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【三章】技術大国プラセリア

11.猶予なし

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「このチャンスを逃すわけにはいかねぇんだ……アンタにゃ悪いが、『嫌だ』とは言わせねぇ――」

「いいよ」

「――は? 今なんて……」

「『いいよ』って、協力するって言ったんだ」

 鳩が豆鉄砲をくらったような顔をしているカティア。いや、そこまで驚くことないだろ。

「……ハッ、アンタよっぽどのお人好しらしいな。いいのか? 犯罪の片棒を担ぐことになるかもしれないんだぜ?」

「正攻法でやるんだろ? なら問題ないじゃないか。それに、俺はカティアとリンのことが気に入った。そして事情を聞いて助けたいって思った。それだけじゃ理由としては不足か?」

 プラセリアまで連れてきた方法は無茶苦茶だったけど、あくまで手を貸すかどうかの最終的な判断は俺に委ねてくれているのがわかる。

 さっきも脅し文句のようなことを言いかけていたが、断ったとしてもきっと無理矢理従わせるようなことはしなかっただろう。

 短い時間だったけど、カティアと過ごした中で彼女の人となりは把握できた。態度なんかは悪ぶっているものの、根っからの悪人ではなく、むしろ優しい人だというのが俺の印象だ。

「――ハハ、ハーッハッハッハ! いいなアンタ、オレもアンタのことを気に入ったよ」

 しばらく目を丸くしていたカティアだったが、突然声をあげ笑い始めた。
 そして、ひとしきり笑ったあと、俺に向けて手を差し出す。

「んじゃ、改めてよろしくな。カティア」

「ああ、よろしくな。

 差し出された手を取り、固い握手をする。
 名前を呼ばれたことでカティアからの信頼を得られたことを感じた俺は、嬉しさのあまり笑みが漏れてしまった。

 この瞬間、俺とキャッツシーカーとの協力関係が成立した。

 ――と、いっても具体的にどうすればいいのかはさっぱりわからんな。とりあえずコンペティションとやらについて聞いてみるか。

「……んで、魔動人形関連って言ってたけど、そのコンペティションってのは具体的に何を競うものなんだ?」

「簡単にいうと技術力の勝負なんだが……まあなんてことはねぇ、ただの力比べさ。決闘と同じだよ。より強い魔動人形を完成させれば問題ない。ただ、あくまでも技術力を競う場なんで、同じ条件下……具体的には一般等級の魔動人形をベースにしねェといけないって縛りはあるがな」

「なるほどね……どれだけ能力の底上げができるか、どんな装備で戦うかが重要になってくるわけか」

 同じ等級の魔動人形同士なら基本性能の差はほとんどない。そこを合わせ目消しや塗装などの工程を加えることで底上げし、戦術に見合った武装を選択することが勝利のカギとなるだろう。

 いやはやなんというか……普通に面白そうだな。
 単純な力比べだったら、等級の高い魔動人形を所持している方が圧倒的に有利になるに決まってるもんな。
 
「それで、そのコンペティションっていつから始まるんだ?」

「明後日だ」

「そうか、ならまだ時間は――」

 ――ん?
 
 『明後日』って、今はもう夜だし実質明日しか時間なくね?

 準備をしようにもあまりにも時間が足りず、徹夜コース確定の瞬間だった。

 
 

 


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