87 / 158
告白
しおりを挟む
あ、そうだ! デュラン王子に物申すことがあったわ!
「デュラン王子、リッカさんの本を、イーリンさんにすすめてなかったんですね?!
本を読む身近な人がいるのに、すすめてないなんて、ファンとして怠慢ですよ!」
と、鼻息あらく言ってしまった。
デュラン王子は、一瞬、ポカンとして、
「え、イーリンって、本を読むの?」
と、つぶやいた。
えーっ?! そこから?!
イーリンさんも、困ったような顔を、私のほうにむけて、言った。
「ここ数年、家族ともあまり話していなかったの。下を向いていないと、何か見えたら嫌だから。
用のない時は、部屋にこもって、本を読んでたし」
それを聞いて、デュラン王子が、
「何か見えたらって、何が?」
と聞いてきた。
「え、もしかして、言ってなかったの…?」
イーリンさんに驚いて聞く。
イーリンさんがうなずいた。
「もし家族に言って、家族に嫌がられたら、もう立ち直れないと思ったから…」
なるほど。
言葉の真意が目に見えるだなんて伝えるのは、不安よね…。
特に身近な人ほど。
その瞬間、嫌だとか思われたら、またその気が見えるかもしれないわけだしね。
「でも、デュラン王子なら言っても大丈夫。そんなことで嫌がるような人じゃないし、神経の太さは、巨大だから! 知りあってから、まだ短いけど、それは、よーくわかったわ」
と、太鼓判を押す。
デュラン王子が、フフッと笑って、
「それは、喜んでいいのかな? でも、ぼくのことを、そんな風に信用してくれて、うれしいよ。アディー」
甘い雰囲気をふりまく。うん、通常通り。
「ほら、イーリンさんの深刻な雰囲気にも動じてないでしょ! やはり、メンタルがすごいわね。まあ、あのユーリと張り合うくらいだものね」
と、私が言うと、イーリンさがクスクスと笑った。
「ほんとに、アデルちゃんと話してると、気持ちが軽くなる。自分の悩んできたことが、たいしたことないんだな、と思え始めてくる」
そう言うと、にっこりと微笑んだ。
そして、デュラン王子のほうをむいた。
「私ね、数年前くらいから、突然、魔力で、人がしゃべった言葉の真意が、見えるようになってしまったの。デュラン兄様みたいに、見ようと思って見る魔力ではなく、嫌でも見えてしまうの。
だから、できるだけ見ないように、いつも下をむいてた。いろんなものが見えて怖いから。瞳の色のこともあったけど、それだけじゃなかったの。家族にも言えなかった。そんなこと言われたら、みんな、嫌でしょ?」
デュラン王子は、黙って聞いていたが、
「イーリン。本当にごめん。そんな魔力が、でてるなんて、想像もしてなかった。瞳のことで葛藤をかかえて、悩んでるんだろうけれど、それを超えるのは自分しかないから、見守ろうと思ってた。それだけじゃなかったんだね。
魔力のことを抱えて相談することもできず、つらかったね。そんなに長く、一人きりで悩ませてごめん…」
と、頭をさげた。
そして、
「正直、驚いたけど、嫌だなんて全然思わない。他の家族も、絶対に同じだと思うよ。
まあ、ランディは、うらやましがるかもしれないけどね」
そう言うと、優しく微笑んだ。
「今、デュラン王子の言葉に何か見える?」
と私が聞くと、イーリンさんは、首を横にふった。
「いえ、何も見えない。でも、やさしい気が感じられるわ」
と、微笑むイーリンさん。
すっかり力がぬけ、ほっとしたような笑顔に、見ている私もほっとする。
そこで、デュラン王子が、
「じゃあ、さっき晩餐会で、イーリンが様子がおかしくなったのは、その魔力の影響だったのか?
