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黒炎、形を得る
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保健室明けの翌朝。
昨夜のろうそく訓練の負傷は、ユナの癒し魔法によって見た目にはほとんど治っていた。だが、右手に残る鈍い痛みと、胸の奥で燻るような黒炎の残響は消えていない。
バクは廊下を一人、食堂へ向かっていた。足取りが重いのは、疲労のせいだけではない。
(昨日の黒炎──あれはもう、最初から手に負える代物じゃなかった)
そんな思考を断ち切るように、声が背後から飛んできた。
「バク君!」
廊下の角から駆け寄ってきたのは、ユナ・フィオーレ。制服ではなく、白のラフシャツに淡い青のスカート姿。その胸元が揺れるたびに、バクは視線の置き場に困った。
「お、おはよう。今日も早いな……」
「うん!ね、ちょっと来て。会わせたい子がいるの」
そう言って彼女は手を伸ばしてきた。自然と指が触れそうな距離まで来て、バクは言葉を失った。
「昨日話したでしょ? エマちゃん。わたしのルームメイトで、炎魔法のスペシャリストなんだ」
≪炎魔法の専門家か。ほう……興味深いな≫
脳内にネロの声が響いた。
≪お前の暴走する黒炎を見て、どう反応するか。楽しみではある≫
ユナに導かれるまま、バクは食堂のテラス席へ向かう。
朝日が差し込むその片隅で、ひときわエネルギッシュな雰囲気を放つ少女が、肉まんを頬張っていた。
赤みがかった短髪を跳ね上げ、制服を少し着崩したその姿は、どこか野性的で自由な空気を纏っている。手には炭酸の缶。シュッという音とともに開けると、勢いよく流し込んだ。
「エマちゃん、紹介するね。バク・ノヴァリス君」
「おおっ!」
肉まんを口に突っ込んだまま振り返った彼女までは、満面の笑みでバクに手を差し出した。
「君が噂の黒炎使いか!よろしくね!」
「あ、ああ……よろしく」
差し出した手に、容赦ない握力が食い込んだ。
思わず顔が歪む。指が軋み、骨ごと握り潰されそうな勢いだった。
「聞いたよ!昨日の訓練で大暴発したって? どんな感じだった?痛かった?血は何リットル出た?」
「え、えっと……」
「威力は?射程は?持続時間は?魔力消費量は!?あと気分的には何点くらい!?」
「落ち着いてエマちゃん」
ユナが慌てて割って入る。
「この子、炎魔法の話になると止まらないの」
「黒炎ってどうやって出すの?火花が黒いときって、温度は高い?それとも性質の問題?」
「いや、あの……とりあえず自己紹介とか……」
「あっ、そうだった! ごめんごめん!」
エマは肉まんを一口でかじると、にかっと笑った。
「エマ・クルセア。Cランクだけど、炎系魔術にはちょっと自信あるんだ」
「……バク・ノヴァリス。魔力制御が苦手で、いま修行中」
ようやく握手から解放された手を引き戻し、バクは静かに息を吐いた。
痺れるような痛みが指先に残っている。手を軽く振りながら、感覚を取り戻すように開閉を繰り返す。
「へぇー! 暴走型か! わたしも昔そうだったよ!」
「今もだろ」
軽口とともに現れたのは、アキ・ソラリスだった。
「なんか似てんな、お前ら。爆発力とか、脳筋っぽいとことか」
「だれが脳筋だってーの!」
エマがすかさず詰め寄り、指を突きつけるようにアキに迫る。
だがアキは、慣れた様子で身体をひねり、ひょいと一歩かわした。
「そういやエマ、お前いつの間にCランクに上がったんだよ。前はDじゃなかったっけ?」
「へへーん、先週の試験で昇格!火柱で標的全部吹き飛ばしたら、合格だった!」
「うっわ、まじかよ……完全に先越された……!」
アキが頭をかきむしって悔しそうに唸る。
「まぁまぁ。アキは出力だけならC超えてると思うよ。ただ──」
「ただ?」
「方向性と精度と、あとバカだから帳消しになってるって、先生が言ってた」
「それ完全に悪口じゃねえか!」
「でも納得でしょ?」
エマが無邪気に笑いかけると、ユナは少し困ったように笑って、小さく頷いた。
「……うん、まあ」
「ま、でも私はまだまだ下の方。ここにはBランク様もいらっしゃるし?」
「……え?」
アキが目を丸くする。エマは隣のユナを肘で軽くつついた。
「ユナってBランクなんだよ。ね、あんまり言わないけど」
「べ、別に隠してるわけじゃないけど……」
ユナがちょっとだけ困ったように笑う。
「回復魔法が得意だから、あんまり目立たないけど、試験では安定性重視されるしね」
「Bって、かなり上位じゃん……!」
