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信じられない
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「どこまで話したかしら……? あ、そうね。娘にとって大変なのは公爵夫人だけじゃなかった、くらいまで話していたわね。つまり、それは、どういうことかわかる、ララベルさん?」
王女様は私に鋭い視線を向けて、聞いてきた。
私は、視線をそらさずに答えた。
「まわりの貴族の方たちも好意的ではなかった、ということでしょうか……?」
「その通りよ、ララベルさん。同じただの人だから、娘の状況が想像しやすかったようね」
嫌味な口調で言った王女様。
人だから想像しやすい? どう考えても、普通に、そう思うよね。
まあ、「ただの人」っていうフレーズを言いたいだけなのかも。
王女様は冷たい笑みを浮かべて、話を続けた。
「アジュお姉さまの婚約者候補でもあった将来有望な公爵家子息の番が見つかった、だけでも、大ニュースなのに、その番が、他国の人間で、平民で、しかもただの人だったから、貴族の間では、それはそれは大騒ぎになったわ。そんななか、公爵夫人は容赦なく、娘を茶会やパーティーに参加させたの。生粋の獣人しかいないところに、ただの人が放り込まれたのよ? 娘は、貴族社会にとびこんできた異物として、どこに行っても、注目の的になった。もちろん、公爵子息が護衛のようにひっついて、守っていたし、アジュお姉さまも、自分が参加できる時は、できるだけ参加して、娘がまわりの貴族と打ち解けられるよう、必死になっていたわ。ただの人にそこまで気をつかうなんて、バカみたいでしょう? アジュお姉さまは、誇り高い竜の獣人であるジャナ国王女としての自覚が足りないのよ。お父様はなんで、そんなアジュお姉さまを王太女に指名したのかしら。信じられないわ……」
と、憎々し気に言った王女様。
なんというか、相当、王太女になりたかったんだろうし、未だ、あきらめてない感じがびしびしと伝わってくる。
でも、優しいお姉さまが王太女様であって、本当に良かった。
それに、王女様のお姉さまを王太女様に指名された国王様も信頼できそうな方だなと、禍々しいオーラを放つ王女様を見ながら思う。
「王女。それで、その娘はそれからどうなったんだ?」
第二王子が焦れたように促した。
すると、王女様が当時を思い出したのか、くすりと笑った。
「公爵子息がそばにいたから、直接、身体的に危害を加えられることはなかったけれど、好奇の視線や嘲笑、聞こえてくる悪口から、娘を守ることはできなかったわね。なかでも、令嬢たちからの風当たりは強かったわ。身分の高い、見目のいい公爵子息は大人気だったから。アジュお姉さまの婚約者候補だった時は、黙っていた令嬢たちも、相手が平民でただの人だと、納得がいかない。なかでも、公爵子息と同じクロヒョウの獣人で侯爵家の令嬢がいたの。彼女は、公爵子息がアジュお姉さまの正式な婚約者になるまではあきらめない、自分が番かもしれないから、と言って、婚約者を決めずにいたほど、公爵子息に執心だったわ。その令嬢は、取り巻きの令嬢たちと一緒に、娘に嫌がらせをはじめた。茶会やパーティーでは、男性である公爵子息だと、どうしても、そばにいられない状況はあるでしょう? その隙をついて、色々したんでしょ。まあ、私だったら、やられたら、何倍にもしてやり返すけれど、無力なただの人である娘は、我慢するしかなかったみたい。公爵子息の隣で、バカみたいに、のんきに、笑っていた娘が、だんだん笑わなくなっていったわ」
と、王女様は楽しそうに言った。
笑わなくなった娘さんを思うと、胸がしめつけられる。
と、同時に、そんな娘さんのことを、おもしろがっているような王女様に心底腹が立った。
「まあ、ララベルさん、怖い顔……フフ。やっぱり、ただの人だから、感情移入してしまうのね?」
「ララはものすごく優しいですから。人の不幸をおもしろがるような王女とはまるで違います」
ルーファスの冷たい声が響いた。
いや、ルーファス……。
私の優しさはごく普通レベルだし、なにより、王女様になんてことを。
まあ、人の不幸をおもしろがっているのは本当だけど、その言い方……。
そんなルーファスに怒ることもなく、王女は嬉しそうに微笑んだ。
「もう、ルーファスったら、ひどいわね……。でも、なんの役にも立たない優しさより、力でおさえこめる強さのほうがいいわ。だって、アジュお姉さまは、あんなに娘に優しくしていても、娘を守ることなんてできなかったものね。もし、私が娘を守りたいと思ったのなら、まわりの令嬢たちなんか竜の力で簡単におさえこめたのに。……まあ、ただの人である娘を守る義理もないから、しなかったけどね」
自慢げに言う王女様が信じられない……。
すでに過去におこったことなので、今更、どうすることもできないけれど、娘さんがその状況から一刻も早く逃れて、幸せになって欲しい……。
