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対抗戦
研究室 欠場と裏切り
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ーー不運。
ディズルはそう思っていましたが。
実際には、幸運でした。
血液の代わりに、鉛でも流し込んだかのような倦怠感。
体が罅割れるような、いえ、引き裂かれるような激痛。
寝れば治る。
そう信じ込み、男子寮へと。
感覚に乏しい、他人のような手足を動かしていたとき。
最も見つかってはいけない人物と鉢合わせしてしまいました。
抵抗など無意味。
有無を言わさず、ディズルは研究室まで連れてゆかれました。
汚いーーとは言えないくらいに室内は散らかっています。
ベズの性格や人柄からすると、意外です。
本来なら、几帳面なディズルは眉を顰めるところですが。
不思議と、居心地は悪くありません。
やはりベズへの信頼が大きいようです。
ベズ・ランティノール。
父親のようにはなれないディズルの、目標。
彼のような懐の深い人物になりたいと、ディズルは憧れていました。
その、憧れの人物の口から。
最も聞きたくない言葉が放たれようとしたときーー。
「このっ、バカチン! 新しく何かするときは、私かベズに相談してからだって言っておいたでしょう!」
「うひっ、あひっ!? アリス先生っ、耳っ、耳っ?! 引っ張りゃにゃいで~~!!」
ノックもせず、勢いよく扉が開きます。
学園の生徒数は少ないので、接点が少ないディズルでも二人が誰か、すぐにわかりました。
アリスに耳を引っ張られながらも、体勢を崩していないメイリーン。
ディズルではそうはいきません。
父親が言っていたように、「聖拳」の使い手は体術にも優れているようです。
どうやら、彼女ーーメイリーンも、ディズルと同様の理由で連れてこられたようです。
ディズルもまた、ベズに相談することなく「聖語」の鍛錬を行ってしまいました。
まるで二人が遣って来るのがわかっていたかのように、ベズは動揺することなく「治癒」の「聖語」を刻み始めました。
質実剛健の、鑑のような男。
「聖語」の光が掻き消えると、ベズは正面から言い放ちます。
「明日の『対抗戦』、棄権しなさい」
「いえ! ベズ先生っ、私は……」
「私の言い方が悪かったようだ。ーーディズル君。君を『対抗戦』に出場させることはしない。これは決定事項であり、命令だ。決して覆らない」
到頭、下ってしまいました。
頭を、下げてはいけません。
たとえ愚かなことであっても、自分の行いを否定するわけにはいきません。
リフとの対戦。
望んでいた、敗けられない戦い。
高揚すると同時に、心に灯った一抹の不安。
リフとの対戦に備え、習得した「聖語」。
でも、それを完全に使いこなすことができていなかったのです。
万全を尽くす。
そう言い訳し、ほんの少しの不安さえ、打ち消そうと無理をした結果。
ディズルは。
リフを裏切ってしまいました。
涙を流す資格などありません。
膝に爪を立て、歯を食い縛ります。
「竜にも角にも、メイリーンもベズに『治癒』られなさい!」
「おひぁあっ!?」
よほど腹に据えかねているのか、先ほどからアリスの言葉が乱れています。
実は、露出度が高いアリスを、ディズルは苦手としていました。
良いか悪いかは措くとして、ディズルは古い考えを持った人間です。
真面目が服を着て歩いている。
そう評されるディズルは、服も真面目に着ないといけないと思っているのです。
その場で、腕の力だけでメイリーンを押すアリス。
それだけで、女性の中では大柄なメイリーンが弾き飛ばされます。
飛ばされた彼女の先には、立ち上がったベズ。
「おぴゅわぶこぽるちぇごりっぱぁ……」
アリスも酷なことをします。
メイリーンが好意を寄せている相手。
そんな相手に向かって投げつけられたのですから、メイリーンが壊れた「聖人形」のようになってしまうのも致し方ないことです。
一向に気にした素振りを見せることなく、「治癒」を施すベズ。
「治癒」中のベズには聞けないので、やむを得ずディズルはアリスに尋ねました。
「あの、学園長。ベズ先生はなぜ、ストーフグレフさんを抱擁しているのですか?」
「あぴょりんがるほぷえっさぁ……」
抱擁とは、親愛の情をもって抱き抱えること。
他に、抱き締めて愛撫すること、という意味もあります。
「親愛の情」があるかどうかはともかく、ディズルには「抱擁」しているように見えました。
おおむね事実であることを言葉にされてしまったので、炎竜になって暴れるメイリーン。
そんなことをすれば、ベズの拘束がさらに強まるだけなので逆効果なのですが、混乱の極みにあるメイリーンには言わぬが竜。
「それは、症状の違いね。今はまだ、症状を説明したところで理解できないでしょうから、わかり易く言うわ。ーーディズル。あなたの体には『罅』が入ったのよ。通常、そんなことはできないというのに、ティノに及ばないとはいえ、『努力』のし過ぎ。『罅』が治る前に無茶をしたから、体に変調を来したのよ。今、無理をすれば、『聖語』が使えなくなるだけでなく、身体機能にも異常がでる。全身の『罅』が治るまでの一巡り、『聖語』は禁止よ」
アリスの説明は聞こえていましたが。
心にまでは届きませんでした。
地竜組、父親、そしてリフ。
自分の行為が、どれだけの迷惑を引き起こしたのか。
心に現実が沁み込んだことで、ディズルは罪悪感に苛まれます。
「メイリーンのほうは何ともないように見えるけれど、ヤバいくらい深刻。言うなれば、体にでっかい穴が開いたようなモノ。命に係わるような事態。ただ、単純でわかり易いがゆえに、治し易い。今後、『必殺技』ーーではなく、新しいことをやるときは私かベズに相談すると確約するなら、明日の『対抗戦』、出場しても良いわよ」
「やうやうやうやうやうっ! ほやうっ!? ほ…本気でござりまするか?? というか、『対抗戦』で『必殺技』もおけおけっ?!」
ベズに抱擁されているということを差し引いたとしても、反省が足りていないようです。
気色、ではなく、喜色満面の笑顔で、八竜の息吹。
「対抗戦」に出場できる。
羨ましい。
そんなことを考えてしまう自分を、ディズルは嫌悪しました。
明暗。
そのように見えますが、今回の件、もう少し複雑でした。
少しだけ、ティノに似ている少年。
らしくないと思いながら、アリスはこの先のことを語りました。
「ディズル・マホマール。顔を上げるだけでなく、志を掲げなさい」
「え……?」
「あなたはベズの管理下にあった。そうであるというのに、『欠場』という憂き目を見た。どうしてそうなったのか、わかって?」
「いえ、……いいえ、わかりません」
心が痺れ、頭が考えることを拒否しています。
どうやったところで、自分の責任なのです。
他人に責任を押しつけるような、楽な方向に流れるのは最低の行為。
どれだけ惨めな思いをしようと、それだけはしてはいけません。
「それはね、ベズの予想を超えたからよ」
「予想を、超え……?」
「あなたもわかっているでしょう。『聖休』までに基礎を学び、一人も脱落することなく、『その先』に皆が食らいついてきた。今、あなたたちは『聖語』の、この時代の最先端にいる。これまでに必要だった『才能』と、これから必要な『才能』は別のモノ。ーーわかるかしら? クロウはまだ、ベズの『予想』は超えていないのよ」
クロウ・ダナ。
その背中は、遠ざかるばかりでした。
「努力」で補えない「才能」。
クロウと共に学ぶことを誇りに思いながら、生まれて初めて自分の「正しさ」に疑問を抱きました。
「八創家」にとって、「聖語」は一つの手段に過ぎません。
それでも、思うのです。
「聖語」とは、その人物の生き様そのものではないかと。
友人ーーそう、ディズルはクロウの友人です。
自分は馬鹿だ。
彼の背中を追いかけ続ける限り、ディズルはどうしても認めることができないのです。
クロウを認めている自分と、自分を認められないディズル。
クロウが認めているディズルと、クロウが認めている自分を認められないディズル。
ディズルは。
やっと答えが見つかりました。
ーー「聖語」の申し子。
あの光り輝く少年の隣に立ち、同じ眼差しを未来にーー。
最悪です。
苦痛なら、どれだけ積み重なろうと耐える自信はあったというのに。
たった一つ。
希望をぶら下げられただけで、この有様です。
「コラ、メイリーン。好い女なら、男が泣いているのを、そんなまじまじと見るものではなくてよ」
