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第143話:付き纏う蛇の目

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かつん  かつん




石造りの階段を下りながら、僕はロザンの作った忌々しい地下施設の入り口を通り奥へと進む。


シェリーの話によるともともとは魔力を使用した明かりがともっていたらしいが、今はすべて消え闇へと包まれていた。グリ子が探索前に持たせてくれた明かりがなければ先へ進むこともできなかっただろう。



入り口の扉を開けたところからずっと警戒をして入るものの、魔術による侵入者撃退の攻撃はいまだ来ない。魔力の明かりが消えているところも含め考えると、もう機能していないのだろうか。



階段をおりたら目の前の通路をまっすぐ進むと、中央の結晶体の部屋があるという。


別段迷路のように入り組んでいるわけではなく、実に小規模な設備だ。あくまでメインは見えないところに刻まれている魔方陣のほうなのだろう。それにロザンのことだ。対侵入者魔術によほどの自身があるのだろう。




「ここが・・・シェリーが、シェリーの両親がロザンに殺された場所なんだ」





結晶体の部屋を前にして、ふつふつと怒りが込みあがるのがわかる。扉を手で押すと、意図も簡単に開いた。





「・・・・・くっ!」




がぁああんん!!





握り締めたこぶしは入ってきた扉を強くたたく。



ごちゃごちゃとした機械が壁際に並び、中央には寝台のようなものがある。そこに横たわる小柄な人骨。




シェリーだ。




壁は一面が黒いシミで覆われており、当時の悲惨さをありありと物語っていた。





「はっ!そうだ、結晶体・・・!?」






寝台の上空、天井から吊るされた尖った石のようなものがある。これが結晶体だろう。くすんだ青いガラスのような石からは魔力のようなものも、光すら感じない。




(どうやら機能していないみたいだ。ってことは、ついにシェリーは開放されたんだな)



そういえば、と僕はここに来た当初の目的を思い出した。




(永久ゼンマイもここにあるはずなんだよな・・・これを回収できなかったら本末転倒だぞ)





棚や機械の中などを探し始めるが、ゼンマイと呼べるものは見つからない。だが魔術の核にするくらいだから、この部屋に絶対あると思うのだが・・・




ぱっ!




一瞬、あたりが青白く光った気がした。





ぱっぱぱぱぱっ!






いや、気のせいではない!




僕は持っていた明かりを上へかざす。先ほどまでくすんだ色をしていた結晶体が次第に輝きを増しているではないか!





「どういうことだ、機能は停止したんだろう!!」





もう明かりなどいらないほどにまばゆく光る結晶体。そして次の瞬間、その光は影をうみ、影は形を成して僕の前に立ちはだかる!




「わが魔術を侵略するもの、何人たりとも許しはせぬ・・!」





深い堀の奥底で爛々と輝く狂気の瞳は、気味の悪い蛇を髣髴とさせた。見た瞬間にわかる。間違いない。








「ロザンッ!!!」
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