冗談じゃ終わらない恋物語

LiLi

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冗談のつもりだったのに

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午後のフリースクールは、いつもより少しだけ賑やかだった。
壁に掛けられた時計の針が、ゆっくりと午後三時を指す。
小さな教室にはバラバラに置かれた机や椅子が並び、子どもたちがそれぞれ好きなことをして過ごしている。
窓際では何人かが画用紙に色を塗り、奥のソファではトランプをめくる小さな音が絶え間なく響いていた。
差し込む午後の日差しが、この場所独特の温もりを作り出している。

凛斗は壁際の木製机に座り、小さなノートに何かを書き込んでいた。
宿題というわけでもなく、日記でもない。断片的な言葉を、思いつくままに並べているだけ。
横顔は落ち着いているようで、どこか落ち着かない。

その向かいでは、悠希が足を組み、漫画を片手にゆったりと椅子に腰掛けている。
ページをめくる手はのんびりとしていて、時々だけ凛斗の様子を盗み見る。
いつも通りの俺様な態度と、わずかな余裕の笑みがそこにあった。

「おい、数学のプリント持ってる?」
悠希が漫画を閉じもせずに言う。
すぐ近くでUNOをしていた男子が「また悠希だ」と笑い、別の子が「ほんと毎回だなあ」と小声でからかった。

凛斗は、わずかにしまったと思いながらもカバンの中からプリントを探し出し、悠希に差し出した。
その拍子に、思わず口をついて出た言葉があった。

「俺、お前のこと好きだわ」

――言った瞬間、自分でも驚いた。
周囲の空気が一瞬だけピタリと止まり、小さな視線がいくつもこちらに集まる。
悠希は漫画をパタンと閉じ、口元にゆるく笑みを浮かべた。

「……へえ」

「ま、待て、今のは――」
「お前、俺様にそんなこと簡単に言っていいのか?」
悠希の視線は鋭くも、なぜか真っ直ぐ刺さってくる。

「冗談に決まってんだろ!」
「じゃあ、責任取れよ」

「はあ!? 意味わかんねー!」

そのやり取りを聞いていたUNO組の一人が、笑いをこらえきれずに叫んだ。
「なにそれ、お前らお似合いじゃん!」

教室のあちこちから「ほんとだー!」「いいカップルじゃね?」と冷やかしの声が飛ぶ。
凛斗は耳まで真っ赤になり、思わず椅子の背にもたれた。
悠希はその様子を見て、満足げに口角を上げる。

悠希がふいに机に肘をつき、距離を詰めてくる。
至近距離になった瞬間、凛斗は息を飲んだ。

「……じゃあ、逃げられねぇな」
低い声が真っ直ぐに胸を打つ。

差し込む午後の陽ざしと、自由で賑やかな空気の中で――その冗談は、もう冗談じゃなくなり始めていた。
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