あの時、イーリンの近くにいたのは、ランディに次期公爵。…あ、それに、ジェフアーソン家の令嬢たちが、寄って来てた時だったよね?」
と、探るような鋭い目になった。
イーリンさんは、うなずいた。
「ええ、まあ。…デュラン兄様には言いにくいんだけれど…」
「なんで、ぼくには言いにくいの? 大丈夫だから言って」
と、デュラン王子がすぐさま言う。
「ジェフアーソン家のミラの言葉から感じるものが怖くて、震えてたの。小さい時から、彼女は私につっかかってきてたんだけど、この魔力がでてからは、その言葉に見えるものがすごく怖くて…。いまだに慣れないの」
「…そうだったのか…。それで、なんで、そのことが、ぼくに言いにくいの?」
と、デュラン王子が聞く。
「だって、ミラは、デュラン兄様の婚約者候補の筆頭でしょ。ミラは一人娘だから、デュラン兄様が、ジェフアーソン家に婿入りして、筆頭公爵家をつぐだろうって噂になってるから」
「はあ?!」
デュラン王子が、冷えきった一言を発した。
言葉の真意が見えなくても、その一言にこめられた真意は、私にも手に取るようにわかるわ…。
デュラン王子の放つ気配におびえるように、
「だって、ミラもそう言ってたし…」
と、イーリンさんがつぶやく。
「安心して、イーリン。あの令嬢と結婚するくらいなら、あの筆頭公爵家は即座につぶすから。
今は、好き勝手してるのを、まだ泳がせてるけど、うしろぐらい証拠は相当押さえてあるしね。長年、俺の妹を苦しめてきたんなら、その分もしっかり返さないとね」
と、デュラン王子は、美しい笑みを浮かべた。
あ、魔王降臨。
ほんとに、ユーリと同類だと、しみじみ思うわね…。
「デュラン王子、リッカさんの本を、イーリンさんにすすめてなかったんですね?!
本を読む身近な人がいるのに、すすめてないなんて、ファンとして怠慢ですよ!」
と、鼻息あらく言ってしまった。
デュラン王子は、一瞬、ポカンとして、
「え、イーリンって、本を読むの?」
と、つぶやいた。
えーっ?! そこから?!
イーリンさんも、困ったような顔を、私のほうにむけて、言った。
「ここ数年、家族ともあまり話していなかったの。下を向いていないと、何か見えたら嫌だから。
用のない時は、部屋にこもって、本を読んでたし」
それを聞いて、デュラン王子が、
「何か見えたらって、何が?」
と聞いてきた。
「え、もしかして、言ってなかったの…?」
イーリンさんに驚いて聞く。
イーリンさんがうなずいた。
「もし家族に言って、家族に嫌がられたら、もう立ち直れないと思ったから…」
なるほど。
言葉の真意が目に見えるだなんて伝えるのは、不安よね…。
特に身近な人ほど。
その瞬間、嫌だとか思われたら、またその気が見えるかもしれないわけだしね。
「でも、デュラン王子なら言っても大丈夫。そんなことで嫌がるような人じゃないし、神経の太さは、巨大だから! 知りあってから、まだ短いけど、それは、よーくわかったわ」
と、太鼓判を押す。
デュラン王子が、フフッと笑って、
「それは、喜んでいいのかな? でも、ぼくのことを、そんな風に信用してくれて、うれしいよ。アディー」
甘い雰囲気をふりまく。うん、通常通り。
「ほら、イーリンさんの深刻な雰囲気にも動じてないでしょ! やはり、メンタルがすごいわね。まあ、あのユーリと張り合うくらいだものね」
と、私が言うと、イーリンさがクスクスと笑った。
「ほんとに、アデルちゃんと話してると、気持ちが軽くなる。自分の悩んできたことが、たいしたことないんだな、と思え始めてくる」
そう言うと、にっこりと微笑んだ。
そして、デュラン王子のほうをむいた。
「私ね、数年前くらいから、突然、魔力で、人がしゃべった言葉の真意が、見えるようになってしまったの。デュラン兄様みたいに、見ようと思って見る魔力ではなく、嫌でも見えてしまうの。
だから、できるだけ見ないように、いつも下をむいてた。いろんなものが見えて怖いから。瞳の色のこともあったけど、それだけじゃなかったの。家族にも言えなかった。そんなこと言われたら、みんな、嫌でしょ?」
デュラン王子は、黙って聞いていたが、
「イーリン。本当にごめん。そんな魔力が、でてるなんて、想像もしてなかった。瞳のことで葛藤をかかえて、悩んでるんだろうけれど、それを超えるのは自分しかないから、見守ろうと思ってた。それだけじゃなかったんだね。
魔力のことを抱えて相談することもできず、つらかったね。そんなに長く、一人きりで悩ませてごめん…」
と、頭をさげた。
そして、
「正直、驚いたけど、嫌だなんて全然思わない。他の家族も、絶対に同じだと思うよ。
まあ、ランディは、うらやましがるかもしれないけどね」
そう言うと、優しく微笑んだ。
「今、デュラン王子の言葉に何か見える?」
と私が聞くと、イーリンさんは、首を横にふった。
「いえ、何も見えない。でも、やさしい気が感じられるわ」
と、微笑むイーリンさん。
すっかり力がぬけ、ほっとしたような笑顔に、見ている私もほっとする。
そこで、デュラン王子が、
「じゃあ、さっき晩餐会で、イーリンが様子がおかしくなったのは、その魔力の影響だったのか?
