レンタル彼氏を頼んだら、来たのはアヤカシでした

ぴぴみ

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「…一先ず置いておきましょう」

 これはサービス。値段に含まれてる。そう自分に言い聞かせる。

 ホストとか芸能人にはまるタイプじゃないのに、狐田さんおそるべし。

 そうして話している内に彼がよっぽど聞き上手だったのか、胸の澱みを少しでも晴らそうと語り始めてしまっていた。

「─信じられます?彼とは結構付き合いが長くて、親にも紹介していて。親しい友人にも会わせたりして。結婚も一年以内にしようねって話してたところだったんです。それなのに、『好きな女ができた。お腹には子供がいる。別れてくれ』の三コンボですよ」

「そんな男別れて正解じゃないか?」

「…はい。でも、ただでさえ許せない状況なのに相手は私の友人。悪びれもせずに『結婚式に来てね』ですよ。もうなんだか人間不信になりそうで…」

「酷い、な」

 共感してもらい気分が少し軽くなる。母は、『私が悪かったのではないか』と言うばかりで、自分でもあのときの態度がとか、化粧や服の手抜きもあったなと反省してしまい、誰にも言えなかった。

 少しでも自分に原因があるのでは、と思われるのが嫌だったのだ。

 結果的に人材派遣サービスに頼る選択をしてしまったが、ある意味良かったのではないかと思う。こうして話を聞いてもらうだけで救われることもあるのだから。

 私が久方ぶりの穏やかな気分に浸っていると、彼が予想外なことを言ってきた。

「そろそろ時間なんだが、よかったらこれを」

 手渡されたのは、ふわふわの狐のぬいぐるみだ。

「頂いてもいいんですか?」
「ああ。だが普通のぬいぐるみではないんだ」
「と、いうと?」
「会話機能がついてる」

 人工知能付きかと少し驚く。捨てても構わないという彼に、そんなことしませんよと答えてその日は別れた。しっかりとぬいぐるみを胸に抱いて。

 彼とは結婚式前の打ち合わせで、後、数回会うことになっている。それを楽しみに思う自分に気づきながらも傍らのぬいぐるみに話しかけてみた。

「こんにちは」
『こんにちは』

 ちゃんと返事をしたと嬉しくなる。

 一人だと余計なことまで考えてしまって心が休まらない。この狐はいい話相手になってくれそうだった。

「これからよろしくね」
『こちらこそ、ミクル』

 名前まで登録されてるのねと目を見開く。最新の機能に驚きながら、これから退屈しなさそうだと、そのふわりとした感触を楽しんだ。



 
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