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4.博物館見学
①
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博物館見学の日がやって来た。
館内につくと、早速グループごとに分かれて動き始める。
「あの、エルランド様。よろしくお願いします。なんだか強引に入れてもらう形になってしまい、すみません」
「いや、気にしないでくれ。フェリシアの方から君を誘ったんだから」
僕は無表情で言うか笑顔を作るか迷って、結果曖昧な笑顔で返事をすることにした。
何の罪もないクリスティーナに冷たくするわけにはいかないが、フェリシアに誤解されるのは困る。フェリシアは予知夢のせいで、僕がクリスティーナを好きになるという突拍子もない未来を信じているのだから。
僕は絶対にフェリシアを誤解させるようなことはしないぞ!と意気込んだ。
そしてフェリシアの方を向き、彼女の小さな手を取りながら笑顔で尋ねる。
「フェリシア!最初はどこへ行く?一階から順番に回ろうか。三階から見た方が空いていて見やすいかもしれないね。あ、先に庭園を回るのもいいかも」
「あの、エルランド様、手が」
フェリシアは繋がれた手を見ながら、恥ずかしそうな表情で言う。
「いいじゃないか。婚約者なんだし」
「でも外ですわよ。クラスメートがたくさんいますのに」
「君だってよく教室や廊下で僕の腕に抱き着いてきていたじゃないか」
僕が指摘すると、フェリシアは押し黙る。それから小さく息を吐いて謝って来た。
「過去のことは言わないくださいまし。これでも反省していますのよ」
「反省することないのになぁ」
できるならまた飛びついて来てほしいんだけど。そう言うより先に、フェリシアは僕の手をそっと外して移動する。代わりに彼女はクリスティーナを僕の横に移動させた。
「お二人とも私のことは影と思ってくれて構いませんわ。どうぞ二人でお話ししてください」
「ちょっと何言ってるんだよ。フェリシア」
「そうですよ。フェリシア様を影なんて思えません」
僕とクリスティーナの言葉など意にも介さず、フェリシアは後ろに下がってしまった。話しかけても微笑むだけなので、僕はクリスティーナと当たり障りのない会話をしながら博物館を回ることになった。
かわいそうなクリスティーナは、公爵令嬢と第三王子に挟まれて、ずっと困惑顔で館内を歩いていた。彼女にしてみればわけがわからない状況だったろう。僕にもわけがわからなかったけれど。
「私、お庭を見てきたいですわ」
ずっと黙って微笑むだけだったフェリシアがやっと口を開いた。嬉しくなって僕は言う。
「わかった、庭だね!たくさんの魔法植物が植えてあるんだってね。おもしろそうじゃないか。早速行こう!」
「いいえ。庭には私一人で行ってきます。エルランド様はクリスティーナさんとこのまま館内を回っていてください」
フェリシアは隙のない完璧な笑みを浮かべて言う。
僕は言葉に詰まってしまった。
「なんでそんなことを言うんだい?三人で行けばいいじゃないか」
「私がいるとお邪魔だと思ったのです」
「そんなわけないだろ。一体どうしたら信じてくれるんだ」
悲しくなって、半ば叫ぶように僕は言う。フェリシアはなぜこんなに頑ななんだろう。そんなに僕は信用ならないのだろうか。いや、それとも……。一瞬絶望的な答えが浮かんできて、慌てて振り払う。
館内につくと、早速グループごとに分かれて動き始める。
「あの、エルランド様。よろしくお願いします。なんだか強引に入れてもらう形になってしまい、すみません」
「いや、気にしないでくれ。フェリシアの方から君を誘ったんだから」
僕は無表情で言うか笑顔を作るか迷って、結果曖昧な笑顔で返事をすることにした。
何の罪もないクリスティーナに冷たくするわけにはいかないが、フェリシアに誤解されるのは困る。フェリシアは予知夢のせいで、僕がクリスティーナを好きになるという突拍子もない未来を信じているのだから。
僕は絶対にフェリシアを誤解させるようなことはしないぞ!と意気込んだ。
そしてフェリシアの方を向き、彼女の小さな手を取りながら笑顔で尋ねる。
「フェリシア!最初はどこへ行く?一階から順番に回ろうか。三階から見た方が空いていて見やすいかもしれないね。あ、先に庭園を回るのもいいかも」
「あの、エルランド様、手が」
フェリシアは繋がれた手を見ながら、恥ずかしそうな表情で言う。
「いいじゃないか。婚約者なんだし」
「でも外ですわよ。クラスメートがたくさんいますのに」
「君だってよく教室や廊下で僕の腕に抱き着いてきていたじゃないか」
僕が指摘すると、フェリシアは押し黙る。それから小さく息を吐いて謝って来た。
「過去のことは言わないくださいまし。これでも反省していますのよ」
「反省することないのになぁ」
できるならまた飛びついて来てほしいんだけど。そう言うより先に、フェリシアは僕の手をそっと外して移動する。代わりに彼女はクリスティーナを僕の横に移動させた。
「お二人とも私のことは影と思ってくれて構いませんわ。どうぞ二人でお話ししてください」
「ちょっと何言ってるんだよ。フェリシア」
「そうですよ。フェリシア様を影なんて思えません」
僕とクリスティーナの言葉など意にも介さず、フェリシアは後ろに下がってしまった。話しかけても微笑むだけなので、僕はクリスティーナと当たり障りのない会話をしながら博物館を回ることになった。
かわいそうなクリスティーナは、公爵令嬢と第三王子に挟まれて、ずっと困惑顔で館内を歩いていた。彼女にしてみればわけがわからない状況だったろう。僕にもわけがわからなかったけれど。
「私、お庭を見てきたいですわ」
ずっと黙って微笑むだけだったフェリシアがやっと口を開いた。嬉しくなって僕は言う。
「わかった、庭だね!たくさんの魔法植物が植えてあるんだってね。おもしろそうじゃないか。早速行こう!」
「いいえ。庭には私一人で行ってきます。エルランド様はクリスティーナさんとこのまま館内を回っていてください」
フェリシアは隙のない完璧な笑みを浮かべて言う。
僕は言葉に詰まってしまった。
「なんでそんなことを言うんだい?三人で行けばいいじゃないか」
「私がいるとお邪魔だと思ったのです」
「そんなわけないだろ。一体どうしたら信じてくれるんだ」
悲しくなって、半ば叫ぶように僕は言う。フェリシアはなぜこんなに頑ななんだろう。そんなに僕は信用ならないのだろうか。いや、それとも……。一瞬絶望的な答えが浮かんできて、慌てて振り払う。
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