天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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ごめんなさい

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「ただいま帰りました」

ロイドだ!

「早かったわね! 薬はそろったの?」


「はい、そろいました。ドーラさんに持っていってきますね」
そう言うと、素早く立ち去った。

と、その時、ブザーがなった。何の音かしら?

「誰か来たみたい」
ダニエルは、そう言うと、玄関に向かった。

「じゃあ、お昼ご飯の邪魔しちゃ悪いし、私たちも、そろそろ帰りましょうか?」
と、デュラン王子に声をかける。

「そうだね。ドーラさんも落ち着いたしね」

「ほんと、デュー先生のおかげだわ! マルク、デュー先生の治療、すごかったんだからね!」
と、マルクに教えてあげる。

「かわいい助手さんも優秀だったよ。ね、アディー」
デュラン王子が甘い微笑みを返してくる。

そこへ、
「へええ、アディー? それって、だれのこと?」
と、凍てつくような声が聞こえてきた。

はっと見ると、ダニエルの横に、ユーリが立っている。

あ、今のブザー、ユーリだったんだ。
…って、なんでここにいるの?!
そして、なんで、ここがわかったの?! 怖いんですが?!
私の頭は、すっかりパニック状態だ。

顔をこわばらせたダニエルが、私に聞いてきた。
「この人、アデル王女の婚約者だって言うんだけど。アディーって王女様なの?! デュー先生の助手のアディーじゃないの?!」

ダニエルがなんだか泣き出しそう! どうしよう!
ドーラさんを安心させるための設定だったけれど、嘘ついてたから、傷つけたのかしら?

魔王も怖いけれど、まずは、ダニエルよ!
こうなったら、言い訳せずに、謝るのが一番!
誠心誠意、謝るのみ!

「嘘ついて、ごめんなさいっ、ダニエル! 私、本当はアデルなの! 確かに、今日だけ助手ってことになってるけど、本業は王女なの! 本当に本当にごめんなさいっ!」

私は、がばっと思いっきり頭をさげた。

「…」

ええと、えらく静かだわね。
そろりと、頭をあげてみる。

あっけにとられているダニエル。
そして、なんともいえない顔をしているマルク。
今にも笑い出しそうなデュラン王子。
魔王は…、怖くて見れません。

みなさん、どうかしましたか?
って、思ったら、ダニエルがぽつんと言った。

「…びっくりした」

え?

「王女様って聞いて、ショックをうけたけど、今ので全部とんだ」

ん? どういう意味でしょうか?

「わかる…」
マルクがしんみりと相槌をうつ。

本当に、どういう意味でしょうか?

デュラン王子が、クスッと笑って、つぶやいた。

「王女が本業って…。しかも、王女らしからぬ、あの潔い頭のさげかた、すごいよね。さすが、アディー。予想をこえてくるね」

え、王女らしからぬ? どういうことかしら?

すると、ダニエルが、
「王女様でも、助手でも、アデル様でも、アディーでも、ぼくが見たまんまの人なんだって思ったら、ほっとした…」
そう言って、私にむかって、微笑んだ。

天使の微笑みが、戻ってきました!
色々よくわからないけれど、良かった!
許してくれてありがとう、ダニエル!

なごやかな空気が戻ってきたわ。良かった、良かった!

と、安心する間もなく、
「ねえ、アデル。ちょっと目を離したら、また、なに、ひきよせてんの?」
一気に冷気が流れてきた。

あ、魔王のこと、忘れてました。






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