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第二十二話 触れる* -1
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おそらく、ルインの身体でシグルドの唇が触れていないところはないだろう。
そう思ってしまうくらい全身を舐めまわされ、弄られ、愛撫されて、ルインはもはや息も絶え絶えだった。
行為が始まってから、シグルドは懇切丁寧にルインの身体を溶かしていった。
唇はもちろん、首筋や鎖骨。それから胸や腹といった身体の様々な部分を大きな手のひらが這いまわっていく。普段は皮手袋で隠れているその手は、竜騎士らしく皮膚が硬く荒れたもので、ルインの薄い肌はその刺激に見悶えた。
本当に色んなところを触られた。シグルドに触れられるまで、存在すら忘れていたような部分まで余すことなく触られて、ひょっとしたら、身体の輪郭を全て辿られたのではないだろうか。
そのなかでも我慢できず、一番信じられないと抗議の声を上げたのは、足の指を舐められたときだった。
一応、寝室に来る前に湯は浴びてきた。とはいえ、そこは足である。一日中動き回っていた身としては、いくら洗っても口に入れていいものだとは思えなかったし、入れて欲しいとも思わなかった。
けれども、汚い、と騒ぐルインなどまるっきり無視して、シグルドは五本の指を丹念に舐っていった。
最初はくすぐったいだけだったそこは、指の間や付け根を軽く噛まれたり、吸われたりしているうちに立派な性感帯に変わっていった。シグルドの唇が触れるたびに、そこから快感なのかくすぐったさなのかよく分からないものが生まれては、ルインの中に染み渡っていく。
触れられているのは、たかが足の指だというのに、だ。
気を抜くとみっともない声が飛び出してしまいそうで、ルインは必死に唇を噛んだ。
溺れる者が藁をも掴もうとするように、縋るように伸ばした先にあった枕を必死に抱きしめて口を押し付ける。零れ落ちたルインのあえかな声は、溢れた涎とともにふかふかの枕に吸い込まれていった。
そのことを不満に思ったのか、それとも指を舐め尽くして満足したのか。
とにかく、ひとしきり足を舐めたシグルドは踵を軽く噛んだかと思うと、そのままルインの足首を持ってふくらはぎに舌を這わせてきた。その温かく湿った感触が、ふくらはぎから膝、膝から太ももと徐々に身体の中心へと上がってくる。
太ももの内側の柔らかい部分に差し掛かったとき、ちくりとした甘い痛みが走った。
どうやら皮膚の柔らかい場所に強く吸い付かれたらしい。生白い太ももに小さな赤い痕が残っている。
「ふぐッ」
驚いて飛び出した声は色気の欠片もないものだった。
しかし、シグルドは耳まで赤くしたルインをちらりと見て、愉快そうに口の端を上げた。
「ルインの肌はどこもかしこも甘い」
うっとりとした口調で言われて、ルインは素直にそんなわけがあるか、と思った。
先ほどからシグルドがしつこく舐めまわしているのはただの人間の皮膚だ。甘いわけがない。何か味がするとしたら、さっき使った石鹸の味だろう。
けれど、涙で滲んだ視界で見たシグルドに、嘘や冗談を言っている気配はなかった。
「もっと、触ってもいいか」
訊ねられて、ルインは枕で顔を半分隠したままで頷いた。
抱えられていた足はそのままに、両足を広く開かされる。シグルドは躊躇うことなく、開いたその間に身体を割り込ませてきた。最後まで身に着けていた下着を脱がされて、とうとう全裸にされてしまい、それもまた恥ずかしくてルインはますます枕に顔を埋めることになった。
けれども、ルインは最初の宣言通り、シグルドのやることを全て受け入れた。
足の指を舐められたときにした微かな抵抗は、拒否ではなく驚愕だった、と誰にするでもない言い訳を心の中だけでして、ルインは触れてくる手に身を任せたのだ。
元々、ルインは性的なことには淡白な方だ。日々の忙しさにかまけて、自慰だってたまにしかしない。お世辞にも発育がいいとは言えない身体は、そんなことに回す体力はないとでも言うように性欲を後回しにしていた。
それに、ここひと月は毎夜シグルドに抱きしめられて眠っていたのだ。居候となってからはひとりの時間すら取ることは難しかった。
