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4.久しぶりのリュシアン様
②
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部屋の中で歩き回り、どうしようかと考える。部屋を出るべきなのはわかっている。
(監視係さん、また来てくれないかしら)
とにかく自分以外の人の姿を見たかった。けれど、監視係さんは次に来るのは七日後だと言っていたから、今日来てくれることはあり得ないだろう。
がっくり肩を落としたところで、昨日もらった魔石のことを思い出す。そうだ。プレートにこの石をはめれば、事務所に連絡が取れると言っていた。
ちょっと元気が湧いてきた。玄関ホールまで行けば、監視係さんに連絡をして、人の声が聞けるかもしれない。屋敷の中を歩くのは怖いけれど、それを目標にすれば何とか頑張れる気がする。
私は魔石を握りしめ、気合いを入れてドアノブに手をかけた。
屋敷の中は静かで、女性の姿は見当たらなかった。けれど油断してはならない。昨日も何も起こらないと思ったところで、突然人影が現れたのだ。
幽霊相手に意味があるかはわからないけれど、息を潜めてそろそろと音を立てないように歩く。
ゆっくり階段を降りて、応接間を通り、何とか玄関ホールにたどり着いた。
扉横のプレートのそばまで行き、緑色の魔石をはめ込む。すると石がぱっと光った。これでやっと人の声が聞ける。しかしそわそわしながら待っていたのに、プレートからは一向に人の声は聞こえてこない。
もう一度石をはめ込んでみる。しかし、光るだけで事務所に繋がる様子はない。
私はがっくり肩を落とした。
「留守なのかしら……。それとも、壊れているとか……?」
ひとまずは諦めるしかないようだ。私は魔石を懐にしまい直し、玄関ホールを後にした。
一度部屋の外に出てみると怖さは少しだけ和らいで、再び屋敷内を探ってみる気になった。
とはいっても一階の書庫に近づくのは嫌だったので、今日は二階を回ることにする。
二階に上がる前に、忍び足で食堂から食料と瓶に入れた水を持ち出し、昨日廊下に落とした本を大急ぎで回収した。それらを寝室に置いてから、二階の探索をスタートする。
一日目に全ての部屋をざっと見回しはしたので、今日は一つ一つの部屋を細かく調べてみることにした。
二階には、人の住んでいた気配を感じさせる部屋がいくつかあったから、そういう部屋を探れば何か屋敷についての情報がわかるかもしれない。
初日に「許さない」と書かれた手紙を見つけてしまったのは、奥から二番目の部屋。怖いのでそこを調べるのは後に回すことにして、まずは拠点にした部屋の左隣の部屋を探ることにする。
そこは私が使っている部屋と同じく、ベッドと机、箪笥にクローゼットのある普通の部屋だった。
机の横にはトランクと木箱、数冊の本、それに色褪せたショールのようなものが小さくまとめて置いてある。持ち物を見る限りここにいた人は普通の人物に思えて、少し安心した。
けれど、以前ここを使っていた人はこの荷物を持ち帰らなかったのかしら、と疑問が頭をかすめた。
トランクを開けてみる。中にはほとんど何も入っていない。何も書かれていない紙が数枚に、羽根ペン、毛糸と編み棒が入っているだけだ。
木箱のほうにはシンプルなドレス数着とエプロンなどが入っていた。ここで生活していたのは女性だったんだなと思った。
中に入っているドレスを一つ一つ確認していると、小さな毛糸の塊が床に滑り落ちた。
拾い上げてみると、それは小さな手袋だった。私の手のひらの半分ほどのサイズしかない。幼児用のだろうか。
先程トランクの中に入っていた毛糸を思い出し、取り出して並べてみる。二つは同じ薄黄色をしていた。
ここに入っていたと思われる女性には子供がいたのかもしれないと思いながら、ドレスを畳んで木箱に戻し、その上に小さな手袋を載せた。
その後も部屋中をくまなく探し回った。しかし、あるのは普通の生活雑貨ばかりで、お屋敷の秘密に関わるようなものは何も見つからない。
