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第44話 従者の姉上

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フィーと姉のミーナは10歳年が離れていた。

ジュリアとフィーが5歳のころ発生した毒物混入事件により、

ジュリア付きの侍女がいなくなってしまった時、

ターニャとフィーだけでは大変なので、

当時15歳だったミーナをジュリア付きの侍女にしようかという話が出た。

ターニャの娘で、

フィーの姉なら大丈夫ではないかという理由だった。

バジリスク将軍がミーナにジュリア付きの侍女にならないかという話をすると、

















「なんで私がジュリア様の侍女にならないといけないのよ!!!」














ミーナは激怒した。

母親のターニャはジュリアが産まれてから、

産まれたばかりのフィーを連れて王宮にいて、

ジュリアにかかりきりだった。

父親のバジリスク将軍も、

ジュリアの周りで発生する事件にかかりきりだった。

長兄のイーチェはその頃すでに黒軍に、

騎士見習いとして出入りしていて、

ほとんど家にいなかった。

次兄のニールは領地で暮らしていて、

王都の家にはいなかったので、

当時10歳だったミーナは寂しい思いをしていた。

それでも仕方ないと我慢して、

幼いながらも家令たちと協力して、

王都の家政を仕切っていた。

ミーナが15歳のときに弟のココが産まれ、

毒物混入事件が発生したため、

ターニャはココを産んですぐにジュリアの側に戻ってしまった。

ミーナは弟のココの面倒を見ながら家政をしきっていた。

脳筋の父親と長兄は騎士としては優秀だったが、

それ以外の能力はからきしだった。

次兄は領地で爆発事件を起こしたり、

王都で薬物を買って領地に送れと言ってきたし、

弟は母親がいない寂しさからかよく泣いた。

ミーナは不在の母親の代わりに一生懸命だった。

そんなミーナにジュリアの侍女になる余裕なんかなく、

にも関わらず、それをわかってくれない父親や周囲の人間に腹が立った。


「なんであの子のせいで私がこんな苦労しないといけないのよ!!!!」


ジュリアに非がないのは分かっていたが、

ミーナはどうしても腹が立った。

ミーナの憤りはジュリアに向かってしまった。

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