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第一作戦 千葉防衛
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履きなれた運動靴に巻き付けるように、ベルトで飛行装置を固定して立ち上がる。
いつものような、鉄を足に巻き付けているような重さは全くない。
これなら、腿付けジャンプもできる。
「すごくいい……!」
開発者の名前を見た時は、少し困ったけど、考えてみれば、性格がちょっとどころではなく変なだけで、開発した物はしっかりしたものだ。
「隊長だけ、最新装備ですか?」
そう声をかけてきたのは、確か、第三中隊隊長の我妻中尉。
「うらやましいですなぁ」
縦にも横にも大きな人だから、目の前に立たれると圧はすごいものの、この気さくな雰囲気のせいか、他の大尉や中尉よりも威圧感は強くない。
「まだ実験段階だそうです」
これが最終実験。
問題がなければ、実用化に踏み切るらしい。
「いやぁ……あの地獄を体験しないとは、うらやましい限りですな。自分は、これで沼にはまって大変でした」
それは大変だっただろう。
私が最初に履いた時は、靴が重すぎるものだから、自分が転んだところで、完全にバランスを崩して倒れるまで、靴が倒れないってこともあった。
あの時の痛さって、表現のしようがない。
「では、これから飛行訓練ですか?」
「はい。とりあえず、内容からして、1万メートルくらいで耐えられるか確認できればいいかと思ってて」
通常の魔導士は、空気を生成しなくていい高度までしか飛ばないため、だいたい6000メートル程度だ。
だから、それ以上の高度での耐久試験が求められているのだろう。そうなると、8000~10000メートルが求められている高度。
10000メートルで耐久試験しておけば、文句も言われないだろう。
「とりあえずで、1万行こうとするのは、隊長くらいですよ」
我妻さんが、少し頬を引きつらせていた。
その表情は気になるけど、任務は任務。早く済ませてしまおうと、飛ぼうとした時だ。
警報が鳴る。
すぐにデドリィ出現による、出撃命令が下った。
訓練をしていた他の隊員も、すぐさま訓練から実戦へ準備を整え直すと、現場へ向かう。
いつものように、私も久保さんと一緒に出撃する。だが、無線から聞こえてくる音は、相変わらず私なしでも問題なさそうな様子だけ。
戦いたいわけではない。けど、ここに、私は必要ないような気がする。
私よりも強くて、連携が取れている部隊に、改めて契約魔導士が必要かというと、怪しい気がする。
きっとこのまま、いつものように問題無く終わるだろう。
少し、気を抜きかけたその時だった。
ぞわ……
肌を撫でられる感覚に、一瞬、息が詰まった。
「――――ぁ」
息を吸い込めば、酸素と一緒に、魔力も全身へ巡らせた。
*****
隊員たちもその違和感に、一度動きを止め、周りに目をやる。
そして、見つけた真っ赤に輝く地面。そこから溶け出すように、出てきた巨大な球体。
先程まで戦っていた小物とは違う、巨大な目と胴体の半分以上あるであろう巨大な口が、アンバランスな体を引きずりながら現れた。
「モホロビ級! 数 1!」
モホロビ級は苦しげに目を歪ませると、引きちぎれるような音を立てて、小さな胴体から生えてきた腕。
その腕は、生えてきた勢いのまま、銃を向けた隊員たちを叩き落とした。
「――ッ第三中隊は回り込め! 第二中隊は奴の注意を引きつける!」
駆け付けた坪田はすぐさま、交戦していた第三中隊に指示を出す。
中隊に気がついたモホロビ級は、食事をやめ、新たな燃料に腕を振り上げた。
精鋭を集めたといわれるだけあり、不意打ちではない、単調な攻撃の回避行動は可能だった。
第二中隊に注意を引き付けられているデドリィは、回り込んだ第三中隊から銃で何発も撃たれ、巨大すぎる口から悲鳴が上がる。
「効いてる!」
「押し込めるぞ!!」
デドリィの核は、まだ見えないが、決して装甲が厚い敵ではない。この調子でいけば、倒すことも可能だ。
勝てる予感に心を浮つかせながら、引き金を引いたその時、叫ぶ口の奥底が、不気味に赤く輝いた。
「火?」
「なっ――」
火を吐くと理解した瞬間、その射線上から逃げたが、あまりに広すぎる炎の範囲に、第二部隊は炎に呑み込まれた。
*****
「――!!」
「――」
「――」
「――」
呼びかける声に、目を開ければ、加賀谷たちがいた。
「! 坪田大尉、意識が戻られましたか。よかった」
仲間たちがまだ戦っている音がする。自分たちが落ちた後も、戦い続けてくれたのだろう。
起き上がろうとすれば、衛生兵である引田が背中を支えてくれる。
体は痛むが、防壁魔術のおかげか、軽傷程度で済んでいる。戦闘を続けることも可能だ。
「状況は?」
部隊の再編成は必要だろう。
炎を吐くのは、少し予想外だが、奴の攻撃手段が、腕と口から吐く炎だというなら、正面ではなく側面と背後から叩けばいい。
攻撃が通らないというわけではないなら、戦い方次第でどうにだってできる。
「第二中隊の半数は、戦闘の継続は難しい状況です。第三中隊は4名が撤退しています」
それなら、第二、第三で動ける人間をまとめるべきか。
第一中隊を第二、第三の補完に当てるべきか。
「久保さん」
久々に聞いた、小さな隊長の声に視線を上にあげれば、こちらにも目をやり、少しだけ微笑んだ。
「怪我したみんなの手当をお願いします」
「は……? なにを」
しっかりと頭を下げた加賀谷は、混乱している久保を他所に、デドリィに向き直った。
