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番外編 はぐれウサギと孤独なオオカミ
そんなある日
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そんなある日、灰色耳は少し変わった生き物を見つけました。
その毛色はほかのオオカミよりも黒く、体はずっと大きくて、頭から角と鬣が生えた、とても強そうなオオカミでした。
その黒いオオカミが、最近枯れ木の森で噂になっている新参者だと、灰色耳はすぐに気が付きました。
枯れ木の森を抜けると、その先には広い雪原が広がっており、その中央には真っ白な石でできた、先端が鋭く尖った山があります。
その山の正体は、ずっとずっと昔、この地が冬に閉ざされるよりもまえ、“ニンゲン”と呼ばれる生き物が作った“お城”という巣穴で、外界の者たちからは『冬の城』と呼ばれていました。
何故か誰も住み着くことはない不思議な山でしたが、最近になって、その冬の城をとても強い魔獣が縄張りにしたと、枯れ木の森で噂になっていました。
どのくらい強いのかというと……なんと、その怪物はオオカミの群れに襲われたにもかかわらず、逆に彼らをみんなやっつけてしまったのです!
しかし、灰色の明はその噂話が、にわかには信じられませんでした。
――ほんとうにたったいっぴきで、たくさんのオオカミにかったのか?
そう思っていると、どうやらその黒くて大きなタテガミオオカミは、ちょうどよいタイミングで、灰色耳に気が付いたみたいです。
黒オオカミは真っ直ぐに、こちらへ向かってきます。
――お? なんだ? やろうっていうのか?
灰色耳は好戦的に笑います。
そうしている間にも、奴は角で風を切りながら、自身が一陣の風になったかのように枯れ木の森を駆けてきました。
「ガオー!!」
黒オオカミは灰色耳へ、無警戒に跳びかかります。
灰色耳はひらりと躱し、背後へと回りました。
すると、黒オオカミは灰色耳の姿を見失ったようです。
間抜けにも、周囲をきょろきょろと見まわしています。
「……あれ?」
――うしろだよ、ノロマ!
灰色耳は首の後ろに鋭い蹴りを落としました。
黒いオオカミには首を防御する鬣が生えていましたが、ウサギの全力脚力の前には無意味です。
「グギャ!?」
ふらつく黒いオオカミ。灰色耳は着地するとすぐに跳ね上がり、今度はあごを蹴り上げます!
「ガッ!?」
鼻面を蹴り上げられると、どんなに大きな生き物でも、たいてい足元がふらつくのです。その黒いオオカミも例外ではありませんでした。
そのままオオカミはズシンと倒れこみます。
――どうだ! まいったか!
灰色耳は自分の勝利にクゥクゥと笑いました。倒れたオオカミの目が、ぎょろりとこちらを睨みます。
――おっと! これでもくらえ!
灰色耳は魔力を放出すると、オオカミの鼻と口を凍らせました。
「ムガッ!?」
鼻面を凍らされたオオカミは、必死になって氷を外そうとします。
その様子がどうにも滑稽で、灰色耳は腹を抱えて笑いました。
――はずしたいのか? てつだってやるよ!
今度は鼻面を蹴飛ばします。氷の口枷が外れたオオカミの目は、明らかに怒りに燃えていました。
「ガァッ!? ッこの野郎! やりたい放題しやがって!」
――にっげろー!
「この畜生め。もう、許さねえぞ……!」
黒いオオカミは生意気なウサギを探します。
しかし、その頃には、灰色耳はとっくに遠くへと逃げていました。
――へっへーん。なんだ、たいしたことなかったな!
灰色耳はさっそく仲間たちに自慢しました。
大きくて黒い、たてがみのあるオオカミを、たった一羽で倒したのです!
仲間たちはみんな、すごい、すごいと驚いてくれました。
――あんなやつ、みかけだおしさ! みんなもかんたんにたおせるよ!
――本当か?
――ほんとうだって! いまからあいつをからかって、あそぼうぜ!
それからしばらくの間、枯れ木の森では大きくて黒いオオカミをからかうのが流行りました。
まずは一羽が囮になって、黒オオカミをおびき寄せます。
そして誘い込んだら、皆で取り囲んで、蹴り上げたり、氷の魔法をぶつけます。
コテンパンにされた黒オオカミは、キャウンキャウンと情けない声を上げながら、毎回逃げていくのでした。
――やった! あんなに強そうなヤツを追い払えるなんて!
――ボクたち……強くなってる!?
――すっごーい!!
若いウサギたちは、はしゃぎます。
この枯れ木の森で、ウサギたちは確実に強くなっている……本人たちはそう思いました。
それからというものの、ウサギたちは暇さえあれば黒オオカミをからかうようになりました。
自分たちより大きな肉食獣をいじめるのは、胸がすくような気分がしました。
ただ……そんな時間はあまり、長続きしませんでした。
なぜなら、黒いオオカミは、戦うたびに強くなっていったのです。
だんだん大きく、だんだん丈夫に。
動きも素早く、鋭く。
ウサギたちは黒オオカミから不気味なものを感じました――そして出会ってからたったの数日後、ついに灰色耳が、奴から怪我を負わされたのです。
灰色耳以外のウサギたちは、得体の知れない恐怖に、胸の中が支配されてしまいました。
――なあ、もうあいつをからかうのは止めようぜ?
仲間のウサギが鼻をヒクヒクさせました。
――このままじゃ、すぐにでもあいつはオレらを捕まえちゃうよ。
――まえはボクも、食べられかけた。
――みんなムシャムシャバリバリ食べられちゃうんだ!
――逃げようよ。やっぱり枯れ木の森で暮らすなんて、ムチャだったんだ!
――帰りたい……。
口々に好き勝手な弱音を吐くウサギたち。
突然始まった弱音の大合唱に、灰色耳は困惑します。
――なんだよ、きゅうに! みんなも、つよくなりたいんじゃ、なかったのかよ!
――おれたちは、お前みたいにとくべつじゃないんだ……。
一回り大きなウサギが、どこか疲れたように言いました。
でも、まだまだ子供な灰色耳は、納得できません。
――とくべつってなに? いまはあたいのミミなんて、なにもかんけいないだろ?
――そうじゃない。お前は俺たちとは、別の存在なんだよ……。、
――なにをいっているか、わからないよ! みんなもおなじミミナガじゃないか!
灰色耳は、目に見えない違いを理解するには、幼すぎました。
誰だって、本気で頑張れば、何にだってなれると、本気で信じていたのです。
――なんでお前は怖くないんだ? あの黒オオカミは、どんどん強くなる! 次はきっと、食べられちゃう!
ウサギたちは思い出しました。
あの黒いオオカミの、鱗がある太くて長い尾。それを薙ぎ払う攻撃を。
枯れ木をまとめて切り払った、あの凶悪な斬撃を!
奴の牙は鋭く、爪は獲物をえぐります。
そして、奴の咆哮に、枯れ木の森の生き物たちは例外なく震えあがるのです。
ああ、恐ろしい!
なぜ灰色耳は、それを理解できないのでしょう!?
爪も牙も鋭く、鬣と角を持つ漆黒のオオカミ――しかし、鎧のような鱗や、棘の生えた太い尾などを見れば、むしろ翼の無いドラゴンに近い存在だと言えます。
ウサギたちはドラゴンを知りませんでしたが、あれが自分たちの知っているオオカミとは別物であることぐらいは、いい加減に理解していました。
ああ! なんであんな化け物を相手に喧嘩を売ったのでしょう!
ウサギたちは後悔しますが、もう後の祭りです。
――へっ! こんなの、たいしたことないやい!
ちょっと奴の棘が引っかかってケガをしただけだと、灰色耳は強がります。
しかし、他の仲間たちは大丈夫だとは思えません。
だって、一番素早くて強い灰色耳がケガをさせられたのですから、自分たちだったら殺されていたでしょう!
――とにかく、俺たちはあっちの森に帰らせてもらうぞ!
――こんな危ない場所で暮らせるか!
――お前も早く帰って来いよ
――死んじゃったら、全部終わりなんだからな!
次々と、枯れ木の森から、安全な森のほうを目指して消えて行くウサギたち。
――おい、まってよ! そんな……みんないっちゃった……
こうして、灰色耳は独りぼっちになってしまいました。
* * *
独りぼっちになってから、はたして灰色耳は大人しくなったでしょうか?
いいえ。灰色耳は独りぼっちになってからも、ずっと戦い続けました。
逃げるシカには、競争で勝ちました。
オオカミの群れは、まとめてやっつけられるようになりました。
狡賢いキツネは、逆に騙し返してやっつけました。
そして、空から襲い掛かってきたタカは、地面に叩き落として返り討ちにしました!
流石に大きなクマ相手では手も足も出ませんでしたが、いつかはきっと勝てるでしょう! 灰色耳はそう確信しました。
驚異的な速さで強くなる灰色耳。
そしていつの間にか、灰色耳は枯れ木の森における勢力の一角になっていたのです。
――へへん、どうだ! ミミナガでも、こんなに強くなれるんだぞ!
枯れ木の森の真ん中で、灰色耳はクゥクゥと宣言します。
それでも、仲間たちは戻ってきません。
灰色耳は独りぼっちのままでした。
それどころか、あらゆる生き物たちが、灰色耳の姿を見るだけで逃げていきます。
同じミミナガの仲間たちでさえも、今では灰色耳が恐れ多くて近づけません。
――ふんだ! さびしくなんか、ないもんね!
灰色耳は強がります。
淋しくないなんて、もちろん嘘です。本当は仲間が恋しくて仕方がありませんでした。
でも、(灰色耳自身も気が付いていませんでしたが)ウサギの身でありながら強くなり過ぎた彼女とは、もはや誰も一緒に居られませんでした
唯一、未だに勝負を受けてくれるのは、例の黒いオオカミだけでした。
――よっ! あそぼうぜ!
「クソッ! またお前かよ!?」
オオカミのほうはうんざりしたような声を出しますが、そんなの関係ありません。
こうして、灰色耳と黒いオオカミは、枯れ木の森でよく喧嘩するようになったのでした。
その毛色はほかのオオカミよりも黒く、体はずっと大きくて、頭から角と鬣が生えた、とても強そうなオオカミでした。
その黒いオオカミが、最近枯れ木の森で噂になっている新参者だと、灰色耳はすぐに気が付きました。
枯れ木の森を抜けると、その先には広い雪原が広がっており、その中央には真っ白な石でできた、先端が鋭く尖った山があります。
その山の正体は、ずっとずっと昔、この地が冬に閉ざされるよりもまえ、“ニンゲン”と呼ばれる生き物が作った“お城”という巣穴で、外界の者たちからは『冬の城』と呼ばれていました。
何故か誰も住み着くことはない不思議な山でしたが、最近になって、その冬の城をとても強い魔獣が縄張りにしたと、枯れ木の森で噂になっていました。
どのくらい強いのかというと……なんと、その怪物はオオカミの群れに襲われたにもかかわらず、逆に彼らをみんなやっつけてしまったのです!
しかし、灰色の明はその噂話が、にわかには信じられませんでした。
――ほんとうにたったいっぴきで、たくさんのオオカミにかったのか?
そう思っていると、どうやらその黒くて大きなタテガミオオカミは、ちょうどよいタイミングで、灰色耳に気が付いたみたいです。
黒オオカミは真っ直ぐに、こちらへ向かってきます。
――お? なんだ? やろうっていうのか?
灰色耳は好戦的に笑います。
そうしている間にも、奴は角で風を切りながら、自身が一陣の風になったかのように枯れ木の森を駆けてきました。
「ガオー!!」
黒オオカミは灰色耳へ、無警戒に跳びかかります。
灰色耳はひらりと躱し、背後へと回りました。
すると、黒オオカミは灰色耳の姿を見失ったようです。
間抜けにも、周囲をきょろきょろと見まわしています。
「……あれ?」
――うしろだよ、ノロマ!
灰色耳は首の後ろに鋭い蹴りを落としました。
黒いオオカミには首を防御する鬣が生えていましたが、ウサギの全力脚力の前には無意味です。
「グギャ!?」
ふらつく黒いオオカミ。灰色耳は着地するとすぐに跳ね上がり、今度はあごを蹴り上げます!
「ガッ!?」
鼻面を蹴り上げられると、どんなに大きな生き物でも、たいてい足元がふらつくのです。その黒いオオカミも例外ではありませんでした。
そのままオオカミはズシンと倒れこみます。
――どうだ! まいったか!
灰色耳は自分の勝利にクゥクゥと笑いました。倒れたオオカミの目が、ぎょろりとこちらを睨みます。
――おっと! これでもくらえ!
灰色耳は魔力を放出すると、オオカミの鼻と口を凍らせました。
「ムガッ!?」
鼻面を凍らされたオオカミは、必死になって氷を外そうとします。
その様子がどうにも滑稽で、灰色耳は腹を抱えて笑いました。
――はずしたいのか? てつだってやるよ!
今度は鼻面を蹴飛ばします。氷の口枷が外れたオオカミの目は、明らかに怒りに燃えていました。
「ガァッ!? ッこの野郎! やりたい放題しやがって!」
――にっげろー!
「この畜生め。もう、許さねえぞ……!」
黒いオオカミは生意気なウサギを探します。
しかし、その頃には、灰色耳はとっくに遠くへと逃げていました。
――へっへーん。なんだ、たいしたことなかったな!
灰色耳はさっそく仲間たちに自慢しました。
大きくて黒い、たてがみのあるオオカミを、たった一羽で倒したのです!
仲間たちはみんな、すごい、すごいと驚いてくれました。
――あんなやつ、みかけだおしさ! みんなもかんたんにたおせるよ!
――本当か?
――ほんとうだって! いまからあいつをからかって、あそぼうぜ!
それからしばらくの間、枯れ木の森では大きくて黒いオオカミをからかうのが流行りました。
まずは一羽が囮になって、黒オオカミをおびき寄せます。
そして誘い込んだら、皆で取り囲んで、蹴り上げたり、氷の魔法をぶつけます。
コテンパンにされた黒オオカミは、キャウンキャウンと情けない声を上げながら、毎回逃げていくのでした。
――やった! あんなに強そうなヤツを追い払えるなんて!
――ボクたち……強くなってる!?
――すっごーい!!
若いウサギたちは、はしゃぎます。
この枯れ木の森で、ウサギたちは確実に強くなっている……本人たちはそう思いました。
それからというものの、ウサギたちは暇さえあれば黒オオカミをからかうようになりました。
自分たちより大きな肉食獣をいじめるのは、胸がすくような気分がしました。
ただ……そんな時間はあまり、長続きしませんでした。
なぜなら、黒いオオカミは、戦うたびに強くなっていったのです。
だんだん大きく、だんだん丈夫に。
動きも素早く、鋭く。
ウサギたちは黒オオカミから不気味なものを感じました――そして出会ってからたったの数日後、ついに灰色耳が、奴から怪我を負わされたのです。
灰色耳以外のウサギたちは、得体の知れない恐怖に、胸の中が支配されてしまいました。
――なあ、もうあいつをからかうのは止めようぜ?
仲間のウサギが鼻をヒクヒクさせました。
――このままじゃ、すぐにでもあいつはオレらを捕まえちゃうよ。
――まえはボクも、食べられかけた。
――みんなムシャムシャバリバリ食べられちゃうんだ!
――逃げようよ。やっぱり枯れ木の森で暮らすなんて、ムチャだったんだ!
――帰りたい……。
口々に好き勝手な弱音を吐くウサギたち。
突然始まった弱音の大合唱に、灰色耳は困惑します。
――なんだよ、きゅうに! みんなも、つよくなりたいんじゃ、なかったのかよ!
――おれたちは、お前みたいにとくべつじゃないんだ……。
一回り大きなウサギが、どこか疲れたように言いました。
でも、まだまだ子供な灰色耳は、納得できません。
――とくべつってなに? いまはあたいのミミなんて、なにもかんけいないだろ?
――そうじゃない。お前は俺たちとは、別の存在なんだよ……。、
――なにをいっているか、わからないよ! みんなもおなじミミナガじゃないか!
灰色耳は、目に見えない違いを理解するには、幼すぎました。
誰だって、本気で頑張れば、何にだってなれると、本気で信じていたのです。
――なんでお前は怖くないんだ? あの黒オオカミは、どんどん強くなる! 次はきっと、食べられちゃう!
ウサギたちは思い出しました。
あの黒いオオカミの、鱗がある太くて長い尾。それを薙ぎ払う攻撃を。
枯れ木をまとめて切り払った、あの凶悪な斬撃を!
奴の牙は鋭く、爪は獲物をえぐります。
そして、奴の咆哮に、枯れ木の森の生き物たちは例外なく震えあがるのです。
ああ、恐ろしい!
なぜ灰色耳は、それを理解できないのでしょう!?
爪も牙も鋭く、鬣と角を持つ漆黒のオオカミ――しかし、鎧のような鱗や、棘の生えた太い尾などを見れば、むしろ翼の無いドラゴンに近い存在だと言えます。
ウサギたちはドラゴンを知りませんでしたが、あれが自分たちの知っているオオカミとは別物であることぐらいは、いい加減に理解していました。
ああ! なんであんな化け物を相手に喧嘩を売ったのでしょう!
ウサギたちは後悔しますが、もう後の祭りです。
――へっ! こんなの、たいしたことないやい!
ちょっと奴の棘が引っかかってケガをしただけだと、灰色耳は強がります。
しかし、他の仲間たちは大丈夫だとは思えません。
だって、一番素早くて強い灰色耳がケガをさせられたのですから、自分たちだったら殺されていたでしょう!
――とにかく、俺たちはあっちの森に帰らせてもらうぞ!
――こんな危ない場所で暮らせるか!
――お前も早く帰って来いよ
――死んじゃったら、全部終わりなんだからな!
次々と、枯れ木の森から、安全な森のほうを目指して消えて行くウサギたち。
――おい、まってよ! そんな……みんないっちゃった……
こうして、灰色耳は独りぼっちになってしまいました。
* * *
独りぼっちになってから、はたして灰色耳は大人しくなったでしょうか?
いいえ。灰色耳は独りぼっちになってからも、ずっと戦い続けました。
逃げるシカには、競争で勝ちました。
オオカミの群れは、まとめてやっつけられるようになりました。
狡賢いキツネは、逆に騙し返してやっつけました。
そして、空から襲い掛かってきたタカは、地面に叩き落として返り討ちにしました!
流石に大きなクマ相手では手も足も出ませんでしたが、いつかはきっと勝てるでしょう! 灰色耳はそう確信しました。
驚異的な速さで強くなる灰色耳。
そしていつの間にか、灰色耳は枯れ木の森における勢力の一角になっていたのです。
――へへん、どうだ! ミミナガでも、こんなに強くなれるんだぞ!
枯れ木の森の真ん中で、灰色耳はクゥクゥと宣言します。
それでも、仲間たちは戻ってきません。
灰色耳は独りぼっちのままでした。
それどころか、あらゆる生き物たちが、灰色耳の姿を見るだけで逃げていきます。
同じミミナガの仲間たちでさえも、今では灰色耳が恐れ多くて近づけません。
――ふんだ! さびしくなんか、ないもんね!
灰色耳は強がります。
淋しくないなんて、もちろん嘘です。本当は仲間が恋しくて仕方がありませんでした。
でも、(灰色耳自身も気が付いていませんでしたが)ウサギの身でありながら強くなり過ぎた彼女とは、もはや誰も一緒に居られませんでした
唯一、未だに勝負を受けてくれるのは、例の黒いオオカミだけでした。
――よっ! あそぼうぜ!
「クソッ! またお前かよ!?」
オオカミのほうはうんざりしたような声を出しますが、そんなの関係ありません。
こうして、灰色耳と黒いオオカミは、枯れ木の森でよく喧嘩するようになったのでした。
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