上 下
5 / 23

コリーヌ様

しおりを挟む
今日は、アルのお屋敷に遊びに行くことになった。
アルのお母さまのコリーヌ様が、私をお茶に招待してくださったから。

が、私の両親と執事のジュードは、心配して頭をかかえてた。

あのね、私だって、ちゃんとしようと思えば、貴族令嬢らしく、きちんとできるよ?

ということで、朝から、よそいきのふわふわしたドレスを着せられ、金色のくりんくりんのくせ毛の髪も、きれいに結んでもらって、しっかりと貴族令嬢らしい装いだ。

手土産をもたされて、いざ、お隣のお屋敷に出発! 
そして、ものの数十秒で到着。

アルが玄関で待ってくれていたが、私を見たのに珍しく無言だ。

もしや、何か変なのかな?

「ええと、アル。私、きちんと貴族令嬢に見えるよね?」
不安になって、確認する。

フッと笑い声がして、見ると、すごい美しい女性が立っていた。

「いらっしゃい、ライラちゃん。私がアルフォンスの母のコリーヌです。
今日は来てくれてありがとう」
と、優しく微笑んだ。

突然のコリーヌ様の登場に、緊張してしまい、
「はじめまして、ライラです。お招きいただきまして、ありがとうございましゅ」
と、最後にかんでしまった。

プハッとふきだして、
「そこでかむか、普通?」
と、笑い出したアル。

黙ってたくせに、しゃべったと思えば、ほんと失礼だね?

とはいうものの、コリーヌ様の手前、恥ずかしくて真っ赤になってしまった。

そんな私を見て、コリーヌ様が、
「さっき、アルが黙ってたでしょ。あれはね、ライラちゃんが、かわいくってびっくりしたのよ」
そう言うと、いたずらっぽく微笑んだ。

「なっ…、そんなことない!」
と、アルが叫ぶ。耳が赤くなっていた。

耳が赤くなってるアルと顔が赤くなってる私。
どっちも同じだからいいか。

それより、気になるのは、コリーヌ様の頭に黒い煙が見えること。
そして、コリーヌ様の顔色も悪い。

私は邪気だけを取るから、病気自体を治すことはできないけど、この黒い煙は濃いから、取ったら少しは楽になりそう。

案内してくださるコリーヌ様のすぐ後ろを歩きながら、さりげなーく、自分の両手をあげ、コリーヌ様の頭にむかって自分の手のひらをむけ、すこーしだけ動かしてみる。

これで、取れるかな?

歩きながら両手を自分の頭くらいまで上げてるから、かなり不審かもしれないが、誰も見てませんように…。

と、思った瞬間
「両手をあげてどうした。ライラ、もしかして…、頭がかゆいのか?」
と、アルが聞いてきた。

「え?! あ、…う、うん。ちょっと、慣れない髪型で、かゆいかな?」
と、言いながら、両手の甲で頭をさするようにする。

っていうか、アル! そっちのほうが変でしょ?! 
私の能力を知ってるんだから察してよ?

ほら、メイドさんたちが、かわいそうな子を見る目で私を見てるじゃない?

コリーヌ様がふりむいて、
「ライラちゃんって、おもしろくてかわいいわね」
と、にっこりと微笑みかけてくれた。

コリーヌ様の一言で、みんなの見る目が、かわいそうな女の子から、おもしろい女の子に一瞬にして変わった。
ありがとうございます! ここに、女神がいました!! 空気の読めないアルのお母さまとは思えない!

ということで、手のひらを見たら、小さな豆粒ほどの花の種ができていた。
あの一瞬で、少しは黒い煙が取れたということだ。

お招きされたお屋敷について早々、頭をかく貴族令嬢みたいに思われたけど、そのかいがあったね。

今日、帰るまでに、あの黒い煙をとってしまおう! 女神さまのために!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

乙女ゲーム攻略対象者の母になりました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:220pt お気に入り:6,663

そちらから縁を切ったのですから、今更頼らないでください。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,735pt お気に入り:2,077

詩集「支離滅裂」

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:1,641pt お気に入り:2

危険な森で目指せ快適異世界生活!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,508pt お気に入り:4,133

真実の愛がどうなろうと関係ありません。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:6,008pt お気に入り:2,924

白い結婚の契約ですね? 喜んで務めさせていただきます

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,473pt お気に入り:63

処理中です...