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夜明けの幻想曲 3章 救国の旗手
0 救いを待つ者
しおりを挟むぺらりとページを捲る。微かな紙の音を何度聞いたことだろう。
彼女は細かに書かれた文字を読み進める。何度も何度も読んだ本は少しばかり汚れていた。分厚い本ではあるが、もう内容は頭にたたき込まれている。
その物語は、可哀想なお姫様が王子様に助けてもらうという王道のもの。彼女はその物語を毎日毎日繰り返し読んでいた。決まった時間になると訪れる侍女や弟の声に耳を傾けることもせず、ひたすら本を読んでいる。
ある日、彼女は気がついた。毎日のように来ていた弟が、いつの間にか来なくなっている。たった一人の侍女が食事を運んだり掃除をしたりしているが、部屋を見回しても自分と同じ髪と目を持つ弟の姿はない。
「……死んだのかしら」
ついこぼれてしまった小さなつぶやきを、侍女は聞き逃すことなく捉えた。侍女は掃除をしていた手を止めて、彼女を見つめた。
「殿下なら、今はラエティティア王国でお仕事をされているそうですよ。姫様に会えないことを心から残念に思って――」
彼女は視線を本へ落とす。
あの弟が何も言わずに遠出することはないはずだ。大方なにかに巻き込まれてしまったのだろう、と考えて再び物語の世界へ没頭していく。
やがて侍女が去り、天井近くに据えられた小さな窓から差し込む光もなくなってきた頃。本を読むために小さなランプに明かりを付けようとした彼女は、ベッドの脇に誰かが立っていることに気がついた。
昏い闇を纏った存在に彼女は目を向ける。
そして、微笑んだ。
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