アキは目を丸くしてユナを見たあと、少し間を置いてからバクへと視線を流す。
「で、バクは……」
「……E」
気まずそうに答えると、すぐさまエマが大げさな笑みで肩を叩いてきた。
「大丈夫! 私もDから這い上がったし、炎系魔術ってノリと勢いと訓練量だから!」
「いや、もっと技術的に言ってくれよ……」
「大丈夫ってば! 根性で何とかなるから!」
エマの明るい笑い声が残る中、ユナが少しだけ声のトーンを落として補足する。
「バク君、気にしないで。ランクは確かに一つの目安だけど、本当の実力はそこじゃ測れないから」
「ユナ……」
「でもさ、戦闘だけは──Aランクにも負けてないと思うんだけどなー」
エマが肉まんをもう一口かじりながら、ぼやくように言った。
「お前なぁ、そういうの自分で言うとただのバカに聞こえるぞ」
アキが呆れ顔で突っ込む。
「ほんとのバカは、脳筋とか言ってくるヤツでしょ!」
言い合うふたりの間に火花が散るような空気が生まれ、ユナは慌てて両手を上げて仲裁に入ろうと身を乗り出していた。
騒がしい、けれどどこか居心地のいい空気が、食堂の片隅に広がっていた。
≪なぜこの時代の女子はこうもうるさいのだ……≫
ネロの呆れた声が響く。
≪そして……あれは何だ?≫
エマが手にしていた炭酸の缶に視線が注がれる。
≪この圧力と金属構造、液体を内部に封じる設計……見事だ。だが中身が泡立つとは、狂気だな≫
(いや、普通の飲み物だよ)
≪……これが飲み物だと……!? 黒く泡立つ液体を人間が摂取している!? 毒ではないのか!?≫
(コーラだよ、コーラ)
≪理解不能だ……この時代の感性は、やはり異常だな≫
その声に、思わず吹き出しそうになる。
昼休み目前、チャイムが鳴る寸前だった。
教室の扉の前に、ふらりと現れる影──あの男だ。
目の下に寝不足のクマ、くしゃくしゃの髪。片手には、いつものコーヒーカップ。
ガク・ザラード。
担任とは思えぬ風体で、生徒の視線を一身に集めながら、彼は一言も発さず教室を見渡した。
「おい、バク。午後ちょっと時間くれ。……他のやつらも付き合え」
顔を上げたバクに、ガクが無造作に言い放つ。
そのまま教室を出る流れで、ユナとアキも半ば強引に引き連れられた。
すれ違いざま、耳元に落とされた小さな声が、胸の奥に刺さる。
「さっき、学園長から許可が下りた。お前の制御の問題、本腰でやるぞ」
「本腰って……?」
「まぁ、詳しくは放課後な」
その背中に、バクは息を呑む。
やがて放課後。
ガクに案内されたのは、学園地下に設けられた特別な訓練空間だった。
重厚な防魔扉が、鈍くきしみながら開いた。
そこに広がっていたのは、球状の巨大空間だった。床は滑らかな金属質で構成され、天井も壁も魔力を吸収する特殊な結界構造で包まれている。空間の中央には訓練用の標的がいくつも浮かび、静かに回転していた。
「ここは……」
「マナドームだ」
背後から、低く落ち着いた声が響いた。
──ガク・ザラードだった。
普段の気だるげな口調ではない。低く、芯のある声音だった。
「この空間は、全方位からの魔力圧を均一に制御し、外部への被害を最小限に抑える構造になっている。……つまり、どれだけ暴走しても壊れないように作られてる」
教師というより、まるで一人の管理者のように、ガクはドームを見渡す。
「今日ここに連れてきたのは、単なる訓練じゃない。お前の魔法を、ちゃんと制御可能なものにする。──そのための、初手だ」
彼の表情には、いつものだらしなさはなかった。眼差しは鋭く、バクを真正面から捉えていた。
「ビビるなよ、バク。ここはお前の魔力がどこまで届くかを測る、始まりの場だ」
≪……こ、これは……この文明の魔導制御技術は恐ろしいな≫
≪金と魔力を惜しまず、合理性を捨ててでも物量でねじ伏せる発想……嫌いではない≫
(褒めてんのか貶してんのか、どっちだよ……)
周囲を見回していたユナが、そっと言った。
「ここ、すごい……。ほんとに訓練のためだけに使ってるの?」
「一部の生徒だけな。まぁ、いろいろあってな」
ガクはコーヒーをすすりながらぼやいた。
「黒炎の訓練をここでやる」
ガクのひと言に、バクの背筋がわずかに強張った。
「ここで……」
視線が足元に落ちる。
昨夜、制御しきれず焼け焦げた校庭の跡。
あのときの痛みと悔しさが、皮膚の奥でじりじりと蘇る。
「じゃあ、始めるか。バク、撃ってみろ」
言葉は短く、温度はない。だが、その背後には明確な期待と監視が張りついていた。
「……はい」
バクは、静かに息を吸った。
黒炎を出す──ただ、それだけの行為。
