とけい屋

水無月あん

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写真

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おそるおそる聞いたぼくに、男の人はフッと笑った。

「いや、それはない。ぼくのおばあちゃんは、幽霊になってまで働いたりしないよ。死んだら、まだ行ってない国に飛んで行くんだって、楽しそうに言ってたからね。それに、さっき、小さいおばあさんって言ったよね。でも、この時代の人にしたら、すごく背が高いんだ。……ああ、ほら、こんな感じの人だったから」

ダンボール箱の中から一枚の写真をとりだして、見せてくれた。

写真には、すらっとした女の人がうつっていた。
黄色のスカーフを颯爽と首にまき、サングラスをかっこよくかけている。

確かに、昨日、ぼくが見た小さなおばあさんとは全然違う人だ。

その女の人の足元には、灰色の大きな猫がすわっていた。

ん……?
なんだか、このシルエット、見覚えが……。

あっ! 昨日の小さなおばあさんに似ているんだ。

でも、猫だよ? ありえない……。
それに、あのおばあさん、しゃべってたじゃないか……。

ぼくがじっと写真を見ていると、男の人がのぞきこんできた。

「ああ、これは、ハチ。おばあちゃんが飼っていたんだ」

そういって、写真の中の灰色の猫を指さした。

ありえないと思いつつ、ぼくは頭の中で、この灰色の猫の頭に、黄色のスカーフをまき、大きなサングラスをかけさせてみた。

やっぱり、似てる……。

薄暗くて、ぼんやりとしか見えなかったけれど、灰色の服を着ているように見えたのが、灰色の毛だったと思うと、すべてがしっくりきた。

「あの、この猫、……じゃなくて、ハチ。今は、どこにいるんですか……?」
と、聞いてみた。

「それがね、おばあちゃんが死んだとき、いなくなったんだ……」

男の人が寂しそうに言った。

うーん……、ありえないけれど、言わずにはいられない。
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