私が一番嫌いな言葉。それは、番です!

水無月あん

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違うの!?

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「俺はラジュ王女の指示でマラミという花のあたりに前もって潜んでいた。ラジュ王女がロイド公爵のご子息、ルーファス様をそこへおびきだす段取りだったからだ」

やっぱり、私の思ったとおり! 
でも、なんでマラミのところだったんだろう? 

と思ったら、私の疑問を察したように、ラッカルさんが早口で説明をつづけた。

「この国にしか咲かない花を見たいと言えば、自然に庭にでられるからだろう。この公爵邸で茶会が開かれることが決まった直後、ラジュ王女は第二王子に、この公爵邸について調べてほしいと頼んでいた」

「あ、そういえば……、第二王子、マラミのことを第二王子から聞いたと王女様が言った時、『花? そういえばそんなことが書いていたか……』とか、言いかけて、変だと思ってたんだよね。つまり、王女様にこの屋敷を調べるように指示された第二王子が、人を使って調べさせて、その結果の資料を読んだから、そう言ったってこと!?」

ラッカルさんがうなずいた。

「ああ、第二王子はすぐに、調べた資料をラジュ王女に持ってきていた。その時、俺は部屋の入口で護衛していたから、ふたりの話し声が聞こえたが、第二王子は、公爵家の屋敷は調べるのが難しくて、内部の情報は得られず、屋敷の外側しかわからなかったと言っていた。つまり、庭だ。が、ラジュ王女は資料に目をとおして、これで十分と満足そうに言っていたから、あの花を口実に使おうと思ったんじゃないかと思う。第二王子が持ってきた資料には、庭の地図もあり、俺たち護衛は頭に入れさせられた」

邪なことを企む王女様と、他国の王女にほいほいと利用される第二バカ王子に怒りが沸騰してきた!

でも、ダメだ。
ルーファスを守るため、冷静にならなきゃ!

私はわきあがる怒りをおさえこみながら、ラッカルさんに肝心のことを直球で聞く。

「ラッカルさん。王女様はルーファスを庭におびきよせて、ジャナ国に誘拐するつもりなんだよね?」

「誘拐……? いや、それはない」

ラッカルさんが即答した。

「え、違うの!? 私は、てっきり、王女様がルーファスを気に入って、無理やり、さらっていくつもりなのかと思ってた!」

「確かに、ラジュ王女はルーファス様に相当いれこんでいる。無理やり、さらっていきたいくらいには欲しているだろうな」

「やっぱり!」

「ルーファス様は王弟のご子息であり、あの美形、しかも、竜の獣人としての力も強そうだ。おそらくラジュ王女は伴侶候補として見ているんだろう。ラジュ王女の虚栄心を満たすにはぴったりの相手だからな。この国を視察するという名目で来ているが、ラジュ王女の目的は伴侶探しだと俺は思っている。案内役のルーファス様を見た瞬間から、ラジュ王女の目の色が変わった。視察している間、ラジュ王女は俺たち護衛に、少し離れたところで護衛するよう指示をだした。ルーファス様とできるだけふたりになりたかったんだろう。そんな風に、あからさまに好意を見せていた。ラジュ王女は恐ろしい方だが見目はいい。ころっといく男もいるんだが、ルーファス様はまるで相手にしなかったし、ラジュ王女が近づきすぎると上手く避けていた。眼中にもない感じだった。……まあ、ララベル様みたいな人が近くにいるんじゃ、そうなるだろうが……」

そう言って、私を優しい目で見たラッカルさん。

私が近くにいるから……?
あ、なるほど、ラッカルさんは私のしてきたことを察してくれたんだ!

「ルーファスって心も天使だけど、見た目も美しく輝いているから、小さい頃から、いろんな人をおびき寄せてきたんだよね。それなのに、自分がどれだけ魅力的かなんてことには本当に無関心で、危なっかしいというか……。だから、私は、ルーファスに気をつけるようしつこいくらい言ってきたし、邪な視線からは盾になって守ってきた。私がいないところで、ちゃんと、王女様のことを上手く避けていたということは、私の長年の忠告がいきてきたってことだね!」
と、嬉しくなって、つい、自慢してしまった私。

「いや、俺が言ったのはそういう意味じゃないが……」
と、つぶやいたラッカルさん。

残念なものを見るような目で私を見たあと、気を取り直したように話しだした。

「ともかく、ルーファス様に気がなくても、簡単にはあきらめないくらい、ラジュ王女はルーファス様を狙っている。だが、さすがに誘拐は無理だ。あれほど強い竜の獣人をさらうこと自体困難だし、なにより、公爵家のご子息を他国の王族が無理やりさらおうとしたら、国同士の戦になる」

「戦……。あ、そっか。そうだよね……。じゃあ、王女はルーファスを呼び出して、何をしようとしてたの!? あ、もしかして、……ただ告白しようとしてただけとか……?」

私が悪いほうに考えすぎてたんだろうかと思った瞬間、ラッカルさんが小さく笑った。

「考えが極端だな。だが、ラジュ王女は告白するためだけに呼び出すような、かわいらしい方じゃない。そもそも、あれだけ迫って無視されてるんだからな。ルーファス様に気がないことくらい、ラジュ王女でも気づいているだろう。ただ、自分の思い通りにならないことを認めてはいないだろうが。……話を元に戻すと、俺が指示されていたことは、茶会が始まったあと、あの花の近くに前もって潜んでおくこと。誰かが近づいてきたら排除しておき、その後、ラジュ王女たちが到着したら、指示がでるまでは潜んだままでいること。つまり、指示に従って動けということだ。それが全てで、それ以上のことはわからない」

「排除……? それって、まさか、殺すってこと!?」

「いや、ラジュ王女がしようとすることを邪魔されないよう、遠ざけておくということだ。まあ、あのあたりで会うのは庭師だけだろうと想定していたから、もし、会った時は、この庭師の小屋に運んで、出られないようにしておくつもりだった」

「なのに、予定にない私までいたってことね……」

ラッカルさんがうなずいた。

「ああ、そうだ。だから、とっさに、庭師のほうを眠らせて、ララベル様をここに移動させることにした。俺はすぐにあの場所に戻らないといけない。悪いが、ララベル様はもうしばらく、ここにいてくれ。ここにいれば安全だからな」

「うん、わかった……なんて言うと思う!? 一緒に行く!」

私は声を張りあげた。


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