。
「――なんてことをするの!?」
悲鳴に近い怒声。シャルロットは目尻に涙を浮かべつつ馬鹿なことをしでかした仇に怒りと心配の気持ちをぶつける。
いくら死なないからと言っても血を流しすぎた体は冷たく、顔色も酷く悪い。そんな状態でなおレガリアは憎たらしいほど余裕綽々とした笑みを浮かべる。
「ふ……癪だけど、こうするのが、一番効率的で、効果的だと、おも、ったから」
「何をわけ分からないことを」
「良い、から。覚悟して」
レガリアは血濡れの左腕を持ち上げ、シャルロットの後頭部に手を差し込む。そのままぐっと体を起こすように力を入れれば、気を遣った彼女が上半身を屈ませる。瞬間、左手に更に力を込めてシャルロットの頭を引き寄せた。
刹那、触れ合う唇。
驚きに僅かに開いてしまったシャルロットの口に、鉄のような味が広がる。
それと同時に全身に熱が走った。熱い何かが血管の中を駆け巡っているようだ。
一体どれほどの時間が経ったのか、ようやく唇を離したレガリアは蒼の滲む赤色の瞳を細めた。まるで太陽を見あげるように、眩しそうに。
「特別に、僕の力をあげる。だから、あの調子に乗ってる女をどうにかしてくれ」
「……」
「じゃないと、あの子が安心して暮らせない、から……」
「……分かった。それに関してだけは同意する」
セピア色の混ざる白金の髪を一度撫で、シャルロットはレガリアの――レイの体を横たえた。瞬間、瞼を閉じた彼に底知れぬ不安を抱くが、その胸は呼吸をしている証に上下していた。
「決着をつける。この哀しみの連鎖に」
ふわりと優しい風が吹く。淡く白い光が少女の体を包み込み――血にまみれた髪と衣服を新たなものへと変貌させた。
緩く結っていた白金の髪が解き放たれ、さらさらと揺れる。喪服の如き黒衣は金の意匠が施された純白のドレスに。隣の世界の大神子が力を貸してくれた影響か、真っ赤な宝石がその薄い胸の中心を彩っている。
手を伸ばせば、そこには金色の長杖が。
全身を淡く輝かせ、意志の強い翡翠の眼差しを敵に向ける様は女神と呼ぶに相応しい。
一連の流れを見ていたビエント、そしてテラは知らず知らずのうちに涙を流す。愛する世界を想って消えた母を彷彿とさせる姿に崩れ落ちずにいられない。シュミネとシャルロットは違う存在だと言うのに。
フェリクスとソフィアも目を奪われていた。体を流れる神子の血がそうさせるのか、畏怖の念が泉のように沸き起こる。
ただ、立ちすくんでいるわけにもいかないと彼らは女神の元へと駆けつける。
そして、隣の世界の大神子を捕食してその血を取り込み、女神に成り代わろうとしたアクアは――。
水の鮫から転じた繭の中、憎々しげに白金の女神を睨み付けた。
その姿は先ほどまでの貴婦人の如きものでなく、赤黒い――まるで伝説の海、さらに底に住まう怪物魚のような有様に成り果てていた。青白い肌には赤黒い鱗が浮かび、ヒレが生え、瞳も濁り……美しい、というよりは恐怖を感じさせる。
恐らくアクア自身が想像している“完璧”からは酷くかけ離れた、そんなおぞましい化け物がそこにいた。
「こんな、はずじゃ」
「貴女じゃ女神にはなれない。それが、嫉妬に突き動かされた貴女への……理からの代償」
空中に黄金の花が咲き乱れる。精緻な細工のようなそれはそれぞれが刃の鋭利さを持つ。
その光に輪郭を縁取られつつ、白金の女神は口を開く。
「きっと貴女もこの世界を愛していたのでしょう。だから次は」
花びらが散り、花弁の一枚一枚が醜い女神へ向けられる。
赤黒い唇が大きく開かれ、化け物の如き咆哮が放たれる。同時に嫉妬から生まれた瘴気の嵐と憎しみから生まれた水の刃が次々と生成されては飛び込んでくる。
しかし、そんなものは効かない。
慈悲の眼差しとともに、鉄槌が下される。
「素直に愛を向けられるようになりますように」
強い光が辺りを覆い尽くす。
目も開けていられないそれにその場に居た全員が思わず目を逸らした。
永遠にも感じられた静寂。
フェリクスとソフィアが揃って瞼を開けた時にはもう全てが終わっていた。
青い城はボロボロと崩れ去り、瓦礫は宙で光の粒となって消えていく。美しかった花々も同様に融けるように消えていく。
少しだけ明るくなったように見える夜の空が覗き、月明かりに照らされた女神と――その腕に抱かれた赤ん坊を見た時、二人は確信した。
厄災は祓われ、決着がついたのだと。
哀しみの連鎖は、断ち切られたのだと。