思わず、こぶしをにぎりしめて、そう願っていると、王女様は、そんな私の願いを打ち砕くようなことを語り始めた。
王女様は私に鋭い視線を向けて、聞いてきた。
私は、視線をそらさずに答えた。
「まわりの貴族の方たちも好意的ではなかった、ということでしょうか……?」
「その通りよ、ララベルさん。同じただの人だから、娘の状況が想像しやすかったようね」
嫌味な口調で言った王女様。
人だから想像しやすい? どう考えても、普通に、そう思うよね。
まあ、「ただの人」っていうフレーズを言いたいだけなのかも。
王女様は冷たい笑みを浮かべて、話を続けた。
「アジュお姉さまの婚約者候補でもあった将来有望な公爵家子息の番が見つかった、だけでも、大ニュースなのに、その番が、他国の人間で、平民で、しかもただの人だったから、貴族の間では、それはそれは大騒ぎになったわ。そんななか、公爵夫人は容赦なく、娘を茶会やパーティーに参加させたの。生粋の獣人しかいないところに、ただの人が放り込まれたのよ? 娘は、貴族社会にとびこんできた異物として、どこに行っても、注目の的になった。もちろん、公爵子息が護衛のようにひっついて、守っていたし、アジュお姉さまも、自分が参加できる時は、できるだけ参加して、娘がまわりの貴族と打ち解けられるよう、必死になっていたわ。ただの人にそこまで気をつかうなんて、バカみたいでしょう? アジュお姉さまは、誇り高い竜の獣人であるジャナ国王女としての自覚が足りないのよ。お父様はなんで、そんなアジュお姉さまを王太女に指名したのかしら。信じられないわ……」
と、憎々し気に言った王女様。
なんというか、相当、王太女になりたかったんだろうし、未だ、あきらめてない感じがびしびしと伝わってくる。
でも、優しいお姉さまが王太女様であって、本当に良かった。
それに、王女様のお姉さまを王太女様に指名された国王様も信頼できそうな方だなと、禍々しいオーラを放つ王女様を見ながら思う。
「王女。それで、その娘はそれからどうなったんだ?」
第二王子が焦れたように促した。
すると、王女様が当時を思い出したのか、くすりと笑った。
「公爵子息がそばにいたから、直接、身体的に危害を加えられることはなかったけれど、好奇の視線や嘲笑、聞こえてくる悪口から、娘を守ることはできなかったわね。なかでも、令嬢たちからの風当たりは強かったわ。身分の高い、見目のいい公爵子息は大人気だったから。アジュお姉さまの婚約者候補だった時は、黙っていた令嬢たちも、相手が平民でただの人だと、納得がいかない。なかでも、公爵子息と同じクロヒョウの獣人で侯爵家の令嬢がいたの。彼女は、公爵子息がアジュお姉さまの正式な婚約者になるまではあきらめない、自分が番かもしれないから、と言って、婚約者を決めずにいたほど、公爵子息に執心だったわ。その令嬢は、取り巻きの令嬢たちと一緒に、娘に嫌がらせをはじめた。茶会やパーティーでは、男性である公爵子息だと、どうしても、そばにいられない状況はあるでしょう? その隙をついて、色々したんでしょ。まあ、私だったら、やられたら、何倍にもしてやり返すけれど、無力なただの人である娘は、我慢するしかなかったみたい。公爵子息の隣で、バカみたいに、のんきに、笑っていた娘が、だんだん笑わなくなっていったわ」
と、王女様は楽しそうに言った。
笑わなくなった娘さんを思うと、胸がしめつけられる。
と、同時に、そんな娘さんのことを、おもしろがっているような王女様に心底腹が立った。
「まあ、ララベルさん、怖い顔……フフ。やっぱり、ただの人だから、感情移入してしまうのね?」
「ララはものすごく優しいですから。人の不幸をおもしろがるような王女とはまるで違います」
ルーファスの冷たい声が響いた。
いや、ルーファス……。
私の優しさはごく普通レベルだし、なにより、王女様になんてことを。
まあ、人の不幸をおもしろがっているのは本当だけど、その言い方……。
そんなルーファスに怒ることもなく、王女は嬉しそうに微笑んだ。
「もう、ルーファスったら、ひどいわね……。でも、なんの役にも立たない優しさより、力でおさえこめる強さのほうがいいわ。だって、アジュお姉さまは、あんなに娘に優しくしていても、娘を守ることなんてできなかったものね。もし、私が娘を守りたいと思ったのなら、まわりの令嬢たちなんか竜の力で簡単におさえこめたのに。……まあ、ただの人である娘を守る義理もないから、しなかったけどね」
自慢げに言う王女様が信じられない……。
すでに過去におこったことなので、今更、どうすることもできないけれど、娘さんがその状況から一刻も早く逃れて、幸せになって欲しい……。
思わず、こぶしをにぎりしめて、そう願っていると、王女様は、そんな私の願いを打ち砕くようなことを語り始めた。
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