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第四話
しおりを挟む転入生の初試合と今回のCクラスの一位候補ということも相まって、この試合は始まる前から大盛り上がりだった。
「グッチ―、ファイト!」
「さっさと決めちまえ!」
俺たちの相手TEAMを応援する声が俺の耳に入る。が、俺はあくまでも冷静を装い、「SDJ」を担任から受け取る。それを手に取り、頭部に装着する直前に俺は自分のペアにそっとささやいた。
「まぁ、本当は作戦なんてこれっぽっちも考えちゃいないんだけどね」
俺の言葉に彼女は当然のごとく驚く。
「えっ?」
しかし俺は、
「行き当たりばったりさ」
とだけ言い、「SDJ」のスイッチをONにした。
心情を軽く変化させてみる。するとHPが100%から90%まで変化した。思っていたよりも「SDJ」の判定は厳しいようだ。まだ試合が始まってもいないのに俺のHPが動いたことで、観闘席はさらにザワつく。
「こりゃ、秒で終わるな」
「転入生なんだから、と思って期待したのに、ダメダメだな」
「結局1位はグッチーかぁ」
といった声が聞こえた。その間に、俺は自分のHPを100%に戻しておく。そしてついに、担任のホイッスルとともに俺の初陣が幕をあけた───。
俺がこの試合で持ち込んだのは小型のハンドガンのみ。対するグッチーが持ち込んだのは大型のアサルトライフル。どうやら、グッチーの頭には筋肉しか詰まっていないようだ。開始直後、俺はハンドガンを足元に落とす。
「「「えっ?」」」
俺のその行動に、無条さんとグッチーとクラスメイト達はあっけにとられる。その一瞬のうちに俺はグッチーの懐へ走りこむ。慌てたグッチーは俺の足に銃口を向けるが、俺はすかさずその銃口に自分の額をピタリとつける。
「撃てるもんなら撃ってみろよ」
俺はグッチーを煽り立てる。「殺傷できない」のであれば、「殺傷され得る」位置に自らの体を運ぶのみだ。しかし、この状況下でも冷静なグッチーは、俺から距離を取り、今度こそ銃口を俺の足へ向ける。そして、彼はトリガーを引いた───が、銃声はならなかった。俺とこの「カラクリ」を知っているもの以外のこの教室にいる者すべてに動揺が走る。そして、なおもHP100%の俺がグッチーを追い詰める。
「どうしたんだ?早く撃てよ」
「どうしたも何も、トリガーを引いても弾が発射されないんだよ!」
「それは違うな」
俺の意味深な発言に、教室中が静まり返る。
「光地之君、どういうこと?」
そう俺に訊いてきた無条さんを含む、低レベルなC組の生徒達全員に、俺の言葉の真意を説明する。
「おまえの銃から『弾が発射されない』のではなく、『弾が出ない』の間違いだろ?」
「ん?どういうこと?」
さらに困惑する無条さんとクラスメイト達に向けてもう一度丁寧に説明する。
「つまり、『弾が出ない』のは、はじめからお前の銃には弾なんて入っていなかったからだろ?」
俺はそう言いながら、左手をあげた。遅れて俺の足元にハンドガンが転がってくる。俺はそれを右手で拾い、地面に向って一発撃った。
“ドギュゥンン”
銃声とともに再び静まり返る教室。俺は、
「この通り、俺の銃には弾が入っていたので、これでチェックメイトだな」
と言い放ち、銃口をあえてグッチーの額へと向ける。
「ひっ⁈」
そして俺がトリガーを引く―直前にグッチーは絶叫した。
「うあァァァァ───ッ!」
バックスクリーンには、グッチーのHPは0%、対闘不能と表示されている。
俺は残る一人、西野サポーターを倒すべく彼に向き直す。
「さぁ、次はお前の番だな」
すると、彼は慌てた素振りを見せた。
「武器も持ってない僕にどうやって闘えっていうの?そんなの───」
俺は彼に自分が持っていたハンドガンを投げ渡した。
「えっ?」
無条さんは驚きを隠せないでいた。彼女のHPが100%から80%に変化する。
「クックックッ」
次の瞬間、西野の中にあった何かが弾けた。
「ハァーッハッハッハァ!お前もバカだなぁ。僕が容赦するとでも思ったのかァ?僕たちがお前みたいな転入三日目のクズに負けるわけがねェだろがァ!なにが『チェックメイト』だよ。笑わせてくれるぜ。これで終わりだあァァァ───!」
そして、彼はトリガーを引いた───。
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