***
抱いている赤ん坊はスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。その水色の髪を撫で、シャルロットは立ち尽くしている大精霊たちを振り返った。
呆然とした表情を浮かべている二柱に向けて一歩、二歩と歩み寄ると赤ん坊を差し出す。
「はい。これからは貴方たちが面倒をみてあげて」
「……こいつは」
「アクア――正確には記憶のリセットされた生まれ変わり、みたいな? 私もよく分からないの。無我夢中で色々やっちゃったから……」
えへ、と困ったように笑うシャルロットの腕からテラが赤ん坊を取り上げる。
「……」
「大精霊テラ。ビエントもそうだけど、貴方は大きな過ちを犯した。そのせいでこんな大きな事態を招くことになった。だから、女神様の代理人としてのお願いです。彼女を真っ直ぐに育ててください。今度は負の感情に歪んでしまわないように」
「……この俺が、そんなこと」
「それが貴方への罰です。――なんて、女神様なら言うんだろうね。そんな気がした。あと、もうひとつ」
自由になった片腕を伸ばし、テラの前髪を梳く。
醜い傷。
「どんな理由であれ、今までレイを守ってくれてありがとう」
テラは切なげに眉根を寄せる。
敬愛する女神シュミネとそっくりな……母の声に動揺が隠せずにいる。
「……すまなかった」
「うん。ビエントはもうこれからやること決まっているよね?」
「あぁ」
次いでビエントに声をかけると、彼は軽く頷いてちらりと横を見やる。心配そうに様子を窺っているフェリクスを指さし、ニィといつもの意地悪げな笑みを見せた。
「あいつとの大層な約束があるからな。ま、その片手間にテラの監督でもしてやるよ」
「ビエントが監督って。全然ガラじゃない……」
「何回でも言うがホント性格変わったよなお前」
苦笑いをしたビエントを軽くあしらってシャルロットは精霊たちに背を向ける。
今やるべきことは、あとひとつ。
愛する彼の、目覚めを待つこと。
青色の世界に赤い血が飛び散り、鏡のように磨き抜かれた床に花を咲かせる。
その様子を見てしまったシャルロットは目を見開き、ビエントの腕から飛び降りる。後ろから制止する声が聞こえたが、なりふり構っていられない。
服に血が付くのも厭わず青年の体を抱き起こす。右半身のほとんどを食われて悲惨な有様だったが、淡い光と共に少しずつ再生していた。それを見て察する。レガリアは永久の花の力で死なないことを分かっていて自ら食われたのだと。
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「――なんてことをするの!?」
悲鳴に近い怒声。シャルロットは目尻に涙を浮かべつつ馬鹿なことをしでかした仇に怒りと心配の気持ちをぶつける。
いくら死なないからと言っても血を流しすぎた体は冷たく、顔色も酷く悪い。そんな状態でなおレガリアは憎たらしいほど余裕綽々とした笑みを浮かべる。
「ふ……癪だけど、こうするのが、一番効率的で、効果的だと、おも、ったから」
「何をわけ分からないことを」
「良い、から。覚悟して」
レガリアは血濡れの左腕を持ち上げ、シャルロットの後頭部に手を差し込む。そのままぐっと体を起こすように力を入れれば、気を遣った彼女が上半身を屈ませる。瞬間、左手に更に力を込めてシャルロットの頭を引き寄せた。
刹那、触れ合う唇。
驚きに僅かに開いてしまったシャルロットの口に、鉄のような味が広がる。
それと同時に全身に熱が走った。熱い何かが血管の中を駆け巡っているようだ。
一体どれほどの時間が経ったのか、ようやく唇を離したレガリアは蒼の滲む赤色の瞳を細めた。まるで太陽を見あげるように、眩しそうに。
「特別に、僕の力をあげる。だから、あの調子に乗ってる女をどうにかしてくれ」
「……」
「じゃないと、あの子が安心して暮らせない、から……」
「……分かった。それに関してだけは同意する」
セピア色の混ざる白金の髪を一度撫で、シャルロットはレガリアの――レイの体を横たえた。瞬間、瞼を閉じた彼に底知れぬ不安を抱くが、その胸は呼吸をしている証に上下していた。
「決着をつける。この哀しみの連鎖に」
ふわりと優しい風が吹く。淡く白い光が少女の体を包み込み――血にまみれた髪と衣服を新たなものへと変貌させた。
緩く結っていた白金の髪が解き放たれ、さらさらと揺れる。喪服の如き黒衣は金の意匠が施された純白のドレスに。隣の世界の大神子が力を貸してくれた影響か、真っ赤な宝石がその薄い胸の中心を彩っている。
