(第2章連載中)だれか溺愛見せてください。ちなみに、溺愛を見たいだけで、溺愛してもらいたいわけではありません。

水無月あん

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第一章

新たな本仲間

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「あの、何かおすすめの本、ありますか?」
と、ジャンさんが、はにかみながら聞いてきた。

そんな話ならお任せを! 
「沢山ありますよ! 今、どういう感じのお話が読みたいですか?!」
と、思わず、前のめりになる。

「そうですね。楽しくて、感動するようなお話がいいかな」

おっ、それなら、先日、エルザおばさまから戻ってきた本がいいかもね。

「外国の本なんですが、『アイリスの花束』という本が良かったです」

「早速、その本を、あの本屋に買いに行きますね」
と、嬉しそうに言うジャンさん。

「あ、でも、確か、私の買ったのが最後の一冊だったかも。良かったら、貸しましょうか?」

ジャンさんが、目を見開いた。
「お借りしても良いのですか?」

「私、本が好きな人に、本を貸すのも好きなの。だから、本仲間によく貸してるんですよ」
そう言って、にっこりと微笑んだ。

…といっても、交友関係がほぼない私。本仲間といっても、アイシャとエルザおばさまだけだけどね。

ジャンさんが、真っ赤になった。
「…では、ぼくも、その仲間にいれていただいてもよろしいですか? ぼくの本も、良かったらお貸しします」

ええ、貸してくれるの?! もちろん、大歓迎です。

こんなところで、本仲間に出会えるとは! わくわくするわ。

「あの…、本のことをもっとお聞きしたいので、どこかで座ってお話しませんか」
と、ジャンさん。

確かに、足もつかれてきたもんね。そして、あの溺愛観察ターゲットは、すっかり見失ってるし。

ま、今日は、新たな本仲間を優先しようかね。

しかも、ジャンさんは、推せる溺愛のヒーローになりそうな貴重な人材だし。
本仲間になってたら、だれかを溺愛する時、間近で観察できる特権も…ムフフ。
下心満載の私!

「そうですね。ええと、椅子はどこかな?」
が、広いフロアで座れるところは、ご年配の方々ですでに埋まっている。

「あの、廊下に椅子がありましたが、そこは?」
と、フロアの入口を手で示したジャンさん。

見ると、確かに、開いた扉の向こうに椅子が見えた。

フロアをでたらいけないっていわれたけど、扉も開いてるし、近いから、ちょっとくらいいいよね?

「じゃ、そうしましょうか」

と、二人で移動しはじめた。
ジャンさんは、私の歩くスピードに目を配りながら、まわりの人と接触しないよう、さりげなく盾になりながら、歩いてくれてるのが伝わってくる。

もう、まさに、これって、溺愛ヒーローにふさわしい行動じゃない?!
これで、隣に、可憐で天使みたいな溺愛ヒロインがいたら完璧なのに! 残念、私だわ…!

しかし、さっきから、すごく見られてる気がする。
ああ、ジャンさん目立つもんね。ラルフといる時とかわらない視線の痛さだ。
令嬢たちの目が怖い…。

が、ジャンさんは、慣れているのか気にもとめず、私ばかりに気をつかってくれてる。
本当に溺愛ヒーローとして、すばらしい人材じゃない?


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