もっとも、もしそんなものがあるのなら、監視係さんたちが見つけてとっくに処分してしまっただろうけれど。
(監視係さん、また来てくれないかしら)
とにかく自分以外の人の姿を見たかった。けれど、監視係さんは次に来るのは七日後だと言っていたから、今日来てくれることはあり得ないだろう。
がっくり肩を落としたところで、昨日もらった魔石のことを思い出す。そうだ。プレートにこの石をはめれば、事務所に連絡が取れると言っていた。
ちょっと元気が湧いてきた。玄関ホールまで行けば、監視係さんに連絡をして、人の声が聞けるかもしれない。屋敷の中を歩くのは怖いけれど、それを目標にすれば何とか頑張れる気がする。
私は魔石を握りしめ、気合いを入れてドアノブに手をかけた。
屋敷の中は静かで、女性の姿は見当たらなかった。けれど油断してはならない。昨日も何も起こらないと思ったところで、突然人影が現れたのだ。
幽霊相手に意味があるかはわからないけれど、息を潜めてそろそろと音を立てないように歩く。
ゆっくり階段を降りて、応接間を通り、何とか玄関ホールにたどり着いた。
扉横のプレートのそばまで行き、緑色の魔石をはめ込む。すると石がぱっと光った。これでやっと人の声が聞ける。しかしそわそわしながら待っていたのに、プレートからは一向に人の声は聞こえてこない。
もう一度石をはめ込んでみる。しかし、光るだけで事務所に繋がる様子はない。
私はがっくり肩を落とした。
「留守なのかしら……。それとも、壊れているとか……?」
ひとまずは諦めるしかないようだ。私は魔石を懐にしまい直し、玄関ホールを後にした。
一度部屋の外に出てみると怖さは少しだけ和らいで、再び屋敷内を探ってみる気になった。
とはいっても一階の書庫に近づくのは嫌だったので、今日は二階を回ることにする。
二階に上がる前に、忍び足で食堂から食料と瓶に入れた水を持ち出し、昨日廊下に落とした本を大急ぎで回収した。それらを寝室に置いてから、二階の探索をスタートする。
一日目に全ての部屋をざっと見回しはしたので、今日は一つ一つの部屋を細かく調べてみることにした。
二階には、人の住んでいた気配を感じさせる部屋がいくつかあったから、そういう部屋を探れば何か屋敷についての情報がわかるかもしれない。
初日に「許さない」と書かれた手紙を見つけてしまったのは、奥から二番目の部屋。怖いのでそこを調べるのは後に回すことにして、まずは拠点にした部屋の左隣の部屋を探ることにする。
そこは私が使っている部屋と同じく、ベッドと机、箪笥にクローゼットのある普通の部屋だった。
机の横にはトランクと木箱、数冊の本、それに色褪せたショールのようなものが小さくまとめて置いてある。持ち物を見る限りここにいた人は普通の人物に思えて、少し安心した。
けれど、以前ここを使っていた人はこの荷物を持ち帰らなかったのかしら、と疑問が頭をかすめた。
トランクを開けてみる。中にはほとんど何も入っていない。何も書かれていない紙が数枚に、羽根ペン、毛糸と編み棒が入っているだけだ。
木箱のほうにはシンプルなドレス数着とエプロンなどが入っていた。ここで生活していたのは女性だったんだなと思った。
中に入っているドレスを一つ一つ確認していると、小さな毛糸の塊が床に滑り落ちた。
拾い上げてみると、それは小さな手袋だった。私の手のひらの半分ほどのサイズしかない。幼児用のだろうか。
先程トランクの中に入っていた毛糸を思い出し、取り出して並べてみる。二つは同じ薄黄色をしていた。
ここに入っていたと思われる女性には子供がいたのかもしれないと思いながら、ドレスを畳んで木箱に戻し、その上に小さな手袋を載せた。
その後も部屋中をくまなく探し回った。しかし、あるのは普通の生活雑貨ばかりで、お屋敷の秘密に関わるようなものは何も見つからない。
もっとも、もしそんなものがあるのなら、監視係さんたちが見つけてとっくに処分してしまっただろうけれど。
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