手を伸ばせば、そこには金色の長杖が。
全身を淡く輝かせ、意志の強い翡翠の眼差しを敵に向ける様は女神と呼ぶに相応しい。
一連の流れを見ていたビエント、そしてテラは知らず知らずのうちに涙を流す。愛する世界を想って消えた母を彷彿とさせる姿に崩れ落ちずにいられない。シュミネとシャルロットは違う存在だと言うのに。
フェリクスとソフィアも目を奪われていた。体を流れる神子の血がそうさせるのか、畏怖の念が泉のように沸き起こる。
ただ、立ちすくんでいるわけにもいかないと彼らは女神の元へと駆けつける。
そして、隣の世界の大神子を捕食してその血を取り込み、女神に成り代わろうとしたアクアは――。
水の鮫から転じた繭の中、憎々しげに白金の女神を睨み付けた。
その姿は先ほどまでの貴婦人の如きものでなく、赤黒い――まるで伝説の海、さらに底に住まう怪物魚のような有様に成り果てていた。青白い肌には赤黒い鱗が浮かび、ヒレが生え、瞳も濁り……美しい、というよりは恐怖を感じさせる。
恐らくアクア自身が想像している“完璧”からは酷くかけ離れた、そんなおぞましい化け物がそこにいた。
「こんな、はずじゃ」
「貴女じゃ女神にはなれない。それが、嫉妬に突き動かされた貴女への……理からの代償」
空中に黄金の花が咲き乱れる。精緻な細工のようなそれはそれぞれが刃の鋭利さを持つ。
その光に輪郭を縁取られつつ、白金の女神は口を開く。
「きっと貴女もこの世界を愛していたのでしょう。だから次は」
花びらが散り、花弁の一枚一枚が醜い女神へ向けられる。
赤黒い唇が大きく開かれ、化け物の如き咆哮が放たれる。同時に嫉妬から生まれた瘴気の嵐と憎しみから生まれた水の刃が次々と生成されては飛び込んでくる。
しかし、そんなものは効かない。
慈悲の眼差しとともに、鉄槌が下される。
「素直に愛を向けられるようになりますように」
強い光が辺りを覆い尽くす。
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永遠にも感じられた静寂。
フェリクスとソフィアが揃って瞼を開けた時にはもう全てが終わっていた。
青い城はボロボロと崩れ去り、瓦礫は宙で光の粒となって消えていく。美しかった花々も同様に融けるように消えていく。
少しだけ明るくなったように見える夜の空が覗き、月明かりに照らされた女神と――その腕に抱かれた赤ん坊を見た時、二人は確信した。
厄災は祓われ、決着がついたのだと。
哀しみの連鎖は、断ち切られたのだと。
***
抱いている赤ん坊はスヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。その水色の髪を撫で、シャルロットは立ち尽くしている大精霊たちを振り返った。
呆然とした表情を浮かべている二柱に向けて一歩、二歩と歩み寄ると赤ん坊を差し出す。
「はい。これからは貴方たちが面倒をみてあげて」
「……こいつは」
「アクア――正確には記憶のリセットされた生まれ変わり、みたいな? 私もよく分からないの。無我夢中で色々やっちゃったから……」
えへ、と困ったように笑うシャルロットの腕からテラが赤ん坊を取り上げる。
「……」
「大精霊テラ。ビエントもそうだけど、貴方は大きな過ちを犯した。そのせいでこんな大きな事態を招くことになった。だから、女神様の代理人としてのお願いです。彼女を真っ直ぐに育ててください。今度は負の感情に歪んでしまわないように」
「……この俺が、そんなこと」
「それが貴方への罰です。――なんて、女神様なら言うんだろうね。そんな気がした。あと、もうひとつ」
自由になった片腕を伸ばし、テラの前髪を梳く。
醜い傷。
「どんな理由であれ、今までレイを守ってくれてありがとう」
テラは切なげに眉根を寄せる。
敬愛する女神シュミネとそっくりな……母の声に動揺が隠せずにいる。
「……すまなかった」
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「あぁ」
次いでビエントに声をかけると、彼は軽く頷いてちらりと横を見やる。心配そうに様子を窺っているフェリクスを指さし、ニィといつもの意地悪げな笑みを見せた。
「あいつとの大層な約束があるからな。ま、その片手間にテラの監督でもしてやるよ」
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