「え、あ…う……」
「今回のことは、私の落ち度だ。だが、学園長が言っていたように、私に相談をしなかった君にも責がある。私は、ディズル君が学園に在籍する間、正しく導くことで失点を挽回しよう。ーー君はマホマールだ。君の思う『正しさ』を貫きなさい」
「ーーはい」
クロウに認められ、ベズもまた、ディズルを後押ししてくれました。
瞼の裏に映る姿。
もう、見失ったりなどしません。
「ふぅ~、そういうわけで、決めないといけないことがあるのよ」
「学園長に一任する」
アリスの意味深な発言に、先手を打ったベズ。
「治癒」が終わったようで、メイリーンを解放します。
それからベズは目を閉じ、置物に早変わり。
微動だにしません。
まったく事態を把握できていないメイリーンとディズル。
二人が顔を見合わせると、まだ涙の跡が残っている彼の顔を見て、メイリーンが顔を逸らし、彼女が顔を逸らしている間に、ディズルは涙を袖で拭い去ります。
初々しい姿に、炎竜もぽっかぽか。
でも、時間は有限。
いつまでも楽しんでばかりもいられません。
アリスは。
炎竜らしく火に焼べることにしました。
「ーーメイリーン、ディズル。二人に聞くわ。ディズルが『欠場』となれば、一人補充する必要がある。地竜組の6位は、ルッシェル。彼女、出場すると思う?」
「あり得ません」
「あー。ルッシェルなら、笑顔で拒絶。それが駄目だとわかったら、明日は仮病かなぁ」
ある意味、絶大な信頼感。
ルッシェルという少女は、入園当初からまったくブレていません。
アリスとも正面から口喧嘩できる、強い女性です。
「私も、ルッシェルを説得するような、炎竜に炎をぶつけるようなことはしたくないわ。そうなると、7~9位の『三創家』の誰かになるのだけれど。ちょっと理由があって、彼らは今回、出場させないことにしているのよ」
これは、ヴァン、クーリゥ、ゲイムの三家からの申し出です。
まさかこのような事態になるとは思っていなかったので、アリスは許可してしまいました。
「10位以下でも良いのだけれど。それだと、地竜組の中で納得がいかない者もでてくるし、ーーこれは事実だから言うのだけれど、実力的に劣ってしまうのよね」
「実力的に? ストーフグレフさん、シーソニアさん、……それと一応、リフが強いのは想像がつきますが、残りの二人の選手も地竜組の10位よりも強いのですか?」
「『残りの二人』じゃなくて、ナインとイゴよ。名前くらい覚えなさいよ」
「すまない。彼らの名前は覚えているが、省略してしまった」
「え、いや、そんな……、頭まで下げなくていいからっ」
仲がよろしい姿に、炎竜もーーとやっている場合ではありません。
ここからが本懐。
アリスは。
炎を吐きました。
「メイリーン。あなた、裏切りなさい」
「ーーほ?」
「わからない? 『邪聖班』を裏切れって言っているの」
「えっと、アリス先生? 言ってる意味がわからないんですけど?」
さすが学園ぶっちぎりの最下位。
物分かりが悪いにもほどがあります。
とはいえ、メイリーンには気持ち良く戦ってもらわないといけません。
アリスは懇切丁寧に説明してあげることにしました。
「ディズル。メイリーンとクロウ、戦ったらどちらが勝つと思う?」
「それは……。クロウは善戦すると思いますが、『聖拳』のストーフグレフさんには及ばないかと」
ディズルは、父親から聞かされていました。
こと「戦闘」に関し、ストーフグレフほどの馬鹿はいない。
明らかに私怨が混ざっている言葉でしたが、父親にここまでのことを言わせるのですから、その実力に疑いはありません。
「で。メイリーン。どっちが勝つ?」
「ええ……? あたしに聞くんですか……。それは、まぁ、あんまり楽しめないんじゃないかなぁ~、とか」
「ま、そういうことね。未来のクロウならいざ知らず。でも、現在のクロウなら、メイリーンに瞬殺されるわ」
そんなわけがない。
喉元まできた、その言葉は。
アリスとメイリーン、そしてベズの表情を見るなり、とまってしまいました。
三人とも「瞬殺」という言葉を、ただの事実として受け容れているのです。
「てなわけで、メイリーン。あなたは『邪聖班』を裏切って、地竜組に。地竜組の五試合目の選手として出場しなさい」
「……ほへ?」
「ほら、ディズル。このスカポンタンのヘッポコピーに、教えてあげなさい」
嫌なところで水竜を差し向けてきました。
「裏切り」という言葉がそんなに嫌なのか、メイリーンは巻き込まれただけのディズルまで睨みつけてきます。
このままではメイリーンに「瞬殺」されてしまい兼ねない。
ディズルは、アリスの碌でもない企みを暴露することにしました。
「ストーフグレフさんが地竜組の五試合目で出場となれば、炎竜組の五試合目の選手がいなくなる。そうなれば、誰かを補充する必要がある。幸い、『邪聖班』は6人で、一人補欠がいる。ならば、その一人を、炎竜組の五試合目の選手とすれば良い」
「っ!?」
「ま、そういうわけね。ーー炎を炎で削るような、楽しい戦いができるわよ。ティノと戦いたいのなら、『邪聖班』の皆を『裏切り』なさい、メイリーン」
「え…いや、だって……、そんな、えっと……」
爆炎のごとく乗ってくるかと、アリスは思っていましたが。
メイリーンは、意外に律儀でした。
いえ、常識人と言ったほうが良いでしょうか。
誰も彼もがアリスのように「喧嘩上等」ではないのです。
メイリーンはお馬鹿さんですが、これでも色々と考えているのですーーたぶん。
メイリーンは「正義」が大好きなのです。
そして、「悪」が大っ嫌いです。
九星巡り、仲間と一緒に過ごしてきました。
笑い、泣き、苦しみ、落ち込みーー何だかんだで楽しい時間を過ごしてきました。
皆で挑む「対抗戦」の、その前日に「裏切り」が発覚。
「邪聖班」の皆はどう思うでしょうか。
「うひ~っ! 無理っ、嫌っ、もっきり『悪役』っ! 竜が頼んできたってお断り!!」
頼む前から「お断り」されてしまいました。
そんなわけで、アリスは「頼む」のはやめました。
アリスは、ティノの価値を。
メイリーンの良心がぶち壊れるほどに、跳ね上げることにしました。
「良いことを教えてあげるわ、メイリーン。ティノは魔獣と、それからーー竜とも戦ったことがあるのよ」
「ほひ……? ……竜?」
「ーーベズ」
「ああ、学園長が言っていることは、嘘ではない。ティノ君は峻厳なる魔獣と、そして、極悪無比な竜と戦い、勝てはしなかったが、生き残った」
最後まで黙っているつもりでしたが。
ベズは。
自分から「共犯者」になることにしました。
メイリーンもディズルも見えていない「先」が、ベズには予見できてしまいます。
それゆえの、アリスへのちょっとした意地悪。
これくらい、許されても良いでしょう。
「もうお分かり? ティノはね、現在、人類最強なのよ。『対抗戦』は試合。だから、ティノは全力でやってくれる。ーーもしかしたらこんな機会、もう一生巡ってこないかもしれないわよ?」
メイリーンは馬鹿なので、アリスの言っていることの、すべてを理解することはできませんでした。
だから、必要なものだけを拾い上げました。
メイリーンにとって大切なもの。
学園に遣って来て、幾つも手に入れた宝物。
メイリーンは、ティノに。
返せないくらいの恩があります。
そして。
これからも恩の大安売りといった感じで、ティノに迷惑をかけることになるでしょう。
メイリーンにできること。
こうして考えてみると、それは本当に少なくてーー。
メイリーンは。
ティノの笑顔を思い浮かべました。
それから、あの日の。
父親に勝ってしまった、見えない階段を上ってしまった、あの、乾いた場所。
ーーあんなところに。
ティノが人類最強だというのなら。
そんな場所に、独りにさせてはいけません。
そうです。
あんなところから。
引き摺り下ろしてあげるのが恩に報いる、いえ、ティノの友達としてメイリーンがやらなければいけないことです。
そうとなれば、「悪役上等」。
「わかりましたっ、アリス先生! ティノをぶち殺します!!」
「……は?」
残念ながら。
人と竜ではわかり合えなかったようです。
アリスの理解は得られませんでしたが。
ベズと、人間であるディズルも、メイリーンの思考回路を理解することはできなかったので、そこは気にしなくても良いでしょう。
「はいはい。あとは私たちがやっておくから、二人はしっかりと休みなさい」
一悶着ありましたが、これでアリスの計画通り。
今日はまだ、やらなければいけないことが山積しています。
アリスは「竜」のことを口外しないように二人に約束させてから、とっとと研究室から追いだしたのでした。
ディズルはそう思っていましたが。
実際には、幸運でした。
血液の代わりに、鉛でも流し込んだかのような倦怠感。
体が罅割れるような、いえ、引き裂かれるような激痛。
寝れば治る。
そう信じ込み、男子寮へと。
感覚に乏しい、他人のような手足を動かしていたとき。
最も見つかってはいけない人物と鉢合わせしてしまいました。
抵抗など無意味。
有無を言わさず、ディズルは研究室まで連れてゆかれました。
汚いーーとは言えないくらいに室内は散らかっています。
ベズの性格や人柄からすると、意外です。
本来なら、几帳面なディズルは眉を顰めるところですが。
不思議と、居心地は悪くありません。
やはりベズへの信頼が大きいようです。
ベズ・ランティノール。
父親のようにはなれないディズルの、目標。
彼のような懐の深い人物になりたいと、ディズルは憧れていました。
その、憧れの人物の口から。
最も聞きたくない言葉が放たれようとしたときーー。
「このっ、バカチン! 新しく何かするときは、私かベズに相談してからだって言っておいたでしょう!」
「うひっ、あひっ!? アリス先生っ、耳っ、耳っ?! 引っ張りゃにゃいで~~!!」
ノックもせず、勢いよく扉が開きます。
学園の生徒数は少ないので、接点が少ないディズルでも二人が誰か、すぐにわかりました。
アリスに耳を引っ張られながらも、体勢を崩していないメイリーン。
ディズルではそうはいきません。
父親が言っていたように、「聖拳」の使い手は体術にも優れているようです。
どうやら、彼女ーーメイリーンも、ディズルと同様の理由で連れてこられたようです。
ディズルもまた、ベズに相談することなく「聖語」の鍛錬を行ってしまいました。
まるで二人が遣って来るのがわかっていたかのように、ベズは動揺することなく「治癒」の「聖語」を刻み始めました。
質実剛健の、鑑のような男。
「聖語」の光が掻き消えると、ベズは正面から言い放ちます。
「明日の『対抗戦』、棄権しなさい」
「いえ! ベズ先生っ、私は……」
「私の言い方が悪かったようだ。ーーディズル君。君を『対抗戦』に出場させることはしない。これは決定事項であり、命令だ。決して覆らない」
到頭、下ってしまいました。
頭を、下げてはいけません。
たとえ愚かなことであっても、自分の行いを否定するわけにはいきません。
リフとの対戦。
望んでいた、敗けられない戦い。
高揚すると同時に、心に灯った一抹の不安。
リフとの対戦に備え、習得した「聖語」。
でも、それを完全に使いこなすことができていなかったのです。
万全を尽くす。
そう言い訳し、ほんの少しの不安さえ、打ち消そうと無理をした結果。
ディズルは。
リフを裏切ってしまいました。
涙を流す資格などありません。
膝に爪を立て、歯を食い縛ります。
「竜にも角にも、メイリーンもベズに『治癒』られなさい!」
「おひぁあっ!?」
よほど腹に据えかねているのか、先ほどからアリスの言葉が乱れています。
実は、露出度が高いアリスを、ディズルは苦手としていました。
良いか悪いかは措くとして、ディズルは古い考えを持った人間です。
真面目が服を着て歩いている。
そう評されるディズルは、服も真面目に着ないといけないと思っているのです。
その場で、腕の力だけでメイリーンを押すアリス。
それだけで、女性の中では大柄なメイリーンが弾き飛ばされます。
飛ばされた彼女の先には、立ち上がったベズ。
「おぴゅわぶこぽるちぇごりっぱぁ……」
アリスも酷なことをします。
メイリーンが好意を寄せている相手。
そんな相手に向かって投げつけられたのですから、メイリーンが壊れた「聖人形」のようになってしまうのも致し方ないことです。
一向に気にした素振りを見せることなく、「治癒」を施すベズ。
「治癒」中のベズには聞けないので、やむを得ずディズルはアリスに尋ねました。
「あの、学園長。ベズ先生はなぜ、ストーフグレフさんを抱擁しているのですか?」
「あぴょりんがるほぷえっさぁ……」
抱擁とは、親愛の情をもって抱き抱えること。
他に、抱き締めて愛撫すること、という意味もあります。
「親愛の情」があるかどうかはともかく、ディズルには「抱擁」しているように見えました。
おおむね事実であることを言葉にされてしまったので、炎竜になって暴れるメイリーン。
そんなことをすれば、ベズの拘束がさらに強まるだけなので逆効果なのですが、混乱の極みにあるメイリーンには言わぬが竜。
「それは、症状の違いね。今はまだ、症状を説明したところで理解できないでしょうから、わかり易く言うわ。ーーディズル。あなたの体には『罅』が入ったのよ。通常、そんなことはできないというのに、ティノに及ばないとはいえ、『努力』のし過ぎ。『罅』が治る前に無茶をしたから、体に変調を来したのよ。今、無理をすれば、『聖語』が使えなくなるだけでなく、身体機能にも異常がでる。全身の『罅』が治るまでの一巡り、『聖語』は禁止よ」
アリスの説明は聞こえていましたが。
心にまでは届きませんでした。
地竜組、父親、そしてリフ。
自分の行為が、どれだけの迷惑を引き起こしたのか。
心に現実が沁み込んだことで、ディズルは罪悪感に苛まれます。
「メイリーンのほうは何ともないように見えるけれど、ヤバいくらい深刻。言うなれば、体にでっかい穴が開いたようなモノ。命に係わるような事態。ただ、単純でわかり易いがゆえに、治し易い。今後、『必殺技』ーーではなく、新しいことをやるときは私かベズに相談すると確約するなら、明日の『対抗戦』、出場しても良いわよ」
「やうやうやうやうやうっ! ほやうっ!? ほ…本気でござりまするか?? というか、『対抗戦』で『必殺技』もおけおけっ?!」
ベズに抱擁されているということを差し引いたとしても、反省が足りていないようです。
気色、ではなく、喜色満面の笑顔で、八竜の息吹。
「対抗戦」に出場できる。
羨ましい。
そんなことを考えてしまう自分を、ディズルは嫌悪しました。
明暗。
そのように見えますが、今回の件、もう少し複雑でした。
少しだけ、ティノに似ている少年。
らしくないと思いながら、アリスはこの先のことを語りました。
「ディズル・マホマール。顔を上げるだけでなく、志を掲げなさい」
「え……?」
「あなたはベズの管理下にあった。そうであるというのに、『欠場』という憂き目を見た。どうしてそうなったのか、わかって?」
「いえ、……いいえ、わかりません」
心が痺れ、頭が考えることを拒否しています。
どうやったところで、自分の責任なのです。
他人に責任を押しつけるような、楽な方向に流れるのは最低の行為。
どれだけ惨めな思いをしようと、それだけはしてはいけません。
「それはね、ベズの予想を超えたからよ」
「予想を、超え……?」
「あなたもわかっているでしょう。『聖休』までに基礎を学び、一人も脱落することなく、『その先』に皆が食らいついてきた。今、あなたたちは『聖語』の、この時代の最先端にいる。これまでに必要だった『才能』と、これから必要な『才能』は別のモノ。ーーわかるかしら? クロウはまだ、ベズの『予想』は超えていないのよ」
クロウ・ダナ。
その背中は、遠ざかるばかりでした。
「努力」で補えない「才能」。
クロウと共に学ぶことを誇りに思いながら、生まれて初めて自分の「正しさ」に疑問を抱きました。
「八創家」にとって、「聖語」は一つの手段に過ぎません。
それでも、思うのです。
「聖語」とは、その人物の生き様そのものではないかと。
友人ーーそう、ディズルはクロウの友人です。
自分は馬鹿だ。
彼の背中を追いかけ続ける限り、ディズルはどうしても認めることができないのです。
クロウを認めている自分と、自分を認められないディズル。
クロウが認めているディズルと、クロウが認めている自分を認められないディズル。
ディズルは。
やっと答えが見つかりました。
ーー「聖語」の申し子。
あの光り輝く少年の隣に立ち、同じ眼差しを未来にーー。
最悪です。
苦痛なら、どれだけ積み重なろうと耐える自信はあったというのに。
たった一つ。
希望をぶら下げられただけで、この有様です。
「コラ、メイリーン。好い女なら、男が泣いているのを、そんなまじまじと見るものではなくてよ」
「え、あ…う……」
「今回のことは、私の落ち度だ。だが、学園長が言っていたように、私に相談をしなかった君にも責がある。私は、ディズル君が学園に在籍する間、正しく導くことで失点を挽回しよう。ーー君はマホマールだ。君の思う『正しさ』を貫きなさい」
「ーーはい」
クロウに認められ、ベズもまた、ディズルを後押ししてくれました。
瞼の裏に映る姿。
もう、見失ったりなどしません。
「ふぅ~、そういうわけで、決めないといけないことがあるのよ」
「学園長に一任する」
アリスの意味深な発言に、先手を打ったベズ。
「治癒」が終わったようで、メイリーンを解放します。
それからベズは目を閉じ、置物に早変わり。
微動だにしません。
まったく事態を把握できていないメイリーンとディズル。
二人が顔を見合わせると、まだ涙の跡が残っている彼の顔を見て、メイリーンが顔を逸らし、彼女が顔を逸らしている間に、ディズルは涙を袖で拭い去ります。
初々しい姿に、炎竜もぽっかぽか。
でも、時間は有限。
いつまでも楽しんでばかりもいられません。
アリスは。
炎竜らしく火に焼べることにしました。
「ーーメイリーン、ディズル。二人に聞くわ。ディズルが『欠場』となれば、一人補充する必要がある。地竜組の6位は、ルッシェル。彼女、出場すると思う?」
「あり得ません」
「あー。ルッシェルなら、笑顔で拒絶。それが駄目だとわかったら、明日は仮病かなぁ」
ある意味、絶大な信頼感。
ルッシェルという少女は、入園当初からまったくブレていません。
アリスとも正面から口喧嘩できる、強い女性です。
「私も、ルッシェルを説得するような、炎竜に炎をぶつけるようなことはしたくないわ。そうなると、7~9位の『三創家』の誰かになるのだけれど。ちょっと理由があって、彼らは今回、出場させないことにしているのよ」
これは、ヴァン、クーリゥ、ゲイムの三家からの申し出です。
まさかこのような事態になるとは思っていなかったので、アリスは許可してしまいました。
「10位以下でも良いのだけれど。それだと、地竜組の中で納得がいかない者もでてくるし、ーーこれは事実だから言うのだけれど、実力的に劣ってしまうのよね」
「実力的に? ストーフグレフさん、シーソニアさん、……それと一応、リフが強いのは想像がつきますが、残りの二人の選手も地竜組の10位よりも強いのですか?」
「『残りの二人』じゃなくて、ナインとイゴよ。名前くらい覚えなさいよ」
「すまない。彼らの名前は覚えているが、省略してしまった」
「え、いや、そんな……、頭まで下げなくていいからっ」
仲がよろしい姿に、炎竜もーーとやっている場合ではありません。
ここからが本懐。
アリスは。
炎を吐きました。
「メイリーン。あなた、裏切りなさい」
「ーーほ?」
「わからない? 『邪聖班』を裏切れって言っているの」
「えっと、アリス先生? 言ってる意味がわからないんですけど?」
さすが学園ぶっちぎりの最下位。
物分かりが悪いにもほどがあります。
とはいえ、メイリーンには気持ち良く戦ってもらわないといけません。
アリスは懇切丁寧に説明してあげることにしました。
「ディズル。メイリーンとクロウ、戦ったらどちらが勝つと思う?」
「それは……。クロウは善戦すると思いますが、『聖拳』のストーフグレフさんには及ばないかと」
ディズルは、父親から聞かされていました。
こと「戦闘」に関し、ストーフグレフほどの馬鹿はいない。
明らかに私怨が混ざっている言葉でしたが、父親にここまでのことを言わせるのですから、その実力に疑いはありません。
「で。メイリーン。どっちが勝つ?」
「ええ……? あたしに聞くんですか……。それは、まぁ、あんまり楽しめないんじゃないかなぁ~、とか」
「ま、そういうことね。未来のクロウならいざ知らず。でも、現在のクロウなら、メイリーンに瞬殺されるわ」
そんなわけがない。
喉元まできた、その言葉は。
アリスとメイリーン、そしてベズの表情を見るなり、とまってしまいました。
三人とも「瞬殺」という言葉を、ただの事実として受け容れているのです。
「てなわけで、メイリーン。あなたは『邪聖班』を裏切って、地竜組に。地竜組の五試合目の選手として出場しなさい」
「……ほへ?」
「ほら、ディズル。このスカポンタンのヘッポコピーに、教えてあげなさい」
嫌なところで水竜を差し向けてきました。
「裏切り」という言葉がそんなに嫌なのか、メイリーンは巻き込まれただけのディズルまで睨みつけてきます。
このままではメイリーンに「瞬殺」されてしまい兼ねない。
ディズルは、アリスの碌でもない企みを暴露することにしました。
「ストーフグレフさんが地竜組の五試合目で出場となれば、炎竜組の五試合目の選手がいなくなる。そうなれば、誰かを補充する必要がある。幸い、『邪聖班』は6人で、一人補欠がいる。ならば、その一人を、炎竜組の五試合目の選手とすれば良い」
「っ!?」
「ま、そういうわけね。ーー炎を炎で削るような、楽しい戦いができるわよ。ティノと戦いたいのなら、『邪聖班』の皆を『裏切り』なさい、メイリーン」
「え…いや、だって……、そんな、えっと……」
爆炎のごとく乗ってくるかと、アリスは思っていましたが。
メイリーンは、意外に律儀でした。
いえ、常識人と言ったほうが良いでしょうか。
誰も彼もがアリスのように「喧嘩上等」ではないのです。
メイリーンはお馬鹿さんですが、これでも色々と考えているのですーーたぶん。
メイリーンは「正義」が大好きなのです。
そして、「悪」が大っ嫌いです。
九星巡り、仲間と一緒に過ごしてきました。
笑い、泣き、苦しみ、落ち込みーー何だかんだで楽しい時間を過ごしてきました。
皆で挑む「対抗戦」の、その前日に「裏切り」が発覚。
「邪聖班」の皆はどう思うでしょうか。
「うひ~っ! 無理っ、嫌っ、もっきり『悪役』っ! 竜が頼んできたってお断り!!」
頼む前から「お断り」されてしまいました。
そんなわけで、アリスは「頼む」のはやめました。
アリスは、ティノの価値を。
メイリーンの良心がぶち壊れるほどに、跳ね上げることにしました。
「良いことを教えてあげるわ、メイリーン。ティノは魔獣と、それからーー竜とも戦ったことがあるのよ」
「ほひ……? ……竜?」
「ーーベズ」
「ああ、学園長が言っていることは、嘘ではない。ティノ君は峻厳なる魔獣と、そして、極悪無比な竜と戦い、勝てはしなかったが、生き残った」
最後まで黙っているつもりでしたが。
ベズは。
自分から「共犯者」になることにしました。
メイリーンもディズルも見えていない「先」が、ベズには予見できてしまいます。
それゆえの、アリスへのちょっとした意地悪。
これくらい、許されても良いでしょう。
「もうお分かり? ティノはね、現在、人類最強なのよ。『対抗戦』は試合。だから、ティノは全力でやってくれる。ーーもしかしたらこんな機会、もう一生巡ってこないかもしれないわよ?」
メイリーンは馬鹿なので、アリスの言っていることの、すべてを理解することはできませんでした。
だから、必要なものだけを拾い上げました。
メイリーンにとって大切なもの。
学園に遣って来て、幾つも手に入れた宝物。
メイリーンは、ティノに。
返せないくらいの恩があります。
そして。
これからも恩の大安売りといった感じで、ティノに迷惑をかけることになるでしょう。
メイリーンにできること。
こうして考えてみると、それは本当に少なくてーー。
メイリーンは。
ティノの笑顔を思い浮かべました。
それから、あの日の。
父親に勝ってしまった、見えない階段を上ってしまった、あの、乾いた場所。
ーーあんなところに。
ティノが人類最強だというのなら。
そんな場所に、独りにさせてはいけません。
そうです。
あんなところから。
引き摺り下ろしてあげるのが恩に報いる、いえ、ティノの友達としてメイリーンがやらなければいけないことです。
そうとなれば、「悪役上等」。
「わかりましたっ、アリス先生! ティノをぶち殺します!!」
「……は?」
残念ながら。
人と竜ではわかり合えなかったようです。
アリスの理解は得られませんでしたが。
ベズと、人間であるディズルも、メイリーンの思考回路を理解することはできなかったので、そこは気にしなくても良いでしょう。
「はいはい。あとは私たちがやっておくから、二人はしっかりと休みなさい」
一悶着ありましたが、これでアリスの計画通り。
今日はまだ、やらなければいけないことが山積しています。
アリスは「竜」のことを口外しないように二人に約束させてから、とっとと研究室から追いだしたのでした。
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