「アイツは、私がやります」
その返答を聞かず、加賀谷は飛び上がった。
残ったのは、地面の氷と冷気だけ。
いつものような、鉄を足に巻き付けているような重さは全くない。
これなら、腿付けジャンプもできる。
「すごくいい……!」
開発者の名前を見た時は、少し困ったけど、考えてみれば、性格がちょっとどころではなく変なだけで、開発した物はしっかりしたものだ。
「隊長だけ、最新装備ですか?」
そう声をかけてきたのは、確か、第三中隊隊長の我妻中尉。
「うらやましいですなぁ」
縦にも横にも大きな人だから、目の前に立たれると圧はすごいものの、この気さくな雰囲気のせいか、他の大尉や中尉よりも威圧感は強くない。
「まだ実験段階だそうです」
これが最終実験。
問題がなければ、実用化に踏み切るらしい。
「いやぁ……あの地獄を体験しないとは、うらやましい限りですな。自分は、これで沼にはまって大変でした」
それは大変だっただろう。
私が最初に履いた時は、靴が重すぎるものだから、自分が転んだところで、完全にバランスを崩して倒れるまで、靴が倒れないってこともあった。
あの時の痛さって、表現のしようがない。
「では、これから飛行訓練ですか?」
「はい。とりあえず、内容からして、1万メートルくらいで耐えられるか確認できればいいかと思ってて」
通常の魔導士は、空気を生成しなくていい高度までしか飛ばないため、だいたい6000メートル程度だ。
だから、それ以上の高度での耐久試験が求められているのだろう。そうなると、8000~10000メートルが求められている高度。
10000メートルで耐久試験しておけば、文句も言われないだろう。
「とりあえずで、1万行こうとするのは、隊長くらいですよ」
我妻さんが、少し頬を引きつらせていた。
その表情は気になるけど、任務は任務。早く済ませてしまおうと、飛ぼうとした時だ。
警報が鳴る。
すぐにデドリィ出現による、出撃命令が下った。
訓練をしていた他の隊員も、すぐさま訓練から実戦へ準備を整え直すと、現場へ向かう。
いつものように、私も久保さんと一緒に出撃する。だが、無線から聞こえてくる音は、相変わらず私なしでも問題なさそうな様子だけ。
戦いたいわけではない。けど、ここに、私は必要ないような気がする。
私よりも強くて、連携が取れている部隊に、改めて契約魔導士が必要かというと、怪しい気がする。
きっとこのまま、いつものように問題無く終わるだろう。
少し、気を抜きかけたその時だった。
ぞわ……
肌を撫でられる感覚に、一瞬、息が詰まった。
「――――ぁ」
息を吸い込めば、酸素と一緒に、魔力も全身へ巡らせた。
*****
隊員たちもその違和感に、一度動きを止め、周りに目をやる。
そして、見つけた真っ赤に輝く地面。そこから溶け出すように、出てきた巨大な球体。
先程まで戦っていた小物とは違う、巨大な目と胴体の半分以上あるであろう巨大な口が、アンバランスな体を引きずりながら現れた。
「モホロビ級! 数 1!」
モホロビ級は苦しげに目を歪ませると、引きちぎれるような音を立てて、小さな胴体から生えてきた腕。
その腕は、生えてきた勢いのまま、銃を向けた隊員たちを叩き落とした。
「――ッ第三中隊は回り込め! 第二中隊は奴の注意を引きつける!」
駆け付けた坪田はすぐさま、交戦していた第三中隊に指示を出す。
中隊に気がついたモホロビ級は、食事をやめ、新たな燃料に腕を振り上げた。
精鋭を集めたといわれるだけあり、不意打ちではない、単調な攻撃の回避行動は可能だった。
第二中隊に注意を引き付けられているデドリィは、回り込んだ第三中隊から銃で何発も撃たれ、巨大すぎる口から悲鳴が上がる。
「効いてる!」
「押し込めるぞ!!」
デドリィの核は、まだ見えないが、決して装甲が厚い敵ではない。この調子でいけば、倒すことも可能だ。
勝てる予感に心を浮つかせながら、引き金を引いたその時、叫ぶ口の奥底が、不気味に赤く輝いた。
「火?」
「なっ――」
火を吐くと理解した瞬間、その射線上から逃げたが、あまりに広すぎる炎の範囲に、第二部隊は炎に呑み込まれた。
*****
「――!!」
「――」
「――」
「――」
呼びかける声に、目を開ければ、加賀谷たちがいた。
「! 坪田大尉、意識が戻られましたか。よかった」
仲間たちがまだ戦っている音がする。自分たちが落ちた後も、戦い続けてくれたのだろう。
起き上がろうとすれば、衛生兵である引田が背中を支えてくれる。
体は痛むが、防壁魔術のおかげか、軽傷程度で済んでいる。戦闘を続けることも可能だ。
「状況は?」
部隊の再編成は必要だろう。
炎を吐くのは、少し予想外だが、奴の攻撃手段が、腕と口から吐く炎だというなら、正面ではなく側面と背後から叩けばいい。
攻撃が通らないというわけではないなら、戦い方次第でどうにだってできる。
「第二中隊の半数は、戦闘の継続は難しい状況です。第三中隊は4名が撤退しています」
それなら、第二、第三で動ける人間をまとめるべきか。
第一中隊を第二、第三の補完に当てるべきか。
「久保さん」
久々に聞いた、小さな隊長の声に視線を上にあげれば、こちらにも目をやり、少しだけ微笑んだ。
「怪我したみんなの手当をお願いします」
「は……? なにを」
しっかりと頭を下げた加賀谷は、混乱している久保を他所に、デドリィに向き直った。
「アイツは、私がやります」
その返答を聞かず、加賀谷は飛び上がった。
残ったのは、地面の氷と冷気だけ。
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