レンタル彼氏を頼んだら、来たのはアヤカシでした

ぴぴみ

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 その日、私は酔っ払っていた。

「うぅー…あいつら…」

 狐のぬいぐるみ─ウミは、ベッドの上にちょこんと置いてある。その名前通り、海のように深い蒼の石が胸元に飾られ、光を集めるように輝いている。

 ウミは、私の声に気づいてかすぐに反応した。

『…大丈夫ですか?』
「ふふふ。たぶん~」

 頭の中がふわふわとして、全てが曖昧だ。そして何より体が熱くてたまらない。上のパジャマのボタンを危うい手つきで外していく。

『風邪を引きますよ』
「いいのいいの~誰も心配なんてしないんだし…」
『僕は心配です』
「ほんと!?嬉しい~!」

 ウミは優しいねと私は言ったが、優しいのはミクルの方だと言われてしまった。
 いつも日々の細々としたことを話しているが、ちゃん返事が返ってくるので寂しくない。カタコトとはいえ、優しい思いやりを感じられるからかもしれない。

『彼のこと、どう思ってますか?』
「?だ…れのこと」

 いきなり話が飛んだ気がしたが、忘れただけかもしれなかった。さっきまでの会話が思い出せない。

『彼氏としてレンタルされた…』
「あーあの。覚えてますよ~。確か日曜も、会う予定で…」
『元々僕は彼のモノだったので、気になってしまって…』
「なーるほど。クールな美形さんだなぁって…思っておりますよ~」
『どこかで以前会った覚えは?』
「???」
 
 あんなキラキラした美形、一度見たら忘れない。不思議そうな私に気づいたのか、それきりウミがその話題に触れることはなかった。

 頭にぽつぽつと浮かんだ思いのまま、口を開く。心の奥底にまだ未練があったのか、
元彼と話した取り留めのない会話が思い出されては消えていく。

 首を振ると酔いが回ったのか、ぐわんと景色が揺れる。目を閉じ、ベッドに寄りかかる。

「…結構、好きだったのにな…」

 それに対して返ってくる言葉はなく、私は眠気に抗うことなく力をぬいた。

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「─早くあんな男のこと…忘れろミクル」

 だから、同時刻そんな呟きを残した男がいたなどと想像だにしなかった。

 
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