レンタル彼氏を頼んだら、来たのはアヤカシでした

ぴぴみ

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「…その服似合ってる」
「ありがとうございます」

 開口一番に言われた言葉に、悪い気はしなかった。誰にでも言ってるんだろうとか、慣れてるなとか思うことはあったけれど、顔に出すのは失礼だ。俯きがちに礼を言った。

「…固いな」

 そう言って苦笑する狐田こだつかささん。

─イケメンはどんな顔しても絵になるのか

 思わずクッと両瞼を押さえた。

「どうした?」
「いえ…なんでもないです」

 こちらを見ている彼の表情はあまり動いていなかったが、どことなく不思議そうに見える。煩悩を悟られまいと、慌てて話題を変えた。

「そういえば、狐のぬいぐるみ、ありがとうございました!」
「ああ……無理やり押しつけたようなものだったが、気に入ったか?」
「ええ!とても!」
「それは良かった。どんどん話しかけるといい」
「?もしかして、成長とかするんですか」
「…まあそんな感じだ」

 それを聞き、すごい価値があるものなのでは、と不安になった。

「もしかして、結構いいものだったりします?」
「いや自作だから気にしなくていい」

 返ってきた言葉は予想外で、思わず聞き返す。

「え、自作?」
「少しいじっただけだがな」
「すごいですね…」

 和やかに会話は進んでいく。今日は、このまま街歩きをしながら、お互いに慣れることを目的として集まった。もちろんレンタル代は払う。私からの依頼だった。

 当日、万が一彼氏ではないとバレでもしたら、目も当てられない。彼氏彼女らしく振る舞えるように、まず狐田さんの顔に慣れなくてはと気合いを入れる。あまりにも整った顔を前にすると、平常心を保つのも一苦労だ。

「俺のことは司でいい」
「司さん?」

 それでいいというように、狐田─いや司さんが微笑む。既にオーバーキルだったところに手まで取られる。あまりにも自然に。

─い、いつの間に

 手を繋ぎ合う恋人同士にしか見えない状態で、デートは始まった。
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