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寝坊の危機
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「しまったああああああああーーっ!」
朝、目を覚ました私は絶叫した。
何故かって? そう、寝坊である。それも盛大にだ。
「おかーさん! なんで起こしてくれなかったの!?」
バタバタと準備をしながらも下で店番をしているお母さんに、大声で文句を垂れる。
「あらー? 今日はお休みでしょ? よく寝てたし、お休みの日に起こすのは悪いと思って……」
そう言いながら、私の焦りっぷりを心配したお母さんは二階へと上がってきた。
「そうだったー! そりゃ起こさないよね! 文句言ってごめんねお母さん!」
休みの日に我が子がすやすやと気持ち良さそうに寝てればそりゃあそっとしておくよね。私が起こしてと頼んだわけでもないし、当然である。
しかし現実は無情……! 日の登り具合から見てお昼までの残り時間は大体一時間……!
具体的な待ち合わせ時間は話さなかったけど、サイラス様を待たせるわけにはいかないから、少し早めに到着していなくちゃよね。
時間との勝負よ……! 頑張れ私!
「アーちゃん? そんなに焦って、どこかへ出掛けるの?」
「うん。ちょっとご飯食べる約束があって」
「あら! あらあら~。ついに少しは進展したのかしら」
最後お母さんが小声で何か喋っていたけど、急いでてよく聞こえなかった。お母様、娘は今それどころではないのです。
「え? なに~!?」
「うふふ、何でもないわよ」
パタパタと手を振りながら、お母さんが意味深な感じで微笑みつつ、店番へと戻っていった。
何か変な勘違いされてるように思えたのだが、私には時間が残されていないのだ。そこで話を切り上げ、全身全霊を以て支度を進めることにした。
まずは昨日のうちに決めておいた服に着替える。貴族様のパーティー会場にもギリギリ着ていけるぐらい気合いの入った私の一張羅だ。
次に髪を櫛で梳かす。これが最大の難関だ。髪質のせいか、毎朝寝癖が尋常じゃない。
しかもこいつときたらかなり頑固で、そのせいで私の朝は毎回格闘大会だ。私の一部なのだから、もっと私に協力的になってくれてもいいんじゃないだろうか。
「うおおおおっ! しゃらーぃ!」
猛々しい雄叫びを上げながら、ようやく難敵を打ち倒す。よし、これで最低限身だしなみは整ったはず。最善を尽くせなかったのは悔やまれるけど、遅刻するよりはましよね。
「行ってきまーすっ!」
急ぎのあまりお母さんとは顔も合わせずに、そのまま家の外へと飛び出す。
おっと、焦ってはいけない。走ったりしたら汗をかいてしまうので、せっかく急いで支度したのが徒労に終わってしまう。
すいすいー、とかつてない速さで歩き続けることしばし。私は約束の場所へと到着した。
「よーし、お昼ちょっと前ぐらいかな。ギリギリ間に合った……よね?」
幸い、まだ正午を知らせる鐘の音は鳴っていない。でもお昼時たからか、飲食店が多く立ち並ぶこの通りは人通りも多く賑わっていた。
「えーと、サイラス様と会ったのは確かこの辺だったかしら」
辺りを見回すけど、サイラス様の姿は見当たらない。よかった……私の方が早く到着できたみたい。
サイラス様の貴重な時間を無駄にさせるわけにはいかないものね!
ゴーン……ゴーン……
鐘の音が響く。するとその音に驚いた鳥たちが一斉に羽ばたいた。
晴れ渡る空、僅かに光を反射しながら羽ばたく白い鳥たち。そんな幻想的な光景に見とれて空を見上げる私の肩を、ちょんちょんと誰かにつつかれた。
朝、目を覚ました私は絶叫した。
何故かって? そう、寝坊である。それも盛大にだ。
「おかーさん! なんで起こしてくれなかったの!?」
バタバタと準備をしながらも下で店番をしているお母さんに、大声で文句を垂れる。
「あらー? 今日はお休みでしょ? よく寝てたし、お休みの日に起こすのは悪いと思って……」
そう言いながら、私の焦りっぷりを心配したお母さんは二階へと上がってきた。
「そうだったー! そりゃ起こさないよね! 文句言ってごめんねお母さん!」
休みの日に我が子がすやすやと気持ち良さそうに寝てればそりゃあそっとしておくよね。私が起こしてと頼んだわけでもないし、当然である。
しかし現実は無情……! 日の登り具合から見てお昼までの残り時間は大体一時間……!
具体的な待ち合わせ時間は話さなかったけど、サイラス様を待たせるわけにはいかないから、少し早めに到着していなくちゃよね。
時間との勝負よ……! 頑張れ私!
「アーちゃん? そんなに焦って、どこかへ出掛けるの?」
「うん。ちょっとご飯食べる約束があって」
「あら! あらあら~。ついに少しは進展したのかしら」
最後お母さんが小声で何か喋っていたけど、急いでてよく聞こえなかった。お母様、娘は今それどころではないのです。
「え? なに~!?」
「うふふ、何でもないわよ」
パタパタと手を振りながら、お母さんが意味深な感じで微笑みつつ、店番へと戻っていった。
何か変な勘違いされてるように思えたのだが、私には時間が残されていないのだ。そこで話を切り上げ、全身全霊を以て支度を進めることにした。
まずは昨日のうちに決めておいた服に着替える。貴族様のパーティー会場にもギリギリ着ていけるぐらい気合いの入った私の一張羅だ。
次に髪を櫛で梳かす。これが最大の難関だ。髪質のせいか、毎朝寝癖が尋常じゃない。
しかもこいつときたらかなり頑固で、そのせいで私の朝は毎回格闘大会だ。私の一部なのだから、もっと私に協力的になってくれてもいいんじゃないだろうか。
「うおおおおっ! しゃらーぃ!」
猛々しい雄叫びを上げながら、ようやく難敵を打ち倒す。よし、これで最低限身だしなみは整ったはず。最善を尽くせなかったのは悔やまれるけど、遅刻するよりはましよね。
「行ってきまーすっ!」
急ぎのあまりお母さんとは顔も合わせずに、そのまま家の外へと飛び出す。
おっと、焦ってはいけない。走ったりしたら汗をかいてしまうので、せっかく急いで支度したのが徒労に終わってしまう。
すいすいー、とかつてない速さで歩き続けることしばし。私は約束の場所へと到着した。
「よーし、お昼ちょっと前ぐらいかな。ギリギリ間に合った……よね?」
幸い、まだ正午を知らせる鐘の音は鳴っていない。でもお昼時たからか、飲食店が多く立ち並ぶこの通りは人通りも多く賑わっていた。
「えーと、サイラス様と会ったのは確かこの辺だったかしら」
辺りを見回すけど、サイラス様の姿は見当たらない。よかった……私の方が早く到着できたみたい。
サイラス様の貴重な時間を無駄にさせるわけにはいかないものね!
ゴーン……ゴーン……
鐘の音が響く。するとその音に驚いた鳥たちが一斉に羽ばたいた。
晴れ渡る空、僅かに光を反射しながら羽ばたく白い鳥たち。そんな幻想的な光景に見とれて空を見上げる私の肩を、ちょんちょんと誰かにつつかれた。
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