だが、その“だけ”が、いまだに己の身体を蝕む。
右手に意識を凝らす。
骨がきしみ、皮膚が震え、その内側で何かがうごめいていた。
──熱い。
──焦げる。
掌の奥から、焼けるような圧がじわりと広がる。
魔力の奔流。その輪郭に触れるたび、肉体が軋みを上げる。
「くっ……」
一瞬で、世界が黒に染まった。
放たれた黒炎は、制御を失ったまま、床をえぐるように暴れた。瞬間、訓練空間の地面が爆ぜる。熱風と魔力が交錯し、空気が裂ける音すらする。
「バク君!」
ユナの声とともに、癒しの魔法《ルミ》が駆ける。だが、バクはその場に膝をつき、苦悶に顔を歪めていた。
「が、はっ……!」
喉の奥から血が逆流し、唇を濡らす。内臓の奥が焼かれるような感覚──いや、実際に焼けていた。
「ちょっとちょっと! 波が荒すぎ! もっとこう、こうやって!」
エマが遠慮のない口調で叫ぶ。言葉は抽象的だが、真剣な眼差しだった。
「大丈夫か!」
アキの肩を借りながら、ぐっと足に力を込める。
息は荒く、全身は汗にまみれていた。
(……まだ、俺の魔法じゃない)
(けど──立たなきゃ、何も変わらない)
(俺の形にするには、俺が意思を持たなきゃいけない)
「もう一回、やらせてくれ」
「お前なぁ……」
「頼む。……もう一度だけ」
バクの暴走を見つめていたエマが、ふいに口を開いた。
「なんかさ、バクの炎って、奥のほうにめっちゃ強い芯ある感じするんだよね」
苦しげな息の中、顔がわずかに上がる。
その瞳には、まだ火が灯っていた。
「芯?」
「うん。外はドッカンドッカン暴れてるけどさ、中心の方は──すっごい静かに、でもすっごい強く燃えてる」
彼女は拳を握って胸に当てながら、目を細める。
「もっと、そこを外に出すようなイメージでさ……。そしたら、暴れ方も変わるかも!」
「……外に、出す……」
「あとね、魔力って、私的には呼吸に似てると思うんだよね」
「呼吸?」
「そう。“吸う”と“吐く”があるでしょ? バクは、ずっと吐いてる感じ。出しっぱなし」
小さく笑って、肩をすくめる。
「たまには“吸って”みるといいよ。内側に、戻すように。力の流れって、往復してるほうが安定するから」
その言葉を聞いた瞬間、脳内に皮肉混じりの声が響いた。
≪……面白い例えだ。感覚的ではあるが、構造的には合っている≫
≪魔力の流れは一方向に偏ると乱れやすい。出しっぱなしのお前の魔力が暴れるのも、当然だな≫
≪だが……それを“呼吸”と喩えるとは。この時代の女子はうるさいだけではないらしい≫
皮肉とも感心ともつかないその言い回しに、喉の奥が少しだけ緩んだ。
けれど、緊張で強張った体に、笑う余裕などあるはずもなかった。
(素直に感心すりゃいいのに……)
≪感心などしていない。論理的に、正しかっただけだ≫
(そういうのを、感心って言うんだよ)
≪うるさい。集中しろ。……今のお前には、無駄な会話を処理する余裕などないはずだ≫
ゆっくりとまぶたを閉じる。
世界から音が遠のいていく。
呼吸と鼓動だけが、内側に残った。
エマの言葉が、頭の中で反響している。
「芯を外に出す」
「呼吸のように往復させる」
感覚的な表現のはずなのに、どこかしっくりくるものがあった。
魔力を、ただ出すのではなく、取り込んで、循環させる。
暴れる炎の奥にある何かを、形にするように。
(……いけるかもしれない)
深く息を吸い込む。
熱が、肺の奥を満たす感覚。それは実際には魔力とは無関係なはずなのに、なぜか身体の内部に静けさをもたらした。
そして、吐く。
暴れる魔力を押さえ込むのではなく、芯をなぞるように、流れを整える。
──その様子を、傍らで見ていたガクは、ゆっくりと目を細めた。
「……魔力の質が変わったな。形を持ちはじめた魔力は、制御しやすくなるが、そのぶん身体への負担も跳ね上がる。何が起きたのかは分からんが……一歩、前には進んだってことだ」
淡々と告げながらも、バクの手元をじっと見つめていた。燃え尽きかけた指先に、未熟ながらも確かに輪郭を持ちはじめた黒炎の余熱が残っている。それは、昨日までの暴走とは違う、形だった。
「……構えろ。出力は一点に絞れ。できるなら、だがな」
「……はい」
再び、右手に意識を集中する。
暴れる魔力。その奔流の奥に、確かに核のようなものがある。そこに触れられれば、あるいは──。
だが熱量は制御を振り切り、腕の奥で神経が焼けるような痛みが走る。
(……また、壊れる……)
そのとき、脳裏に静かな声が響いた。
≪落ち着け。お前はもう、一人ではない≫
(ネロ……?)
≪流れは掴んでいる。なら、少しだけ、任せてみろ≫
一瞬だけ、意識の深部が何かと繋がった。
自分の魔力の流れが、他者と共鳴するような感覚。
それは確かに、暴走する熱を受け止め、輪郭を与えようとする知性だった。
≪……手を、前に出せ。お前の意思の形を作れ≫
息を吸い、右手を突き出す。
指先に凝縮される黒炎は、暴れ狂う奔流ではない。
揺らぐように、螺旋を描きながら──意志に応えるように、その腕へと絡みついていく
黒炎が──形を持ちはじめた。
その刹那、魔力は鎧となる。
「っ──!?」
光が爆ぜた。
黒炎は意志を宿し、輪郭を持ち──硬質な殻となって右腕を覆っていく。
金属音と共に編まれたその構造体は、黒と銀の魔力装甲。
肘までを包み込むそれは、まぎれもなく──新たな武器だった。
握った拳に、確かな重みが伝わる。
もう、暴走ではない。
意志を持ち、力として形になった魔法。
微かな熱が、掌に残っていた。
≪お前の魔力は、ようやく形を得た。だから制御機構を作ったまでだ≫
≪まさか、ここまで愚直で、しつこいとは思わなかったがな≫
ネロの皮肉に、口元がわずかに緩んだ。
笑ったわけじゃない。けれど──少しだけ、力が抜けた。
「……ネロ……」
握りしめた拳に、全身の痛みが容赦なく重なる。
皮膚が焼け、骨が悲鳴を上げる。
それでも、引く気はなかった。
──もう一度。
右足を一歩、前へ。
空気が震える。
右腕のガントレットが脈動する。
その内部に集束する黒炎は、熱を帯び、うねりながら形を変えていく。
螺旋の渦を巻いた魔力が、意志と共鳴した瞬間──
黒炎が解き放たれた。
鋭く、重く、まるで黒雷のように奔り出す。
風を裂き、空気を焦がし、闇色の閃光が弧を描いて的を薙ぎ払った。
数秒の静寂ののち、爆ぜるように中心が焼け落ちる。
的の中央には深くえぐれた焼痕が残り、結界は軋むような音を立てて明滅していた。
それは暴走ではない。
一点に込められた膨大な魔力が、狙い澄ました軌道で放たれただけ──
破壊ではなく、精密な処刑。
バクの黒炎は、ついに意志の形となって顕現した。
「……!」
「……できた……のか」
息が乱れる。肺が焼けるほど熱い。全身の神経が、炎にさらされたように軋む。けれど、拳を握る感覚だけは、はっきりと残っていた。
右腕を包むこの黒炎の装置が、暴れる魔力を抑えこみ、己の意志の形を成している。
ほんの一瞬、誰の声も届かない静寂があった。
ただ自分の中の、黒炎の音だけが、かすかに響いていた。
(……これが、俺の魔法……)
「やった!」
ユナが両手を握り、笑みを見せる。エマも満足そうに頷いた。
「やっとスタートラインだね!」
「やったな、バク!」
アキが声を上げる。
「ラグナスに追いつくのも時間の問題だな!」
アキが軽口を叩き、皆が少しだけ笑った。
その中で、ガクだけが呟く。
「……次は、連射を前提に組み直せ。それが実戦だ」
それだけを言い残し、彼は訓練空間を後にした。
バクは、そっと拳を見つめる。
「やっと……少しだけ、俺の魔法になった気がする」
≪まだだ。名を与えるには、早すぎる≫
≪……だが、形にはなったな≫
ネロの声は、どこか満足そうだった。
昨夜のろうそく訓練の負傷は、ユナの癒し魔法によって見た目にはほとんど治っていた。だが、右手に残る鈍い痛みと、胸の奥で燻るような黒炎の残響は消えていない。
バクは廊下を一人、食堂へ向かっていた。足取りが重いのは、疲労のせいだけではない。
(昨日の黒炎──あれはもう、最初から手に負える代物じゃなかった)
そんな思考を断ち切るように、声が背後から飛んできた。
「バク君!」
廊下の角から駆け寄ってきたのは、ユナ・フィオーレ。制服ではなく、白のラフシャツに淡い青のスカート姿。その胸元が揺れるたびに、バクは視線の置き場に困った。
「お、おはよう。今日も早いな……」
「うん!ね、ちょっと来て。会わせたい子がいるの」
そう言って彼女は手を伸ばしてきた。自然と指が触れそうな距離まで来て、バクは言葉を失った。
「昨日話したでしょ? エマちゃん。わたしのルームメイトで、炎魔法のスペシャリストなんだ」
≪炎魔法の専門家か。ほう……興味深いな≫
脳内にネロの声が響いた。
≪お前の暴走する黒炎を見て、どう反応するか。楽しみではある≫
ユナに導かれるまま、バクは食堂のテラス席へ向かう。
朝日が差し込むその片隅で、ひときわエネルギッシュな雰囲気を放つ少女が、肉まんを頬張っていた。
赤みがかった短髪を跳ね上げ、制服を少し着崩したその姿は、どこか野性的で自由な空気を纏っている。手には炭酸の缶。シュッという音とともに開けると、勢いよく流し込んだ。
「エマちゃん、紹介するね。バク・ノヴァリス君」
「おおっ!」
肉まんを口に突っ込んだまま振り返った彼女までは、満面の笑みでバクに手を差し出した。
「君が噂の黒炎使いか!よろしくね!」
「あ、ああ……よろしく」
差し出した手に、容赦ない握力が食い込んだ。
思わず顔が歪む。指が軋み、骨ごと握り潰されそうな勢いだった。
「聞いたよ!昨日の訓練で大暴発したって? どんな感じだった?痛かった?血は何リットル出た?」
「え、えっと……」
「威力は?射程は?持続時間は?魔力消費量は!?あと気分的には何点くらい!?」
「落ち着いてエマちゃん」
ユナが慌てて割って入る。
「この子、炎魔法の話になると止まらないの」
「黒炎ってどうやって出すの?火花が黒いときって、温度は高い?それとも性質の問題?」
「いや、あの……とりあえず自己紹介とか……」
「あっ、そうだった! ごめんごめん!」
エマは肉まんを一口でかじると、にかっと笑った。
「エマ・クルセア。Cランクだけど、炎系魔術にはちょっと自信あるんだ」
「……バク・ノヴァリス。魔力制御が苦手で、いま修行中」
ようやく握手から解放された手を引き戻し、バクは静かに息を吐いた。
痺れるような痛みが指先に残っている。手を軽く振りながら、感覚を取り戻すように開閉を繰り返す。
「へぇー! 暴走型か! わたしも昔そうだったよ!」
「今もだろ」
軽口とともに現れたのは、アキ・ソラリスだった。
「なんか似てんな、お前ら。爆発力とか、脳筋っぽいとことか」
「だれが脳筋だってーの!」
エマがすかさず詰め寄り、指を突きつけるようにアキに迫る。
だがアキは、慣れた様子で身体をひねり、ひょいと一歩かわした。
「そういやエマ、お前いつの間にCランクに上がったんだよ。前はDじゃなかったっけ?」
「へへーん、先週の試験で昇格!火柱で標的全部吹き飛ばしたら、合格だった!」
「うっわ、まじかよ……完全に先越された……!」
アキが頭をかきむしって悔しそうに唸る。
「まぁまぁ。アキは出力だけならC超えてると思うよ。ただ──」
「ただ?」
「方向性と精度と、あとバカだから帳消しになってるって、先生が言ってた」
「それ完全に悪口じゃねえか!」
「でも納得でしょ?」
エマが無邪気に笑いかけると、ユナは少し困ったように笑って、小さく頷いた。
「……うん、まあ」
「ま、でも私はまだまだ下の方。ここにはBランク様もいらっしゃるし?」
「……え?」
アキが目を丸くする。エマは隣のユナを肘で軽くつついた。
「ユナってBランクなんだよ。ね、あんまり言わないけど」
「べ、別に隠してるわけじゃないけど……」
ユナがちょっとだけ困ったように笑う。
「回復魔法が得意だから、あんまり目立たないけど、試験では安定性重視されるしね」
「Bって、かなり上位じゃん……!」
アキは目を丸くしてユナを見たあと、少し間を置いてからバクへと視線を流す。
「で、バクは……」
「……E」
気まずそうに答えると、すぐさまエマが大げさな笑みで肩を叩いてきた。
「大丈夫! 私もDから這い上がったし、炎系魔術ってノリと勢いと訓練量だから!」
「いや、もっと技術的に言ってくれよ……」
「大丈夫ってば! 根性で何とかなるから!」
エマの明るい笑い声が残る中、ユナが少しだけ声のトーンを落として補足する。
「バク君、気にしないで。ランクは確かに一つの目安だけど、本当の実力はそこじゃ測れないから」
「ユナ……」
「でもさ、戦闘だけは──Aランクにも負けてないと思うんだけどなー」
エマが肉まんをもう一口かじりながら、ぼやくように言った。
「お前なぁ、そういうの自分で言うとただのバカに聞こえるぞ」
アキが呆れ顔で突っ込む。
「ほんとのバカは、脳筋とか言ってくるヤツでしょ!」
言い合うふたりの間に火花が散るような空気が生まれ、ユナは慌てて両手を上げて仲裁に入ろうと身を乗り出していた。
騒がしい、けれどどこか居心地のいい空気が、食堂の片隅に広がっていた。
≪なぜこの時代の女子はこうもうるさいのだ……≫
ネロの呆れた声が響く。
≪そして……あれは何だ?≫
エマが手にしていた炭酸の缶に視線が注がれる。
≪この圧力と金属構造、液体を内部に封じる設計……見事だ。だが中身が泡立つとは、狂気だな≫
(いや、普通の飲み物だよ)
≪……これが飲み物だと……!? 黒く泡立つ液体を人間が摂取している!? 毒ではないのか!?≫
(コーラだよ、コーラ)
≪理解不能だ……この時代の感性は、やはり異常だな≫
その声に、思わず吹き出しそうになる。
昼休み目前、チャイムが鳴る寸前だった。
教室の扉の前に、ふらりと現れる影──あの男だ。
目の下に寝不足のクマ、くしゃくしゃの髪。片手には、いつものコーヒーカップ。
ガク・ザラード。
担任とは思えぬ風体で、生徒の視線を一身に集めながら、彼は一言も発さず教室を見渡した。
「おい、バク。午後ちょっと時間くれ。……他のやつらも付き合え」
顔を上げたバクに、ガクが無造作に言い放つ。
そのまま教室を出る流れで、ユナとアキも半ば強引に引き連れられた。
すれ違いざま、耳元に落とされた小さな声が、胸の奥に刺さる。
「さっき、学園長から許可が下りた。お前の制御の問題、本腰でやるぞ」
「本腰って……?」
「まぁ、詳しくは放課後な」
その背中に、バクは息を呑む。
やがて放課後。
ガクに案内されたのは、学園地下に設けられた特別な訓練空間だった。
重厚な防魔扉が、鈍くきしみながら開いた。
そこに広がっていたのは、球状の巨大空間だった。床は滑らかな金属質で構成され、天井も壁も魔力を吸収する特殊な結界構造で包まれている。空間の中央には訓練用の標的がいくつも浮かび、静かに回転していた。
「ここは……」
「マナドームだ」
背後から、低く落ち着いた声が響いた。
──ガク・ザラードだった。
普段の気だるげな口調ではない。低く、芯のある声音だった。
「この空間は、全方位からの魔力圧を均一に制御し、外部への被害を最小限に抑える構造になっている。……つまり、どれだけ暴走しても壊れないように作られてる」
教師というより、まるで一人の管理者のように、ガクはドームを見渡す。
「今日ここに連れてきたのは、単なる訓練じゃない。お前の魔法を、ちゃんと制御可能なものにする。──そのための、初手だ」
彼の表情には、いつものだらしなさはなかった。眼差しは鋭く、バクを真正面から捉えていた。
「ビビるなよ、バク。ここはお前の魔力がどこまで届くかを測る、始まりの場だ」
≪……こ、これは……この文明の魔導制御技術は恐ろしいな≫
≪金と魔力を惜しまず、合理性を捨ててでも物量でねじ伏せる発想……嫌いではない≫
(褒めてんのか貶してんのか、どっちだよ……)
周囲を見回していたユナが、そっと言った。
「ここ、すごい……。ほんとに訓練のためだけに使ってるの?」
「一部の生徒だけな。まぁ、いろいろあってな」
ガクはコーヒーをすすりながらぼやいた。
「黒炎の訓練をここでやる」
ガクのひと言に、バクの背筋がわずかに強張った。
「ここで……」
視線が足元に落ちる。
昨夜、制御しきれず焼け焦げた校庭の跡。
あのときの痛みと悔しさが、皮膚の奥でじりじりと蘇る。
「じゃあ、始めるか。バク、撃ってみろ」
言葉は短く、温度はない。だが、その背後には明確な期待と監視が張りついていた。
「……はい」
バクは、静かに息を吸った。
黒炎を出す──ただ、それだけの行為。
だが、その“だけ”が、いまだに己の身体を蝕む。
右手に意識を凝らす。
骨がきしみ、皮膚が震え、その内側で何かがうごめいていた。
──熱い。
──焦げる。
掌の奥から、焼けるような圧がじわりと広がる。
魔力の奔流。その輪郭に触れるたび、肉体が軋みを上げる。
「くっ……」
一瞬で、世界が黒に染まった。
