始発バスは異世界行き

春夏

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4.名付け

4.おれのなまえ

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うつらうつらと日々を過ごす。
寝ても寝てもまだ眠い。目を覚ますたびに体力を戻すための薬湯と少しばかりの食事をとって、また眠る。
俺の意識がこの体に馴染んできたのか、子どものように周りに甘えてしまっている。
気を張っていないと話し方さえ舌足らずで恥ずかしい。
この眠気は体力がないのもあるだろうけれど、きっと新しい人生をちゃんと子どもから始められるように融合させているんだろう。
目が覚めれば…新しい人生が…。

「お目覚めですか?」
「…ん…?ライブ…?…ん!おきた!おなかすいた!」
「……良かった。“ちゃんと”起きられたようですね」
「ん!あのね、ライブのこともリスターのこともおぼえてるよ!まえのこともわかってるけど、でも、あたらしくなった!」
「…ええ。それでいいんです。…おはよう」
「おはよう!」

ちゃんとこどもになったおれはみんなにもあいさつ。
「めがさめました!いっぱいありがとう」
「ずっと寝てばっかりだったからよ、心配したぜ」
「もうだいじょうぶ。ごめんねリスター」
「いいってことよ。あぁー!むちゃくちゃ可愛がりてぇ!」
「!!くるしい!!どいてよ!!」

「…フフ、愛し子様、私達のことも覚えてらっしゃいますか?」
「もちろん!いえにいさせてくれてありがとう。げんきになりました。あ!なまえ!おれのなまえは?!」

「それはもう、たくさん考えましたよ。気に入ってくださるといいんですが」
「…エデル。高貴で優しい、そんな意味の言葉から“エデル”。いかがですか」

俺の名は優貴。ふと戻る思考。俺がこの人生で大人になるまで、こんなふうに“以前の俺”が出てくることになったのだろうな。そのために必要な眠りだったんだ。

「おれはエデル、エデルになったんだ!おれ、いとしごじゃないよ、エデルだよ!」
「…そうだね。エデル、これからもよろしく」
「さぁ、お食事にしましょう。いっぱい食べて大きくなるのよ」

ライブが右手を、リスターが左手を。
高い位置で繋がれる両手に守られて、エデルの人生が始まった。
実亜を見つける。実亜が男だったら好きになったかもな、と毎朝のバスで思ってたっけ。優貴の思考が頭を掠めた。

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