ガルシア戦記

千山一

文字の大きさ
94 / 174
第4巻 放浪の亡命者

第3章 腐れ縁の再会No.3

しおりを挟む
「これを首にかけるのです」
「………」

俺は呆気に捉えられてしまった。
“いやいや、そんな上手い話があってたまるか!……けど、ここはアレスしか知らないことだから我慢して黙っておこう……”

「あまり信用していないことですが、本当にそうなんです……まぁ、マジックチャクラは世間一般では消費できないと思われがちですが、少しずつですが回復しています」

俺は“分かり切ったウソを…”と思って、大きくため息をついてしまった。アレスは俺達の顔を見れば分かるのに、それを気にせず淡々と語っていた。

「皆さん“分かり切ったウソを…”と言われるかもしれませんが事実です。思い出して下さい。現にチャンドラという女は眠り続けているでしょう?」

“確かそうだ。コイツは(アレス)「人間は最高のおもちゃ」しか思っていない。けど、すべてがおもちゃなら世界全体が成り立たない。恐らくは自分が楽する為に、ある程度真実を交えているのだろう”

「確かにそうだ」
「でしょう!私はウソなんて事実、聞いたことはありません」

“ゼッテーウソだ!”と俺は思いっきりツッコミを入れたが、今後支障があるといけないので、黙って無言を貫いた。

「この首飾り、通称:“真実の首飾り”というのですが、マジックチャクラを枯渇するのを防ぐ役割を果たします」

“ふむふむ”と俺は頷いた。
“確かに相当なSっ気がある男だが、知識に関して相当にあるとみている…本当にマジックチャクラは少しずつ回復しているかもしれないなぁ”

「しかし、残念なことにデメリットがあります。この真実の首飾りは3ヶ月で枯渇するです」
「はぁ?」

俺は呆気にとられ、聞いたことがないような声を出してしまった。アレスも隠すことは知らないのか“ビクッビクッ”と震えていた。

「し、しかもですよ。この真実の首飾り、2ヶ月までは“苦しいなぁ…”と徐々に首を絞められ、4ヶ月後にはあの世行きなんです!」
「なんでそうなんねん!」

俺は思わず“ツッコミを入れた。
“チャンドラは高飛車でワガママばかりだが、この真実の首飾りをつけるとなると、なんだか忍びない”

「ん?そうですか?……出血大サービス!1年にしましょう!」
「良かった!良かった!…ん?」

一瞬、喜んでしまったが俺はある事に気がついてしまった。
“英雄として力を授けたのは自分(アレス)。
王として結婚し、子供を授けたの他ならぬ王ではあるが、子供を力を与えたのは自分(アレス)。
子育てに対してマジックチャクラの枯渇の原因を招いたのは自分(アレス)。
真実の首飾りを授けのは自分(アレス)。
要はすべて自分(アレス)から発生したのである。

「なぁ、コレってすべて自分、つまりアレス自身だよなぁ」

アレスは“ニヤッ”と満面の笑みを浮かべたと同時に一瞬だけ殺意を感じたが、その殺意は一瞬の出来事でアレス自身が動くことになかった。

「そう深読みをするではない。アレス自身が知らないと言っておるのじゃ。知らないのであろう」

黙って聞いていたシルバードラゴンが深読みを追求していた俺に釘を刺しておいた。
“もし、あのまま深読みしたらこの世にはいなかったのであろう……それが、悪魔という人種なのだ”

「分かったよ。俺とアレスは知らない。それで良いか?」
「よろしいですよ」

アレスは“ニコッ”と笑顔になった。そして、今後の動きを話をしていった。

「この話と相談のためサシル城に行かないといけないでしょうが私が行きます」
「ちょ、ちょっと待て!お前が行くの?」
「そうです」

サシル城が行くなんて思わなかったから思わずビックリして大声を出してしまった。その時“フトッ”頭の中をよぎる。
俺は口に出そうか?出さないでスルーしようか?迷ったが、あえて口にした。

「…お前、サシル城にすぐに行くことは可能なの?」
「……さぁ…ところでアナタ達にはお願いがあります!それは……ルジアム帝国に行って欲しいのです!ここの国は今、大変だと聞いております。ここは私のは分まで活躍してくれますよね」
「……」

“くそ……上手く断れない”俺は苦虫を噛み潰したよう顔した。アレスもその顔を見たのか、満足そうに満面の笑みになった。

「分かった!分かったよ!今からルジアムから行くから時間はかかるぞ。それで良いな!」

最後の悪あがきである。ちょっとでも困らせようとして言った発言ではあるが、そのことが俺のもっとも最悪だった発言であった。

「そんなにかからないと思いますよ。そうですね……そこまで言うのであれば、リミット3日間。あっ、ルジアム帝国に着いてからではないですよ。行って帰ってから…つまり、往復ですね」

アレスは満面の笑みな顔で“サラッ”とこちらの方に向いてた。俺はいうと“絶対無理やん”という気持ちになり逃げ出す算段を考え始めた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

勘当された少年と不思議な少女

レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。 理由は外れスキルを持ってるから… 眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。 そんな2人が出会って…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あざとしの副軍師オデット 〜脳筋2メートル義姉に溺愛され、婚外子から逆転成り上がる〜

水戸直樹
ファンタジー
母が伯爵の後妻になったその日から、 私は“伯爵家の次女”になった。 貴族の愛人の娘として育った私、オデットはずっと準備してきた。 義姉を陥れ、この家でのし上がるために。 ――その計画は、初日で狂った。 義姉ジャイアナが、想定の百倍、規格外だったからだ。 ◆ 身長二メートル超 ◆ 全身が岩のような筋肉 ◆ 天真爛漫で甘えん坊 ◆ しかも前世で“筋肉を極めた転生者” 圧倒的に強いのに、驚くほど無防備。 気づけば私は、この“脳筋大型犬”を 陥れるどころか、守りたくなっていた。 しかも当の本人は―― 「オデットは私が守るのだ!」 と、全力で溺愛してくる始末。 あざとい悪知恵 × 脳筋パワー。 正反対の義姉妹が、互いを守るために手を組む。 婚外子から始まる成り上がりファンタジー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

悪役皇子、ざまぁされたので反省する ~ 馬鹿は死ななきゃ治らないって… 一度、死んだからな、同じ轍(てつ)は踏まんよ ~

shiba
ファンタジー
魂だけの存在となり、邯鄲(かんたん)の夢にて 無名の英雄 愛を知らぬ商人 気狂いの賢者など 様々な英霊達の人生を追体験した凡愚な皇子は自身の無能さを痛感する。 それゆえに悪徳貴族の嫡男に生まれ変わった後、謎の強迫観念に背中を押されるまま 幼い頃から努力を積み上げていた彼は、図らずも超越者への道を歩み出す。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

貞操逆転世界に転生してイチャイチャする話

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が自分の欲望のままに生きる話。

処理中です...