あの時、イーリンの近くにいたのは、ランディに次期公爵。…あ、それに、ジェフアーソン家の令嬢たちが、寄って来てた時だったよね?」
と、探るような鋭い目になった。
イーリンさんは、うなずいた。
「ええ、まあ。…デュラン兄様には言いにくいんだけれど…」
「なんで、ぼくには言いにくいの? 大丈夫だから言って」
と、デュラン王子がすぐさま言う。
「ジェフアーソン家のミラの言葉から感じるものが怖くて、震えてたの。小さい時から、彼女は私につっかかってきてたんだけど、この魔力がでてからは、その言葉に見えるものがすごく怖くて…。いまだに慣れないの」
「…そうだったのか…。それで、なんで、そのことが、ぼくに言いにくいの?」
と、デュラン王子が聞く。
「だって、ミラは、デュラン兄様の婚約者候補の筆頭でしょ。ミラは一人娘だから、デュラン兄様が、ジェフアーソン家に婿入りして、筆頭公爵家をつぐだろうって噂になってるから」
「はあ?!」
デュラン王子が、冷えきった一言を発した。
言葉の真意が見えなくても、その一言にこめられた真意は、私にも手に取るようにわかるわ…。
デュラン王子の放つ気配におびえるように、
「だって、ミラもそう言ってたし…」
と、イーリンさんがつぶやく。
「安心して、イーリン。あの令嬢と結婚するくらいなら、あの筆頭公爵家は即座につぶすから。
今は、好き勝手してるのを、まだ泳がせてるけど、うしろぐらい証拠は相当押さえてあるしね。長年、俺の妹を苦しめてきたんなら、その分もしっかり返さないとね」
と、デュラン王子は、美しい笑みを浮かべた。
あ、魔王降臨。
ほんとに、ユーリと同類だと、しみじみ思うわね…。
28
あなたにおすすめの小説
お堅い公爵様に求婚されたら、溺愛生活が始まりました
群青みどり
恋愛
国に死ぬまで搾取される聖女になるのが嫌で実力を隠していたアイリスは、周囲から無能だと虐げられてきた。
どれだけ酷い目に遭おうが強い精神力で乗り越えてきたアイリスの安らぎの時間は、若き公爵のセピアが神殿に訪れた時だった。
そんなある日、セピアが敵と対峙した時にたまたま近くにいたアイリスは巻き込まれて怪我を負い、気絶してしまう。目が覚めると、顔に傷痕が残ってしまったということで、セピアと婚約を結ばれていた!
「どうか怪我を負わせた責任をとって君と結婚させてほしい」
こんな怪我、聖女の力ですぐ治せるけれど……本物の聖女だとバレたくない!
このまま正体バレして国に搾取される人生を送るか、他の方法を探して婚約破棄をするか。
婚約破棄に向けて悩むアイリスだったが、罪悪感から求婚してきたはずのセピアの溺愛っぷりがすごくて⁉︎
「ずっと、どうやってこの神殿から君を攫おうかと考えていた」
麗しの公爵様は、今日も聖女にしか見せない笑顔を浮かべる──
※タイトル変更しました
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
この世界に転生したらいろんな人に溺愛されちゃいました!
キムチ鍋
恋愛
前世は不慮の事故で死んだ(主人公)公爵令嬢ニコ・オリヴィアは最近前世の記憶を思い出す。
だが彼女は人生を楽しむことができなっかたので今世は幸せな人生を送ることを決意する。
「前世は不慮の事故で死んだのだから今世は楽しんで幸せな人生を送るぞ!」
そこからいろいろな人に愛されていく。
作者のキムチ鍋です!
不定期で投稿していきます‼️
19時投稿です‼️
どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~
涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる