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2 ご褒美にありついた駄犬視点

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 主人に俺の内心を吐露した日。
 本当はあのまま抱いてしまいたかった。心情的には。


 だけど、このままご主人を貪っても、ご主人の心まで手に入るかわからなかった。

 やや男女のそれに疎いらしい主人。その心の内など、到底掴み切れるものではない。
 好意は感じていても、それが恋人となり得るものなのか。家族のままで終わるのか。
 わからないから、求婚するという手段をとった。
 未来永劫、傍にいられる権利が欲しくて。 
 俺がそれを望んでいることを知ってほしくて。
 …………意識して、ほしくて。


 俺の「好き」に同じものを返してほしいという愚かしくも身の程知らずな願望。我慢に我慢を重ねて、まずは恋人になろうと騙すようにして提案していた。

 
 

 その結果、それ以前と変わらない日常の中で、違った表情を垣間見せてくれた。
 下僕としての俺が無体することはないと信を置くくせに、男としての俺を意識していくその姿。
 どれほど煽られたのか、きっと貴女はわからない。


 そうやって、少しずつ少しずつ、手探りで貴女の心を探し当て。
 ようやく男女のそれと思しき好意と言葉を向けられて、少しばかり箍が外れても仕方がないと思うのだ。
 
 ――――――まぁ、いざとなったら、あんたが俺を止めることができると知っているからこそなんだけど。
 

 そんな計算をしながら口づけをすれば、大切な魔女は驚きの為かきょとんと呆けていた。
 そこにわずかでも嫌悪が浮かんでいないか注意深く観察しながら、たったいま至高の感触を味わった己の唇をぺろりと舌でなぞる。

 ………柔らかい。

 我に返った主人が何か発する前に、もういちど口づける。今度はもう少し深く。

 頭がおかしくなるくらい、気持ちいい。
 ずっと欲しかったものだ。
 思わず咥内を蹂躙してしまったら、真っ赤にとろけた顔なんて見せてくるからこちらとしてもたまらない。
 けれど少しやりすぎたのか、がくりと膝から崩れ落ちる主人。
 気を失ってしまった主人の身体を運ぶ。


 


 ――――――どくどくと、心臓がうるさい。
 気を失ってしまった彼女に覆いかぶさるようにして。じっと彼女を見つめる。

 ここでやめるべきなんだろう。けれど、どこまで許されるのだろうかという興味が沸く。沸いてしまう。

 イヤならば、彼女は俺を止められるのだ。
 それが免罪符となって背中を押す。服の胸元を緩めれば、わずかに覗いた肌にクラクラした。





 目を覚ました主人は、全身を真っ赤に染めて俺を制止させようとした。

「止めてほしかったら、“命令”してよ。そうしたらちゃんと待ってあげる」

 隷属の力で支配されるのはとても心地が良い。
 他ならぬ彼女が揮う力だから。
 力を使うことに忌避感や罪悪感があるようだが、俺を縛ることが褒美になるのだと、いずれわからせてやりたい。


 「『……駄犬』」
 
 俺を呼ぶその声。それだけで、ぞくぞくとしたものが背筋を駆け上っていく。

 縛り上げられていくのを感じる。
 うっとりしながら彼女の白い脚を舐めたのは無意識だった。

「『誰が舐めることを許可した? 本当に駄犬だな』」

 するりと脚が逃れていく。もうおしまいかぁと残念に思いっていると……猛ったものに当てられ、びくりと体が震える。

「…っ、ご主人、……」

 息が荒くなる。
 ただ主人の脚が当てられただけで逝きそうになるなんて…………!
 更にぐりぐりと容赦なく力を込められれば喘ぐことしかできない。

「あっ……! ご主人様っ……!!」
「『イクな』」

 無情な声に、果てることすら許されないがそれにすら快楽を拾う。
 ほっそりとした魔女の手がするりと俺の頬を撫でた。

 恍惚とした表情をしているだろう俺に、彼女は命じる。

 端的に言えば、自分に触れて気持ちよくさせろ、というような意味合いのことを。

 もしかしたら低く唸り声をあげていたかもしれないし、もしかしたらそのとき口づけをしていたかもしれない。一瞬理性が飛んだのでその辺は定かじゃない。

 俺にとって、彼女の“命令”はすべて快感に近い悦び。
 その彼女の命令に縛られたうえで、彼女を触れろと言われる。
 それはもう、無上の幸福であり、快楽。

 これ以上に俺を煽ることがあるだろうか?

 “命令”してまで俺に触れて欲しいと、あんたが思っているってこと。

 ハッと我に返ったような表情を見て取って、新たな“命令”で撤回されては困ると口づけを続けながら、引き裂くように裸に剥いていった。
 抵抗にならない抵抗をするその小さくてやわらかい身体に指を這わせ、性急に秘所を探る。
 そこはほんの少し濡れていた。
 感じてくれているのかと思うと頭が茹るが、その小ささ狭さに少し冷静になる。
 これはかなりしっかりとほぐさないと。
 主人は触れれば触れるほど赤くなって、可愛い声をあげ、すぐに気絶する。
 気をやっているうちに丹念に秘所をほぐす。起きていると嫌がりそうなので、気絶している間にしっかりたっぷり舌で嬲るのも忘れない。

 ふにゃふにゃになりながらこちらの思うままに啼く姿は、情欲を煽るのに十分で。

 可愛い主人は、小さくてどこもかしこも柔らかい。
 胸も尻もないと思っていたけど、そうでもない。必要なら育てるけどむしろ感度が大事でしょ。育てるならそこ重視でいこうと心に決める。

 小さい胸の頂はちょっといじるだけですぐに尖って主張した。
 それをコリコリさせたり吸い付けばもどかしげに腰を揺らめかす。
 上半身に快楽を植え付けながら、空いた手は秘所へと這わし、中に入れた指で探って掻きまわす。
 一際声をあげる場所を集中的に責めれば、中をギュウっと締め付けながらまた気を遣った。

 あー……可愛い。
 
 本当に犬みたいにべろべろと体中を舐め尽くす。
 蜜を零す秘所も丹念に舐め、花芯を嬲って――――――と、いつの間にか目を覚ましていて、か細い悲鳴とともにびくびくと白い身体が跳させてまた気絶したりする。可愛い。

 そうして夢中になっていたときはまだ良かった。
 けれど、ふと身体を起こしたところで、目の前で扇情的な姿をさらす大事な魔女を見て我に返ってしまった。

 
 とてもきれいで、俺にとっては至高の得難い大事なもの。

 その彼女のすべてに、俺などが触れていいのだろうか。

 薄汚くて、人殺しで、穢れ切っていて、彼女のやさしさと弱さに付け込んでようやく傍にいることを許してもらっているような自分が、彼女に。

 ふと湧いて出た不安は瞬時に全身に駆け巡り、下半身は張り詰めて痛いほどだというのに、俺は躊躇って―――――――――――彼女にゆだねた。





 ずるくて臆病な俺が、明確な許しが欲しくて本当にいいのかと確認すれば、明らかに情欲の籠った視線で、可愛らしい唇で、命じてくれた。

 『胎の中で果てることを許す』と。

 “命令”することを好まない魔女。
 今この時にそうしてくれるのは、俺が躊躇わないで済むようだと思ってもいいのだろうか。

 ぞくりと何かが背筋を這いあがる。
 魂の奥底から震えた気がした。

 愉悦か、独占欲か、そこまで想ってもらえているという優越感に近いものなのか。わからない。だけど、目の前の女をめちゃくちゃにしたい。優しくしたいとも確かに思っているのに。
 
 自分の感情を持て余しながら、それでもどうにか身の内で荒れ狂う激情を押しとどめて、ゆっくりとご主人の蕩けたそこに切っ先を宛がう。
 狭くて熱いそこが、徐々に自分を飲み込む様に眩暈がする。

 
 自分を支配している主を、俺自身が蹂躙するという背徳感に異常に高揚していることを自覚する。

 主が一言命じれば、俺は止まるのに、主の口からそれがこぼれることはない。
 必死に口を押え、時折苦しそうでいて艶めかしい声を漏らすだけ。

 …………そう。
 これが、あんたの望みなの。
 主の望みなら、全力で応えなくちゃね。

 完全に中に入り込めば、繋がる魔女から様々な感情が流れてきた。

 とてつもない苦痛。だけどそれだけじゃない。
 たとえようのない幸福感。
 伝わる感情に、俺自身のソレが入り混じり、重なった気がした。

 それが愛しいという気持ちなのかもしれないと思い至ったとき、不意に感情が溢れ出す。

 嬉しい。うれしい。嬉しくて、幸せすぎて泣きたくなるなんて、知らない。
 俺に全部くれる大切な魔女。
 愛しい主人。

 もし、この先、あんたが新しい犬を飼ったって、死にそうなくらい妬心を抱きながら我慢できる――――――――――…………………かもしれない。


 …………でも、本心は。
 できれば、俺以外誰も飼わないで。
 イイ子でいるから。
 なんでもするから。
 お願い。
 ―――――――おれだけのものに、なって。



 愛しくて幸せで仕方がないのに寂しいなんて、おかしい。
 幸せで胸がいっぱいなのに悲しくて締め付けられるなんて、本当に変だと思う。

 大事にしたいのに、必死に痛みに耐えている魔女に、無慈悲に腰を打ち付けたくなる。
 そうしているうちにきつく締め付けていた場所が多少なりともなじんできたのか、動かせるようになったので、ゆるゆると動く。
 ざわめく胎内。
 絶え間なく響きだす声。

 あー……まずい。

 理性とか持っていかれそう。
 なんとか押しとどめるためにひたすら喋る。だけど、自分でも何を口にしているのかよくわからない。
 目の前で必死にしがみついてくる彼女が気を失ってもやめられそうにないし、むしろ気を失ったら話しかけない分だけ自分が獣じみた情欲を叩きつける気がしてならない。

