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7.5年後
2.離れるつもりはない
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「エデルも大人になるんだなぁ」
ふと口をついて出た、オレらしくもない感傷的な言葉に、隣のライブが笑った。
「そうだね……僕らもずいぶん長い時間を過ごしたもんだ」
「……言っとくけどよ、まだ離れるつもりねえからな」
あの時、オレは優貴を食った。見慣れない形の…そう、異世界のバスの中に、まだ人間がいることはわかってた。コイツを食ったらアイツらも、そう思ってた。
「頼む、俺だけで満足してくれ!あの人達を見逃してくれ!」
叫ぶ優貴を、オレは食った。
いきなり頭に響く情けない声。
『そうですよぉ、あの人達まで食べられてしまったら、ワタシまた怒られます。やめてくださいよ』
『いいですか?ワタシこれでもこの世界の神ですよ。アナタもワタシの世界の大事な子ですから、こんなことでアナタを消したりしたくないんですよ』
『アナタ、自分が力を得たことに気づいてますか?今回はそれでいい、ってことにしませんか?』
異世界から来た優貴を食ったオレは、ただのドラゴンじゃなくなった。リントヴルムになっちまった。永い永い時を生きるリントヴルムに。
フラフラ彷徨うだけのつまらない日々。なんとなく立ちよったあの場所で、オレはフェンリルに会った。向けられる激しい怒りに応戦するうちに、久しぶりに生きていることを実感した。
「……食っちまって悪かった」
「……わかってる。しかたなかったんだ」
こうしてオレの永い時に相棒ができた。
実亜を探す旅を続けるうちに、オレ達は人化を覚えた。
オレ達は当然のようにお互いを求めた。
コイツがいれば、生きていられる。
永い生の空しさを忘れていられる。
優貴を探してエデルに会って。
リジュリー達がミアを連れてきてくれて。
旅の目的は果たしたけどな。
大人になっていくエデルとミア。
オレとライブが2人の側にいたっていいだろ?
「……僕だって離れるつもりなんかないさ」
ここんとこご無沙汰だったじゃねぇか。
ちょっとどこかの街に飛んで、宴の続きを2人でするのも悪くねぇよな。
ふと口をついて出た、オレらしくもない感傷的な言葉に、隣のライブが笑った。
「そうだね……僕らもずいぶん長い時間を過ごしたもんだ」
「……言っとくけどよ、まだ離れるつもりねえからな」
あの時、オレは優貴を食った。見慣れない形の…そう、異世界のバスの中に、まだ人間がいることはわかってた。コイツを食ったらアイツらも、そう思ってた。
「頼む、俺だけで満足してくれ!あの人達を見逃してくれ!」
叫ぶ優貴を、オレは食った。
いきなり頭に響く情けない声。
『そうですよぉ、あの人達まで食べられてしまったら、ワタシまた怒られます。やめてくださいよ』
『いいですか?ワタシこれでもこの世界の神ですよ。アナタもワタシの世界の大事な子ですから、こんなことでアナタを消したりしたくないんですよ』
『アナタ、自分が力を得たことに気づいてますか?今回はそれでいい、ってことにしませんか?』
異世界から来た優貴を食ったオレは、ただのドラゴンじゃなくなった。リントヴルムになっちまった。永い永い時を生きるリントヴルムに。
フラフラ彷徨うだけのつまらない日々。なんとなく立ちよったあの場所で、オレはフェンリルに会った。向けられる激しい怒りに応戦するうちに、久しぶりに生きていることを実感した。
「……食っちまって悪かった」
「……わかってる。しかたなかったんだ」
こうしてオレの永い時に相棒ができた。
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オレ達は当然のようにお互いを求めた。
コイツがいれば、生きていられる。
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優貴を探してエデルに会って。
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旅の目的は果たしたけどな。
大人になっていくエデルとミア。
オレとライブが2人の側にいたっていいだろ?
「……僕だって離れるつもりなんかないさ」
ここんとこご無沙汰だったじゃねぇか。
ちょっとどこかの街に飛んで、宴の続きを2人でするのも悪くねぇよな。
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