思い出した

春夏

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「壮に会いたい」「…連絡があったことを壮には言ってないんです。待ち合わせをここにしたのは、今日が壮の通院日だから」真が頭を下げる。「壮に会わせてほしい。頼む。壮がいないと俺は生きていけないんだ」充は念を押す。「壮があなたを拒んでも?」「…それでもいい。いや、よくないけど…でもそれでも会いたいんだ」「…そろそろ診察が終わる時間です」立ち上がった充が深く腰を折る。「お願いします。壮を元に戻して。壮の声が聞きたいんです」

駐車場の隅に駐められた充の車の側で2人を待つ。壮に会うのが怖い。俺のせいで壮を苦しめた。壮に合わせる顔がない。…壮の声で思う存分詰ってくれ…

「!壮!」充の声が響く。バッと振り向けば充に掴まれた腕を振り解こうともがく壮。俺の後ろ姿を壮が忘れるはずがない。壮の口が動く。いやだ、だめ、いやだ。聞こえない声が真の耳に伝わる。「…壮。迎えが遅くなってごめん。家に帰ろう。俺達の家に」座り込んで泣き出した壮のかすかな泣き声が聞こえてきて…充が「壮、言えるだろ。サヨナラ以外の言葉」と壮の背中を撫でた。

「……むかえが…おそいよ」久しぶりに出る声は掠れて聞き取りにくい。充の目から涙が溢れ「…まだあるだろ」と壮を促す。「…まことがだいすき」ゆっくりと、しかしはっきりと聞こえた声に真の体が震えた。
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