婚約者を幼馴染にとられた公爵令嬢は、国王陛下に溺愛されました

佐倉ミズキ

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3.驚きの王宮パーティー

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父が張り切って仕立て屋を呼び、パーティー用にドレスやアクセサリーを新調した。
お気に入りのドレスでも良いかと思っていたが、それは却下された。
初めての王宮なのだからと娘以上に気合が入っているのだ。

当日、髪を結わい、新しいドレスを着てアクセサリーを身に着けるとマーサは「はぁぁ」と感嘆の声をあげた。

「お嬢様、大変お美しくあられます」
「ありがとうマーサ」

支度を手伝ってもらったマーサにお礼を告げて、馬車に乗って王宮へ向かった。
気分は憂鬱だ。
なんなら胃が痛くなりそうなほど。
大きなため息をついていると、王宮に到着した。

「凄いわ……」

セシリアは間近にそびえ立つ白亜の宮殿を見上げて声を漏らす。
初めての王宮に胸が自然とワクワクしてきた。
城門から馬車が並び、列を作っていた。
順番を待ち、案内された大広間は豪華な装飾で飾られ、その美しさに圧倒される。
テーブルに食事が用意され、自由に飲み食いしても良いようだった。

爵位のある子息令嬢だけなので、そこまで多くはなかったが知った顔も多くちょっとした同級会である。
セシリアも友人に声をかけられ、ほっとした気分で輪に加わった。

「ねぇ、国王陛下が挨拶に来られるんでしょう? ワクワクするわね」
「えぇ、初めて近くでお目にかかれるわ」

みんなが頬を赤らめて嬉しそうに話している。

「国王陛下ってどんな方かしら」

王宮に来ない限り、国王陛下の姿を見ることはほぼない。
政治面でも武術面でもその手腕は長けており、まだ国王に就任してから間はなかったがこの国王であれば安泰だろうとまで言われていた。
そうした噂は聞いていたが、詳しい人物像までは知らなかった。

「国王陛下はとてもお美しい方と聞いているわ」
「私も聞いたことがあります。お会いするのが楽しみだわ」

(なるほど、女性の皆さんがそわそわしていたのはそうした理由だったのね)

しかし、今のセシリアは国王陛下より気にしなくてはいけないことがあった。
大広間の入口を見ると、ちょうどガルとソフィアナが入ってくるところだった。

(来たわ……)

ソフィアナはゆったりとしたドレスを身にまとっているが、そのお腹がふっくらしているのは傍目でもよくわかる。
二人が入ってきた瞬間、広間にいる人たちがセシリアを見た気がした。

セシリアは気が付かれないよう、そっと背を向けて距離を取ろうとした。
しかし。

「セシリアじゃない。お元気?」

ソフィアナがセシリアのところまできて声をかけてきた。
ガルは空気を察して、ソフィアナを止めるがソフィアナはその手を払う。

「臥せっていたと聞いたけれど、顔色が良さそうで安心したわ。あなたが気落ちしたままだと、いつまでも私たちが幸せになれないもの」

微笑みながら悪気もなくいうソフィアナに、周りは気にしていないようで聞き耳を立てているのが分かる。
挑発に乗ってはだめだと心に言い聞かせ、セシリアも笑みを浮かべる。

「えぇ、お陰様でもうすっかり良いわ。ソフィアナも身重なのだから無理しないでね」
「まぁ、お優しい。セシリアこそ……」
「え?」
「今日はせっかくのチャンスなのだから、お相手探し……、頑張らないとね」
「……!」

ソフィアナはニヤッと笑って含み笑いをする。

「大丈夫よ、セシリアは美しいんだもの。すぐにお相手は見つかるわ」

(誰のせいで……)

ソフィアナの発言に、さすがのセシリアも笑顔が消えた。
場もわきまえず、言い返してしまおうか。
そう思った時だった。

「その相手……、俺では役不足かな?」

すぐ横でそう声をかけられ、ハッとして顔を上げる。

「あなたは……」

そこには先日、王宮病院で出会ったあの男性がいた。
胸には勲章をつけ、腰には剣を携えた王宮の礼服を着用している。

(騎士様……、ではないのかしら?)

騎士の礼服ともまた違う気がした。

「お久しぶり。セシリア嬢」
「あの時以来ですわね。もうお加減はよろしいんですか?」
「えぇ、すっかり。……ところでこちらの方々は?」

男性はガルとソフィアナに目線を向ける。
ガルはどこかムッとした表情をしており、ソフィアナは目の前に現れた背の高い美形男性に目を奪われていた。

「幼馴染のガルとソフィアナです」
「あぁ、君たちが……。噂は聞いていますよ」

男性が微笑むと、ソフィアナは頬を染める。

「噂ですか? まぁ、何かしら。恥ずかしい」

何を勘違いしたのか、照れたように身をよじるソフィアナに男性は笑顔のまま冷たい声を出す。

「えぇ、セシリアの婚約者を寝取った令嬢だとね」
「! それは……」
「まぁ、でも俺としては感謝したいところだ」
「感謝?」

男性の言葉にソフィアナは怪訝そうにする。
そして、男性はセシリアを振り返った。

「セシリア・アレグレット嬢。俺と結婚してほしい」
「えっ!?」

突然の求婚にセシリアは目を丸くする。

(いきなりここで求婚!?)

突如始まった求婚に広間も静まって、セシリアたちに注目をしている。

「お、お待ちください。急にそんなことを言われてもお名前も存じ上げないのに……」

セシリアがそう言うと、男性は「あぁ、そうだな」と微笑んで背筋を正した。

「名はアレン・クラウド・ダミア。25歳だ。この国の国王をしている」
「……え?」

(国王……? 国王陛下……?)

アレンと名乗った男性の言葉にセシリアは言葉を失った。
いや、セシリアだけではない。大広間にいた全員が声を失った瞬間だった。

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