つまり、ルインは最後にいつ自分が自慰をしたのかよく覚えていなかった。それくらい誰からも触れられていなかったルインの男芯は、シグルドの手のひらの熱を感じた瞬間、呆気なく爆ぜてしまった。
そう思ってしまうくらい全身を舐めまわされ、弄られ、愛撫されて、ルインはもはや息も絶え絶えだった。
行為が始まってから、シグルドは懇切丁寧にルインの身体を溶かしていった。
唇はもちろん、首筋や鎖骨。それから胸や腹といった身体の様々な部分を大きな手のひらが這いまわっていく。普段は皮手袋で隠れているその手は、竜騎士らしく皮膚が硬く荒れたもので、ルインの薄い肌はその刺激に見悶えた。
本当に色んなところを触られた。シグルドに触れられるまで、存在すら忘れていたような部分まで余すことなく触られて、ひょっとしたら、身体の輪郭を全て辿られたのではないだろうか。
そのなかでも我慢できず、一番信じられないと抗議の声を上げたのは、足の指を舐められたときだった。
一応、寝室に来る前に湯は浴びてきた。とはいえ、そこは足である。一日中動き回っていた身としては、いくら洗っても口に入れていいものだとは思えなかったし、入れて欲しいとも思わなかった。
けれども、汚い、と騒ぐルインなどまるっきり無視して、シグルドは五本の指を丹念に舐っていった。
最初はくすぐったいだけだったそこは、指の間や付け根を軽く噛まれたり、吸われたりしているうちに立派な性感帯に変わっていった。シグルドの唇が触れるたびに、そこから快感なのかくすぐったさなのかよく分からないものが生まれては、ルインの中に染み渡っていく。
触れられているのは、たかが足の指だというのに、だ。
気を抜くとみっともない声が飛び出してしまいそうで、ルインは必死に唇を噛んだ。
溺れる者が藁をも掴もうとするように、縋るように伸ばした先にあった枕を必死に抱きしめて口を押し付ける。零れ落ちたルインのあえかな声は、溢れた涎とともにふかふかの枕に吸い込まれていった。
そのことを不満に思ったのか、それとも指を舐め尽くして満足したのか。
とにかく、ひとしきり足を舐めたシグルドは踵を軽く噛んだかと思うと、そのままルインの足首を持ってふくらはぎに舌を這わせてきた。その温かく湿った感触が、ふくらはぎから膝、膝から太ももと徐々に身体の中心へと上がってくる。
太ももの内側の柔らかい部分に差し掛かったとき、ちくりとした甘い痛みが走った。
どうやら皮膚の柔らかい場所に強く吸い付かれたらしい。生白い太ももに小さな赤い痕が残っている。
「ふぐッ」
驚いて飛び出した声は色気の欠片もないものだった。
しかし、シグルドは耳まで赤くしたルインをちらりと見て、愉快そうに口の端を上げた。
「ルインの肌はどこもかしこも甘い」
うっとりとした口調で言われて、ルインは素直にそんなわけがあるか、と思った。
先ほどからシグルドがしつこく舐めまわしているのはただの人間の皮膚だ。甘いわけがない。何か味がするとしたら、さっき使った石鹸の味だろう。
けれど、涙で滲んだ視界で見たシグルドに、嘘や冗談を言っている気配はなかった。
「もっと、触ってもいいか」
訊ねられて、ルインは枕で顔を半分隠したままで頷いた。
抱えられていた足はそのままに、両足を広く開かされる。シグルドは躊躇うことなく、開いたその間に身体を割り込ませてきた。最後まで身に着けていた下着を脱がされて、とうとう全裸にされてしまい、それもまた恥ずかしくてルインはますます枕に顔を埋めることになった。
けれども、ルインは最初の宣言通り、シグルドのやることを全て受け入れた。
足の指を舐められたときにした微かな抵抗は、拒否ではなく驚愕だった、と誰にするでもない言い訳を心の中だけでして、ルインは触れてくる手に身を任せたのだ。
元々、ルインは性的なことには淡白な方だ。日々の忙しさにかまけて、自慰だってたまにしかしない。お世辞にも発育がいいとは言えない身体は、そんなことに回す体力はないとでも言うように性欲を後回しにしていた。
それに、ここひと月は毎夜シグルドに抱きしめられて眠っていたのだ。居候となってからはひとりの時間すら取ることは難しかった。
つまり、ルインは最後にいつ自分が自慰をしたのかよく覚えていなかった。それくらい誰からも触れられていなかったルインの男芯は、シグルドの手のひらの熱を感じた瞬間、呆気なく爆ぜてしまった。
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