9 / 11
騎士の実力
しおりを挟む
「くっ、役立たずの下っ端共が……! いいだろう、この僕が直々に相手をしてやるよ。覚悟しろ!」
忌々しそうにそう言ってサイラスは剣を抜いた。その構えはさっきの男たちと違って様になっている。
そう、犯罪組織に身を落としてるとはいえ、この人は正式な騎士なのだ。
騎士であれば街中での帯剣も許されているし、そして何より厳しい試験を突破するだけの実力があるはず。いくらリックが強いと言っても、さすがに騎士相手じゃ無謀だわ……!
「もういい……そんなドブ臭い女、こっちから願い下げだ! もう用はない! 後で口封じのため後で殺してやる……! その前に貴様だ! 貴様はただでは死なせないぞ! この僕を虚仮にしたことを後悔するまでじわじわとなぶり殺してやる!」
「――黙れよ。その口を二度と開くな。反吐が出る」
「ふん、この名剣デュランダルの錆となるがいい! くたばれっ!」
ひゅん、という風を切る音と共に銀色の剣閃が煌めいた。
その剣の一振りは、私なんかにはまったく見えないほど鋭かったけど、リックはそれを難なく躱した。
当然、受けるという選択肢はないだろう。木剣で受けようものなら木剣ごと切り裂かれてしまう、私でもそう想像できるぐらいには様になった一撃だった。
しかし二度、三度とサイラスは同じように鋭く剣を振るうも、どれもリックの体に掠りもしない。
「クソッ! この野郎ぉぉぉっ!」
自信のあった攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えたのか、サイラスの構えが私でもわかるぐらい明らかに崩れ、攻撃が大振りになっていた。
「そこだっ!」
その隙を逃すまいとリックの腕が消えたように見えるほど素早く振られた。
そして甲高い音と共に、剣が宙を舞う。サイラスの手から剣が弾き飛ばされたのだ。やった! リックの勝ちだ……!
「――さあ、武器は奪った。大人しく降伏するんだな」
「くっ……」
数歩後ろによろめきながらサイラスは悔しそうに俯くが、しゃがみこんでいた私にはその表情がうっすらと見えた。
悔しがるどころか、にやりと笑っていたのだ。
剣を失ったというのに余裕の表情をしているだなんて――まさか!?
「リック! 魔法を使うつもりよ、気を付けてっ!」
「――っ!」
「ハハハハハ! これで終わりだ! ――え?」
私が叫んだのと同時に、リックはサイラスとの距離をあっという間に詰めていた。
そしてサイラスが顔を上げた時には、リックの靴底が顔面へと迫っていたのだ。
「ぷげっ!」
謎の奇声を上げ、きりもみ回転しながら吹っ飛ばされるサイラス。
そのまま壁に激突し、その後彼がすぐに立ち上がることは無かった。多分気を失っているのだろう。
その様子を見て助かったんだなと思った瞬間、緊張が解けて、一気に体から力が抜けてしまう。
「アイリス! 大丈夫か!?」
リックは倒れそうな私の元へと慌てて駆け寄り、体を抱きとめてくれた。そして、私はというと完全に力が抜けてしまい、リックの腕に完全に体重を預ける形となる。
忌々しそうにそう言ってサイラスは剣を抜いた。その構えはさっきの男たちと違って様になっている。
そう、犯罪組織に身を落としてるとはいえ、この人は正式な騎士なのだ。
騎士であれば街中での帯剣も許されているし、そして何より厳しい試験を突破するだけの実力があるはず。いくらリックが強いと言っても、さすがに騎士相手じゃ無謀だわ……!
