ラプラスの悪魔

抹茶氏

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一章【魔王勇者編】

推測と憶測

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先の見えない扉の奥はどうやら通路になっているらしく、壁をつたって前に進むことになった。
「なあ時雨、この通路ってどこに続いてるんだ?それに俺にもわかるくらいここは魔力が濃い空間だぞ」
「うん、でもこの先に何か感じる。金色が言ってたやつかもしれない」
それから10分程歩いたが暗闇は続いたまま。そして30分、1時間が経っても暗闇のままだ。
「もう結構時間経っただろ、これ以上進んでも何も無いって。もう帰った方が…」
「そう…だね。ごめんね、こんなことに付き合わせちゃって、もう帰ろっか」
とは言ってもここまで来るのに1時間程歩き続けたので、帰りも時間がかかるのだろうなと思っていたが、気づくと目の前にドアがあった。
ついさっきまで何も無かったはずの暗闇の通路が、壁になってドアが現れた。
「待って要、ここにドアが」
「ドアって俺たちが入ってきたのは扉だろ?」
「鍵は…掛かってないみたい」
「中に入るのかよ!って待てって」
開けると光を感じた。それは日光、というよりも人工的な光。
中は1時間程前までいた倉庫ではなく、執務室のような、いかにも仕事を行う部屋だとわかった。
「おやおや、客人だ。珍しいね」
私達がこの部屋に入ったことに気づいた一人の男の人が近づいてきた。見た目は騎士というより…なんだろう社畜?でも、王国騎士本部にいる人間とは思えなかった。
「こんにちは、かわいいお嬢さんとお兄さん。あっかわいいはお嬢さんだけでお兄さんには言ってないよ」
今の一言でめんどくさい人って事だけはわかった。
「あの、私の名前は若月時雨。で、こっちは」
「石上要です」
「時雨君と要君ね。あっ私は他人の名前を呼ぶときに君をつける癖があるから気にしないでね。あと、私の名前は柊(ひいらぎ)。それで、ここには一体何をしに来たのかな」
「そうだった、すいません柊さん。ここに聖剣ってありますか?」
「ほーん。聖剣か。君は勇者ではなさそうだけど、君に合う聖剣は倉庫には無かったみたいだね。ちょうどいい、最近新種の聖剣を私の上司が見つけて持って帰ったところなんだよ」
「あのそれって見せてくれますか?」
「勿論いいとも。でも私の上司はかなり怖いから失礼のないように。あっそこのソファーに座って待っててね」
「わ、わかりました」
そして柊さんはおそらく上司の部屋に入って行った。
とりあえず聖剣を見れる事が出来そうで良かった。もしかしたらその聖剣は私に合う聖剣かもしれない。
そう考えているうちに近くにあったドアからまた知らない、今度は女の人が入ってきた。この人も王国騎士とは思えない服装。ここにいる人達は一体何をしているのだろう。
「ただいま戻りました~って君達は誰?」
「私の名前は若月時雨っていいます。ここには私に合う聖剣があるかもしれなくてきました」
「あ~あの新種のね。そちらのお兄さんは?」
「俺の名前は石上要です。一応時雨の付き添い人としてここにいます」
「なるほどね~。そういえば誰か隊長を呼びに行った?」
「隊長かどうかはわかりませんが、一応柊さんが上司を呼びに行って…5分くらい経っていますね」
「あちゃ~また殺されてるよ」
「殺されてるって物理的じゃなくて精神的ですよね」
「だといいね~あはは~」
するとドアが急に開いて中からまた知らない男の人とボロボロのスーツになった柊さんが出てきた。
「今日は何回?」
「3回で済んだよ助かった~」
「うるさい。黙れ。2回追加してやろうか」
「はい、柊黙ります」
知らない男の人は剣幕が鋭く、見られているだけで呼吸が苦しくなる。まるでその呼吸すら許されないかのように。
「話は聞いた。聖剣が必要だと。それが何故か説明してもらおうか」
「わっ私は…実は、」
落ち着け、落ち着け私。相手はただの人間。あの魔族や狂った悪魔ではないのだから。一旦深呼吸。
「…よし、落ち着いた。実は私の学校のクラスに今の勇者、金色がいるのですが、その金色いわく私にも勇者のオーラというのがあるらしく、そのオーラがある状態で聖剣を持っていないとオーラの制御が出来ずに死んでしまうそうなので私は私に合った聖剣を探しています」
「そうか、私が見たところ君は魔力量が秀でているな。今回見つけた新種は少し特殊でな、君とは相性はかなりいいと思っている」
「だったら」
「但し、条件がある。そこにいる柊と君達のどちらかが模擬戦をして一撃でも柊に攻撃を与えられるか、柊の能力を当てる事が出来たら君が探している聖剣をやろう」
「なーんだ簡単じゃん。模擬戦、手抜いてあげるから」
「お前は少しでも手を抜いた事がわかったら、5回追加するぞ」
「ひゃい!わかりました!しっかりやらせていただきます」
また模擬戦。以前したときはビビが油断していたから簡単に倒せたけれど、魔族とも戦って私は魔力量は多いだけで戦闘には向いていないと気づいたから出来たら、また要に頼ることになるけどお願いしようかな。
それとさっきからあの人が言っている回数は何のことだろう。
ーーーーーーーー
「ここが我々の訓練場だが、全く使われた形跡がないな。柊、お前しっかり訓練しているのか」
「しっかりやらせていただいております!」
「そうか、ではどちらが相手になるのかな」
「お、俺が相手になります。俺はあんまり頭が良くないから実際に戦って、柊さんがどんな能力なのかを知ります。出来たら一発攻撃したいですが。時雨は外から観察して見つけてくれ」
「うん、わかった」
「じゃあ始めようか。私は君が攻撃を始めるまで動かないから、好きなタイミングで初めていいよ」
「当たれ!」
柊さんの話が終わった直後、要は自慢の高速移動で柊さんに殴りを入れようとしたが、身体を反らして避けられた。
「いいね、君ぐらいの年でその動きが出来るのは、なかなか居ないよ」
「普通の人かと思ってたけど、今の躱すのかよ」
それからも要は柊さんに攻撃を続けるが全て避けられていた。
柊さんは必要最低限の動きで避けるので外から見ても能力を使っているのかわからない。必要最低限で避けているって事は何か能力で予知しているのか、視力が良くなっているのか。
「どうだ。君は柊の能力はわかったか」
「いえ、まだ決定的な答えは出ていません」
「そうだろうな、私は君を見下しているわけでは無いが、君自体はただの凡人だと思っている。しかし勇者のオーラとやらに認められた君は何か他にも出来ることがあるのではないか?」
このところ私には何が出来るのか、どうすれば強くなって皆を守ることが出来るのか考えてた。でも結局私は強くなれなくて、今まさに本来なら私が柊さんと戦うべきなのに要に任せてしまっている。
「そう落ち込むな、何も戦う力だけが強さではないだろ。私は戦闘専門だからこの仕事に就いてから前線で戦ってきたが、ミネルヴァ…君達が会った柊とは別の人のことだ」
「あの女性の方ですか」
「そうだ、あいつは能力も凄いが何よりも治癒にバフにデバフ全てにおいてトップクラスの人材だ。彼女にアドバイスを聞けば何かわかるかもしれないな」
私は言われるがままにミネルヴァさんに何か自分に出来ることがあるのか聞いた。
「えっと、ミネルヴァさんに聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「えぇ勿論。何でも聞いてね」
その後ミネルヴァさんに自分は魔力量が多いだけで戦闘には向いていない事。それでも自分に出来ることを見つけたいという事を聞いた。
「そうね。私は貴方に会った時から、貴方には常人にはない程の魔力量があるって気づいていたけど、そんな事…失礼、でも気にすることはないわ。確かに貴方の魔力量で戦闘に不向きだと周りから変に見られると思っているんでしょ」
「はい…そうです。私は、学校の実技でもあまり攻撃系の魔術が得意じゃなくて、先生から皆と合わせなくていいって言われることが多いけど、これが私の出せる限界に近いだなんて誰も知らない。もし、私が攻撃系の魔術が使えないだなんて知られたらみんな、」
「はいはいストップ。学校の国語の授業で習わなかった?文章中から人物の心情を考えなさいって問題」
「え?」
「あのね、推測と憶測は別物よ。今の貴方の考えはただの憶測に過ぎない。推測しなさい。貴方の経験が、思い出が全て文章よ。そこから貴方を非難を浴びせるような人はいるのかな?」
「…いない、皆優しくて良い人達」
「うん、だったら貴方の経験上に貴方を悲しませる人はいないわ。確かに最初に貴方が言ったことが起こらないとは私は言い切れない。でも貴方の友人。特に今、柊と戦っている彼とか貴方を絶対に助けるわ」
要、リコ、ベル。それにアキラ。ミカには悪いけど、補助職で皆を全力でサポート出来るようになりたい。
「ミネルヴァさん、私にサポートをする魔術を教えてください」
「了解、それじゃあ実際にやってみましょうか」
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