放たれた黒炎は、制御を失ったまま、床をえぐるように暴れた。瞬間、訓練空間の地面が爆ぜる。熱風と魔力が交錯し、空気が裂ける音すらする。
「バク君!」
ユナの声とともに、癒しの魔法《ルミ》が駆ける。だが、バクはその場に膝をつき、苦悶に顔を歪めていた。
「が、はっ……!」
喉の奥から血が逆流し、唇を濡らす。内臓の奥が焼かれるような感覚──いや、実際に焼けていた。
「ちょっとちょっと! 波が荒すぎ! もっとこう、こうやって!」
エマが遠慮のない口調で叫ぶ。言葉は抽象的だが、真剣な眼差しだった。
「大丈夫か!」
アキの肩を借りながら、ぐっと足に力を込める。
息は荒く、全身は汗にまみれていた。
(……まだ、俺の魔法じゃない)
(けど──立たなきゃ、何も変わらない)
(俺の形にするには、俺が意思を持たなきゃいけない)
「もう一回、やらせてくれ」
「お前なぁ……」
「頼む。……もう一度だけ」
バクの暴走を見つめていたエマが、ふいに口を開いた。
「なんかさ、バクの炎って、奥のほうにめっちゃ強い芯ある感じするんだよね」
苦しげな息の中、顔がわずかに上がる。
その瞳には、まだ火が灯っていた。
「芯?」
「うん。外はドッカンドッカン暴れてるけどさ、中心の方は──すっごい静かに、でもすっごい強く燃えてる」
彼女は拳を握って胸に当てながら、目を細める。
「もっと、そこを外に出すようなイメージでさ……。そしたら、暴れ方も変わるかも!」
「……外に、出す……」
「あとね、魔力って、私的には呼吸に似てると思うんだよね」
「呼吸?」
「そう。“吸う”と“吐く”があるでしょ? バクは、ずっと吐いてる感じ。出しっぱなし」
小さく笑って、肩をすくめる。
「たまには“吸って”みるといいよ。内側に、戻すように。力の流れって、往復してるほうが安定するから」
その言葉を聞いた瞬間、脳内に皮肉混じりの声が響いた。
≪……面白い例えだ。感覚的ではあるが、構造的には合っている≫
≪魔力の流れは一方向に偏ると乱れやすい。出しっぱなしのお前の魔力が暴れるのも、当然だな≫
≪だが……それを“呼吸”と喩えるとは。この時代の女子はうるさいだけではないらしい≫
皮肉とも感心ともつかないその言い回しに、喉の奥が少しだけ緩んだ。
けれど、緊張で強張った体に、笑う余裕などあるはずもなかった。
(素直に感心すりゃいいのに……)
≪感心などしていない。論理的に、正しかっただけだ≫
(そういうのを、感心って言うんだよ)
≪うるさい。集中しろ。……今のお前には、無駄な会話を処理する余裕などないはずだ≫
ゆっくりとまぶたを閉じる。
世界から音が遠のいていく。
呼吸と鼓動だけが、内側に残った。
エマの言葉が、頭の中で反響している。
「芯を外に出す」
「呼吸のように往復させる」
感覚的な表現のはずなのに、どこかしっくりくるものがあった。
魔力を、ただ出すのではなく、取り込んで、循環させる。
暴れる炎の奥にある何かを、形にするように。
(……いけるかもしれない)
深く息を吸い込む。
熱が、肺の奥を満たす感覚。それは実際には魔力とは無関係なはずなのに、なぜか身体の内部に静けさをもたらした。
そして、吐く。
暴れる魔力を押さえ込むのではなく、芯をなぞるように、流れを整える。
──その様子を、傍らで見ていたガクは、ゆっくりと目を細めた。
「……魔力の質が変わったな。形を持ちはじめた魔力は、制御しやすくなるが、そのぶん身体への負担も跳ね上がる。何が起きたのかは分からんが……一歩、前には進んだってことだ」
淡々と告げながらも、バクの手元をじっと見つめていた。燃え尽きかけた指先に、未熟ながらも確かに輪郭を持ちはじめた黒炎の余熱が残っている。それは、昨日までの暴走とは違う、形だった。
「……構えろ。出力は一点に絞れ。できるなら、だがな」
「……はい」
再び、右手に意識を集中する。
暴れる魔力。その奔流の奥に、確かに核のようなものがある。そこに触れられれば、あるいは──。
だが熱量は制御を振り切り、腕の奥で神経が焼けるような痛みが走る。
(……また、壊れる……)
そのとき、脳裏に静かな声が響いた。
≪落ち着け。お前はもう、一人ではない≫
(ネロ……?)
