私の騎士様

大豆茶

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騎士の実力

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「くっ、役立たずの下っ端共が……! いいだろう、この僕が直々に相手をしてやるよ。覚悟しろ!」


 忌々しそうにそう言ってサイラスは剣を抜いた。その構えはさっきの男たちと違って様になっている。

 そう、犯罪組織に身を落としてるとはいえ、この人は正式な騎士なのだ。

 騎士であれば街中での帯剣も許されているし、そして何より厳しい試験を突破するだけの実力があるはず。いくらリックが強いと言っても、さすがに騎士相手じゃ無謀だわ……!


「もういい……そんなドブ臭い女、こっちから願い下げだ! もう用はない! 後で口封じのため後で殺してやる……! その前に貴様だ! 貴様はただでは死なせないぞ! この僕を虚仮にしたことを後悔するまでじわじわとなぶり殺してやる!」

「――黙れよ。その口を二度と開くな。反吐が出る」

「ふん、この名剣デュランダルの錆となるがいい! くたばれっ!」

 ひゅん、という風を切る音と共に銀色の剣閃が煌めいた。

 その剣の一振りは、私なんかにはまったく見えないほど鋭かったけど、リックはそれを難なく躱した。

 当然、受けるという選択肢はないだろう。木剣で受けようものなら木剣ごと切り裂かれてしまう、私でもそう想像できるぐらいには様になった一撃だった。

 しかし二度、三度とサイラスは同じように鋭く剣を振るうも、どれもリックの体に掠りもしない。


「クソッ! この野郎ぉぉぉっ!」


 自信のあった攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えたのか、サイラスの構えが私でもわかるぐらい明らかに崩れ、攻撃が大振りになっていた。


 「そこだっ!」


 その隙を逃すまいとリックの腕が消えたように見えるほど素早く振られた。

 そして甲高い音と共に、剣が宙を舞う。サイラスの手から剣が弾き飛ばされたのだ。やった! リックの勝ちだ……!


「――さあ、武器は奪った。大人しく降伏するんだな」

「くっ……」


 数歩後ろによろめきながらサイラスは悔しそうに俯くが、しゃがみこんでいた私にはその表情がうっすらと見えた。

 悔しがるどころか、にやりと笑っていたのだ。

 剣を失ったというのに余裕の表情をしているだなんて――まさか!?


「リック! 魔法を使うつもりよ、気を付けてっ!」

「――っ!」

「ハハハハハ! これで終わりだ! ――え?」


 私が叫んだのと同時に、リックはサイラスとの距離をあっという間に詰めていた。

 そしてサイラスが顔を上げた時には、リックの靴底が顔面へと迫っていたのだ。


「ぷげっ!」

 

 謎の奇声を上げ、きりもみ回転しながら吹っ飛ばされるサイラス。

 そのまま壁に激突し、その後彼がすぐに立ち上がることは無かった。多分気を失っているのだろう。

 その様子を見て助かったんだなと思った瞬間、緊張が解けて、一気に体から力が抜けてしまう。


「アイリス! 大丈夫か!?」


 リックは倒れそうな私の元へと慌てて駆け寄り、体を抱きとめてくれた。そして、私はというと完全に力が抜けてしまい、リックの腕に完全に体重を預ける形となる。
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