 だから気を失わないで、と伝えたのに。 

「……あぁ、意識、なくなっちゃったねぇ……。」

 可哀そうに。
 そう嘯きながら、ぐったりとしたその身体に手を伸ばす。

 ……本当に可愛い。
 
 先程よりも強く長くその中を堪能してからもう一度注ぎ込んでやると、主人がうっすらと目を開けたので、汗ばんだ額やこめかみに口づけを落とす。
 朦朧としてされるがままにされるその姿が愛しい。


 朝までで、どれだけやれるかなぁと計算する。
 こちらはお預け期間が長かったせいもあるが、それだけでなく、彼女相手ならいくらでもヤれそう。
 ご主人の肢体を中も外も俺の吐き出したもので汚しまくって…………あ、「胎の中で果てよ」って命令されてるんだった。今日は命令どーり、その中でだけ吐き出してあげなきゃね。

 そのうち中だけでイけるようにさせて、……いや、俺が欲しいって懇願させるのも…………?
焦らしに焦らしたら、さっきみたいに“命令”してくれるかも…………

 そう考えただけで己の質量が増し、ちょうど目覚めた主人がぎょっと目を見開いた。

 にっこりと、安心させるように笑いかけたのに、なんで潤んだ目で見つめてくるの?
煽っているの? そうなの? そうなんだよね?

 ――――――じゃ、遠慮なく。
 
 激しく揺さぶれば、魔女は悲鳴をあげ、繋がった場所がじゅぶじゅぶといやらしい音を出す。
 散々濡らしたそこは、破瓜の証と俺が吐き出したものと新たな蜜とで大洪水だ。
 それが最高に気持ちいい。
 滑りが良く、それでいてぎゅうっと締め付けてくるあたたかい場所は、俺だけのものだ。
 

 もはや身体を隠すことも考えられないように、目の前でくったりとした姿を見せつける主人。
 そこに普段の幼さはない。
 白く細い身体は薄く色づき、汗ばんだ肌に黒い髪が張り付き、薄い桃色をしたとがった先端が呼吸と合わせて上下するのは誘っているかのようだ。

 ぎし、とベッドがきしんだ。

「……ぐらん……?」

 眠たげな黒い瞳。疲れているんだろうなぁとは思いつつ、頭の片隅ではもっと大きくて丈夫なベッドを購入しようと決めた。

「ふぇっ?」

 ずぐ、と先端を更に奥へと押し込めば、黒く濡れた瞳を大きく見開く愛しい魔女。
 俺はへらっと笑う。

「ごめんねぇー、ご主人。俺ぜんぜん足りないの。せっかくもらえたご褒美だしぃ、堪能させて、ね?」
「やっ……! こ、この駄犬んっ……んぁあああああああん!!!」
 
 駄犬と罵られ、嬉しくなって一気に最奥まで責め立てる。

 そうなの。俺ってば駄犬だからぁ、ハジメテのご主人様の喉が枯れるまで貪っちゃうかも。







 俺の中が“ご主人様可愛い”で一色になる。
 さっきの俺は俺らしくなかったね。
 なんだってご主人が新たな犬を飼うことを許しちゃうわけ? 想像の中でも有り得ないでしょ。
 コレは俺だけの大事な宝物。
 誰にも分けてやらねーよ。
 他の犬なんざ蹴散らしてくれる。
 あんたの中も、俺だけにしてあげるから。いろんな意味でね!

 止めたかったら、”命令”してね? ご主人様。






 ちょーっと調子に乗って貪り続けた結果、主人を甲斐甲斐しくお世話させてもらえたんだけど、それが恥ずかしかったらしいご主人に散々怒られたし拗ねられた。
 それも俺にとってはご褒美に他ならないんだけどね!






 そんなふうに、色々なご主人を堪能していたのだが………

 二人きりのときはご主人の名前で呼ぶように“お願い”された俺は、何故かそれを口にしようとしても全然出てこなくて、代わりに顔に熱が集まってどもってしまうという謎の疾患にかかった。

 そうなるとイイ雰囲気とかも吹き飛んじゃうし、ご主人は「この世界じゃ変な名前なの……?」とか、ちょっと拗ねた表情かおするし……!
 違うんだと言いたいけど、じゃあ何で? と尋ねられて途方に暮れる。

 本当に、なんなのこれ!?


 ご主人様からの“お願い”(自分の名前を呼んでほしいとかいう可愛いヤツ)を、すぐに叶えてやれない自分の不甲斐なさに悶絶することになるとは、このときの駄犬は知る由もないのだった。




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みんなの感想(2件)

きよぴか
2023.02.21 きよぴか

つい先ほど「魔女パン」を読み終えた所で、番外編も楽しく読ませて頂きました!
「魔女パン」が凄く好みの作品だったので嬉しいです。
他の作品もこれから読みますね。応援しています!

解除
煌
2020.03.12

やっぱり羞恥心の御方であったか

解除
1 / 5

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