≪流れは掴んでいる。なら、少しだけ、任せてみろ≫
一瞬だけ、意識の深部が何かと繋がった。
自分の魔力の流れが、他者と共鳴するような感覚。
それは確かに、暴走する熱を受け止め、輪郭を与えようとする知性だった。
≪……手を、前に出せ。お前の意思の形を作れ≫
息を吸い、右手を突き出す。
指先に凝縮される黒炎は、暴れ狂う奔流ではない。
揺らぐように、螺旋を描きながら──意志に応えるように、その腕へと絡みついていく
黒炎が──形を持ちはじめた。
その刹那、魔力は鎧となる。
「っ──!?」
光が爆ぜた。
黒炎は意志を宿し、輪郭を持ち──硬質な殻となって右腕を覆っていく。
金属音と共に編まれたその構造体は、黒と銀の魔力装甲。
肘までを包み込むそれは、まぎれもなく──新たな武器だった。
握った拳に、確かな重みが伝わる。
もう、暴走ではない。
意志を持ち、力として形になった魔法。
微かな熱が、掌に残っていた。
≪お前の魔力は、ようやく形を得た。だから制御機構を作ったまでだ≫
≪まさか、ここまで愚直で、しつこいとは思わなかったがな≫
ネロの皮肉に、口元がわずかに緩んだ。
笑ったわけじゃない。けれど──少しだけ、力が抜けた。
「……ネロ……」
握りしめた拳に、全身の痛みが容赦なく重なる。
皮膚が焼け、骨が悲鳴を上げる。
それでも、引く気はなかった。
──もう一度。
右足を一歩、前へ。
空気が震える。
右腕のガントレットが脈動する。
その内部に集束する黒炎は、熱を帯び、うねりながら形を変えていく。
螺旋の渦を巻いた魔力が、意志と共鳴した瞬間──
黒炎が解き放たれた。
鋭く、重く、まるで黒雷のように奔り出す。
風を裂き、空気を焦がし、闇色の閃光が弧を描いて的を薙ぎ払った。
数秒の静寂ののち、爆ぜるように中心が焼け落ちる。
的の中央には深くえぐれた焼痕が残り、結界は軋むような音を立てて明滅していた。
それは暴走ではない。
一点に込められた膨大な魔力が、狙い澄ました軌道で放たれただけ──
破壊ではなく、精密な処刑。
バクの黒炎は、ついに意志の形となって顕現した。
「……!」
「……できた……のか」
息が乱れる。肺が焼けるほど熱い。全身の神経が、炎にさらされたように軋む。けれど、拳を握る感覚だけは、はっきりと残っていた。
右腕を包むこの黒炎の装置が、暴れる魔力を抑えこみ、己の意志の形を成している。
ほんの一瞬、誰の声も届かない静寂があった。
ただ自分の中の、黒炎の音だけが、かすかに響いていた。
(……これが、俺の魔法……)
「やった!」
ユナが両手を握り、笑みを見せる。エマも満足そうに頷いた。
「やっとスタートラインだね!」
「やったな、バク!」
アキが声を上げる。
「ラグナスに追いつくのも時間の問題だな!」
アキが軽口を叩き、皆が少しだけ笑った。
その中で、ガクだけが呟く。
「……次は、連射を前提に組み直せ。それが実戦だ」
それだけを言い残し、彼は訓練空間を後にした。
バクは、そっと拳を見つめる。
「やっと……少しだけ、俺の魔法になった気がする」
≪まだだ。名を与えるには、早すぎる≫
≪……だが、形にはなったな≫
ネロの声は、どこか満足そうだった。
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