「もういい……そんなドブ臭い女、こっちから願い下げだ! もう用はない! 後で口封じのため後で殺してやる……! その前に貴様だ! 貴様はただでは死なせないぞ! この僕を虚仮にしたことを後悔するまでじわじわとなぶり殺してやる!」
「――黙れよ。その口を二度と開くな。反吐が出る」
「ふん、この名剣デュランダルの錆となるがいい! くたばれっ!」
ひゅん、という風を切る音と共に銀色の剣閃が煌めいた。
その剣の一振りは、私なんかにはまったく見えないほど鋭かったけど、リックはそれを難なく躱した。
当然、受けるという選択肢はないだろう。木剣で受けようものなら木剣ごと切り裂かれてしまう、私でもそう想像できるぐらいには様になった一撃だった。
しかし二度、三度とサイラスは同じように鋭く剣を振るうも、どれもリックの体に掠りもしない。
「クソッ! この野郎ぉぉぉっ!」
自信のあった攻撃が当たらないことに苛立ちを覚えたのか、サイラスの構えが私でもわかるぐらい明らかに崩れ、攻撃が大振りになっていた。
「そこだっ!」
その隙を逃すまいとリックの腕が消えたように見えるほど素早く振られた。
そして甲高い音と共に、剣が宙を舞う。サイラスの手から剣が弾き飛ばされたのだ。やった! リックの勝ちだ……!
「――さあ、武器は奪った。大人しく降伏するんだな」
「くっ……」
数歩後ろによろめきながらサイラスは悔しそうに俯くが、しゃがみこんでいた私にはその表情がうっすらと見えた。
悔しがるどころか、にやりと笑っていたのだ。
剣を失ったというのに余裕の表情をしているだなんて――まさか!?
「リック! 魔法を使うつもりよ、気を付けてっ!」
「――っ!」
「ハハハハハ! これで終わりだ! ――え?」
私が叫んだのと同時に、リックはサイラスとの距離をあっという間に詰めていた。
そしてサイラスが顔を上げた時には、リックの靴底が顔面へと迫っていたのだ。
「ぷげっ!」
謎の奇声を上げ、きりもみ回転しながら吹っ飛ばされるサイラス。
そのまま壁に激突し、その後彼がすぐに立ち上がることは無かった。多分気を失っているのだろう。
その様子を見て助かったんだなと思った瞬間、緊張が解けて、一気に体から力が抜けてしまう。
「アイリス! 大丈夫か!?」
リックは倒れそうな私の元へと慌てて駆け寄り、体を抱きとめてくれた。そして、私はというと完全に力が抜けてしまい、リックの腕に完全に体重を預ける形となる。
0
あなたにおすすめの小説
侯爵家の婚約者
やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。
7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。
その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。
カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。
家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。
だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。
17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。
そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。
全86話+番外編の予定
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
王太子妃専属侍女の結婚事情
蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。
未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。
相手は王太子の側近セドリック。
ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。
そんな二人の行く末は......。
☆恋愛色は薄めです。
☆完結、予約投稿済み。
新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。
ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。
そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。
よろしくお願いいたします。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【書籍化】番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました
降魔 鬼灯
恋愛
コミカライズ化決定しました。
ユリアンナは王太子ルードヴィッヒの婚約者。
幼い頃は仲良しの2人だったのに、最近では全く会話がない。
月一度の砂時計で時間を計られた義務の様なお茶会もルードヴィッヒはこちらを睨みつけるだけで、なんの会話もない。
お茶会が終わったあとに義務的に届く手紙や花束。義務的に届くドレスやアクセサリー。
しまいには「ずっと番と一緒にいたい」なんて言葉も聞いてしまって。
よし分かった、もう無理、婚約破棄しよう!
誤解から婚約破棄を申し出て自制していた番を怒らせ、執着溺愛のブーメランを食らうユリアンナの運命は?
全十話。一日2回更新 完結済
コミカライズ化に伴いタイトルを『憂鬱なお茶会〜殿下、お茶会を止めて番探しをされては?え?義務?彼女は自分が殿下の番であることを知らない。溺愛まであと半年〜』から『番の身代わり婚約者を辞めることにしたら、冷酷な龍神王太子の様子がおかしくなりました』に変更しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる